K-BALLET COMPANY / 東京フィルハーモニー交響楽団 熊川版 新作『カルミナ・ブラーナ』世界初演

POINT見どころ

1989年、Bunkamuraオーチャードホールは、門外不出のバイロイト祝祭劇場初来日公演の杮落しでオープンし、本年30周年を迎えます。劇場のさらなる発展を願い、9月に30周年記念特別企画として、オーチャードホール芸術監督 熊川哲也が構成・演出・振付を手掛ける新作を発表いたします。曲は圧倒的な力強さと激しく変化する原始的なリズムの強烈なインパクトをもつカール・オルフ作曲『カルミナ・ブラーナ』。

知らぬ者はいないオルフの代表作。

『カルミナ・ブラーナ』とは、19世紀にドイツのベネディクト修道会の修道院で発見された詩歌集である。13世紀初期に南ドイツで書き写されたものとされるその古文書は、中世ラテン語で書かれた詩集や中世ドイツ語の詩、そして風刺作品などで構成されており、「遍歴の神学生」が書いたとされるその内容には、開放的に自然を謳歌した彼らの思想が反映されている。この詩集に目をつけたのがミュンヘン出身の作曲家カール・オルフ(1895−1982)。 同名の大規模カンタータを作曲し、強烈なリズムと連続する和音、従来の方法に捕らわれない大胆な作曲術で圧倒的な評価を得、オルフの代表作となった。特に、“世界の支配者 運命の女神フォルトゥーナ”を歌う第1曲と最終曲にあたる「おぉ、運命の女神よ」は大変有名で、映画作品などでも頻繁に使用されている。現代においても、その昂揚感と緊迫感が多くの人を惹きつけてやまないのだ。

バレエで描く衝撃のエクソシスムがここに―――!?

熊川哲也も、この曲に魅了された1人。しかし、熊川が曲から受けた型破りで意外性に満ちたイメージは、これまでの誰とも似通っていないだろう。「全曲を聞き終わった瞬間に、バレエ作品として構築するためのアイディアが溢れ、たった1時間で全曲の構想をまとめてしまった」というその内容は、“女神フォルトゥーナの子は、悪魔であった”という衝撃的な展開からはじまる。人間の世にでた悪魔は、人間に闇を与え、悪行を操る。そして、その運命に立ち向かう人間たち…。バレエではかつて描かれたことがないだろう衝撃のエクソシストの世界、そして時代を超えた壮大な人類への示唆に富む作品が、すでに熊川の頭の中では完成しているのだ。

世界的演出家の寵愛を受けるデザイナーが熊川と初タッグを組む!

衣裳・美術のデザインを手掛けるのはジャン=マルク・ピュイッソン。パリ・オペラ座バレエ学校を卒業し、シュツットガルト・バレエ団などで活躍するプロのダンサーであったが、デザイナーに転向すると瞬く間に頭角を現した。近年の代表作としてはロイヤル・オペラ・ハウスにおけるマクヴィカー演出『アイーダ』、ロイヤル・バレエ団で初演され、世界中のバレエ団で上演されるウィールドンの代表作『DGV』、同じくロイヤル・バレエ団で上演され08年および13年にローレンス・オリヴィエ賞 最優秀新作ダンス部門を受賞したバランシン振付『ジュエルズ』、ウィールドン振付『Aeternum』のデザインを手掛けた。初のコラボレーションにもかかわらず、「芸術家として極めて近い感覚が共有できる」と熊川が語るその成果が楽しみだ。 世界的なスターダンサー熊川哲也は、いまや世界的演出家でもあることに異論の余地はない。近年、『カルメン』『クレオパトラ』など新作全幕バレエを圧倒的な演出で発表し続けている熊川が、この大曲に捧げる新たな物語の結末は、果たしていかに…? 世紀の新作誕生を約束する全ての要素はそろった。

世界が注目する若手指揮者、バッティストーニを迎え、
奇跡の共演が実現!

出演はBunkamuraが擁する2つのフランチャイズカンパニー。昨年新たにフランチャイズ契約を締結したK-BALLET COMPANYと、開業以来フランチャイズ・オーケストラとして公演を行う東京フィルハーモニー交響楽団の初の本格共演が実現する。指揮は、世界が注目するイタリアの新星アンドレア・バッティストーニ。爆発的なエネルギーで音に魔法をかけるマエストロが、熊川の世界とどう化学反応を起こすのか、期待が高まる。 さらに、この新作を具現化するために熊川哲也の元に集まるのはダンサー、歌手、合唱、オーケストラ、総勢250名を超える。“楽器群と魔術的な場面を伴って歌われる、独唱と合唱の為の世俗的歌曲”という副題が示す通り、本来は舞踊を伴う舞台作品としての上演が前提に作曲されたというが、大規模な編成が要求されるため、現在多くは略式である演奏会形式で上演されている『カルミナ・ブラーナ』。オルフの原案を実現するともいえる機会を奇跡の共演でお贈りする本公演、見逃すわけにはいかない。