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2024.12.23 UP
[report]
探究型・芸術体感プログラム×大日向小学校 レポート 2/3
子どもたちの「見立て」の作品展
探究の芽を引き出す、新たな学びのひらき方
Bunkamuraでは、文化との新たな出会いが見つかる「学び」と「体験」の場として、渋谷をはじめさまざまな場所で文化・芸術のすそ野を広げる、新たな文化情報発信やアウトリーチ活動を展開しています。
子どもたちが深めた「見立て」の作品展を開催!
昨年の大日向中学校とのプログラムに続き、2年目の本プログラム。今年は大日向小学校と連携した取り組みの一環として、6月にアーティストの鈴木康広さんによる見立てをテーマとしたワークショップを行いました(実施レポートはこちら)。当日は、鈴木さんの創作の根源にある見立ての感性に触れつつ、グループごとに見立てに挑戦し、見慣れた日常の風景から驚きや発見が次々と出てきました。
その後も数回の探究を重ねて一人ひとりが見立てを深め、7月18日(木)にはその成果発表として作品展を開催。会場に入ると、壁に並んだ作品を前に、子どもたちがお互いに自由に見回っており、作品について話をしたり質問し合う様子が垣間見え、自由で活き活きとした熱気が伝わってきました。
会場内には、子どもたちによる見立ての作品展示のほか、別の課題である蝶をモチーフにした飾り付けや研究内容をまとめたレポートも。
展示作品。当初は顔に見立てる作品が多かったが、見方が深まるにつれ色々な発想が出てきたそう。
アーティストが残した学びの余韻
先生方によると、普段は学習に向き合いづらい傾向のある子も、前のめりで参加していたのが印象的だったといいます。アーティストというと「全く知らない世界にいる人」と、どこか遠いイメージを持っていた子どもたち。6月のワークショップで鈴木さんにいざ会ってみると「自分と同じ視点や感覚を持っている面白い大人」に変化し、鈴木さんが作り出す世界観に引き込まれていきました。ワークショップが終了してからもなお、帰りの道中で子どもたちの見立ては続いていたのだとか。学校内に留まらず、日常の中へ自然と派生していくような学びになったようです。
そんな鈴木さんが残した学びの余韻を引き継ぎながら迎えた今回の作品展。子どもたちに話を聞くと「自分の見立てを共有した時に、普段関わりが少ない人と〈これ面白いね!〉と意気投合したのが新鮮だった」という感想も。表現そのものに対する気づきはもちろんのこと、活動を通じて新たなコミュニケーションが生まれたと楽しそうに語る様子がとても印象的でした。
図書室のカウンター横にあったヒーターの側面をオウムの横顔に見立てたという作品『オウム』。ワークショップの時からあたためていた案で、作品展での発表に至ったそう。
子どもたちの探究心を引き出す学びへ
今回の作品展やワークショップを通じて、アーティストならではの視点が子どもたちの探究心を引き出し、学校側もそのような主体的な学びを大切にしていることを改めて感じました。現場の先生たちの役割も、単に教えるだけでなく、子どもの学びに応じてその道のプロフェショナルと協働するなど「学びの環境をデザインする」という新たな役割へと変わりつつあるようです。大日向小学校では、さまざまな分野の大人と出会い、子どもたちが自らの学びを深めていける場を作りたいと考えているとのこと。
「見立て」を切り口として、鈴木さんとともに発見の楽しさや自己表現に触れた子どもたちが、今後もどんな学びの宝箱を開けていくのか楽しみです。今後もBunkamuraオープンヴィレッジでは、本プログラムをはじめとするさまざまな活動を通して、自らの可能性を発見するきっかけとなる学びや体験機会の提供、文化・芸術体験による地域間交流にも積極的に取り組んでまいります。
プログラムの全体を統括してくださっていた同校教頭の青山さんは「鈴木さんから発せられる言葉や雰囲気、作品を通して語られる言葉に、子どもたちが一つずつ反応する様子が見えました。それは本物のアーティストが背中を押してくれたからこそ。教育的な技術や手法、そういうものを超えた化学反応が起きるんだなとその場にいて実感したんです」と振り返る。
※9/1(日)をもちまして、閉幕いたしました。