作品のタイトル『DUNAS』は、スペイン語で“砂丘”の意味。地球や自然に魅力を感じていた二人は、木や根、土、砂…と連想していく中で、“砂丘”に辿りついた。平和で広大、開放的でいてメランコリックでもあり、喜びと悲しみなど様々な感情を呼び起こす言葉、DUNAS。その詩的な響きに惹かれた二人は、「常に風によって姿を変える砂丘のように、自由でありたい、お互い刺激を受けながら変わり続けたい」という願いをタイトルに込めた。
対立よりも出会いを尊ぶ人間関係へのメッセージ、フラメンコのルーツであるロマ(ジプシー)たちがかつて灼熱の砂丘を踏みしめてきた想いを、“砂丘”に見出していく。
フラメンコ界の至宝マリア・パヘスと、『プルートゥ PLUTO』演出・振付シディ・ラルビ・シェルカウイ、2人が贈る究極のフラメンコ『DUNAS』を、お見逃しなく!
見どころPoint
見どころ
1
パヘスとシェルカウイが贈る神秘のデュエット!
体格や流れるような手の動きなど、二人の共通点を活かし、互いの作品世界に敬意を持ちながら振付。一見即興のように見える部分も、ミュージシャンと話し合いながら、緻密に作り上げている。シェルカウイは「パヘスは、関節の使い方がすごく上手。踊る上で色んな選択をするが、それが正確で明確」と評し、パヘスも彼を「特に空間の使い方に優れ、ひとつのステップも全ての要素を考慮して作品を作っている」と語る。“フラメンコ”“コンテンポラリーダンス”という枠にとらわれずに、二人の動き、リズム、流れに注目してみて!
見どころ
2
一瞬にしてエキゾチックな世界に誘う、魅惑の音色!
奇蹟のコラボレーションを彩るのは、魂を揺さぶる音色を奏でる名手たちの生演奏。パヘスの信頼も厚いカンタオーラ(歌い手)アナ・ラモンの、ときに泣き叫ぶかのように心の奥底からこみ上げる感情を露わにする歌、そこに巧みに寄り添い引き立てる情熱的なギター。フラメンコとは違う味わいをもつアラブ・アンダルシア音楽の歌手の、恍惚感に満ちた声。そして、現代音楽に精通したピアニストやヴァイオリニスト――
この作品ならではの多国籍なミュージシャンのアンサンブルは、心震える深い感動へと誘うだろう。
見どころ
3
動く絵画のような美しさに満ちた世界!
伸縮性のある布に、照明を当てたり影を映したりと試行錯誤を重ね、舞台セットとして使用。10mもの布を踊りながら操ることで、変容し続ける砂丘や、月夜、人と人とを隔てる境界など、まさにDUNASそのものを表現していく。シェルカウイが描く砂絵を大きく映し出したこの布によるスクリーンにあわせて、パヘスが踊るソロも圧巻!自然が好きで「木になりたい!」という彼女のために木を描くシーンも。舞台セットをも動きに取り入れ、砂丘を出現させてしまう二人のイマジネーションに、あなたも魅了されるに違いない。
パヘスとシェルカウイの情熱は、熱い砂塵を巻き起こしながら、
フラメンコの故郷へと、心逸らせる
突風に乗って、遠くかの地から吹き付ける熱い砂塵。白く煙ったこの世界で、ふと思い出す。灼熱の砂丘を踏みしめ、この地を目指した先人たちの想いを。
現代フラメンコを代表する舞踊家マリア・パヘスが、コンテンポラリーダンスの鬼才シディ・ラルビ・シェルカウイと共に創り出す世界は、ミステリアスな美しさに満ちている。
北インド地方からアラブ諸国を通り、北アフリカを西に向かって、スペインの南端、アンダルシア地方にたどり着いたジプシーたち。彼らが、訪れた土地で吸収し何世紀もかけて育んできた文化が、後にスペインのそれと融合し、生まれたのがフラメンコだった。
パヘスは、そのフラメンコの原点を、そしてモロッコ人の父を持つシェルカウイは、彼自身の核を、砂丘の神秘―ドゥナス―の中に見出す。
東 敬子(フラメンコジャーナリスト)