N響オーチャード定期

TOPICS

2024.12.10 UP

【第132回】公演の聴きどころ

第132回は、N響オーチャード定期にパーヴォ・ヤルヴィが帰ってくる!
パーヴォは、2015年から2021年までNHK交響楽団の首席指揮者を務め、現在は名誉指揮者の称号を持つ。また、チューリッヒトーンハレ管弦楽団の音楽監督とドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団の芸術監督を兼務。N響とのオーチャードホールでの演奏では、「ウエスト・サイド・ストーリー」(2018)、「トゥランガリラ交響曲」(2019)、「フィデリオ」(2019)などが思い出されるが、今回のパーヴォが得意とするストラヴィンスキー、ブリテン、プロコフィエフという20世紀プログラムでも、きっと記憶に残る鮮明な演奏を聴かせてくれるに違いない。
まずはストラヴィンスキーの三大バレエの一つ、「ペトルーシュカ」。パーヴォの研ぎ澄まされたリズム感によって、聴き慣れたこのバレエ音楽が新鮮に響くだろう。重要なピアノ独奏パートをロシアで学び、ロシア音楽を得意とする松田華音が務めるのにも注目。「Dance Dance!」のシリーズ・テーマにふさわしい躍動感溢れる演奏が楽しみだ。
続く、イギリスの作曲家ブリテンのピアノ協奏曲では、イギリス出身の気鋭のピアニスト、ベンジャミン・グローヴナーが登場する。1938年、ブリテンが24歳の頃に書いたこの協奏曲は、彼の早熟ぶりを端的に示す作品といえる。「トッカータ」、「ワルツ」、「即興曲」、「行進曲」の4つの楽章からなる、明快で聴きやすい音楽。グローヴナーの妙技が聴きものである。
そして最後はプロコフィエフの交響組曲「3つのオレンジへの恋」。18世紀イタリアの劇作家ゴッツィ原作の、どんな余興にも笑うことのなかった憂鬱症の王子が、魔女がひっくり返ったのを見て、笑ってしまい、怒った魔女は、王子に「3つのオレンジに恋をする」呪いをかけるというストーリーのオペラから、作曲者が6曲を選び、オーケストラ用の組曲にまとめたもの。そのモダンな音楽でパーヴォ&N響がキレキレの演奏を披露することだろう。

Apple Music Classicalで予習用プレイリストを公開中!

文・山田治生(音楽評論家)