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ヤン・リーピンのシャングリラ

POINT見どころ

奇蹟の舞姫ヤン・リーピンがおくる
名作「シャングリラ」魂のラスト・ステージ!

中国では知らないものがいないと言われる国宝級ダンサー、ヤン・リーピン。彼女が芸術監督を務める名作が6年ぶりに日本に帰ってくる。

神と対話をするかのように荘厳に、そして勇壮に鳴り響く太鼓の音。はじけるような笑顔で歌いながら驚異的な難度のステップをふむ愛らしい女性の群舞。男女が震えるような愛を囁くペアダンス…ヤン自らが「動く博物館」と呼ぶように、『シャングリラ』の舞台には中国・雲南省の少数民族に伝わる民族歌舞が次々に現れ、その圧倒的なエネルギーは見る者の心を捉えて離さない。

世界有数の自然の宝庫である雲南省。その地に暮らす少数民族たちは、長い歴史の中で独自の文化を培い、歌や踊りと共に生きてきた。自らも雲南省のペー族出身であるヤンはこれら美しい文化が急速に失われつつあることに危機感を抱き、舞台芸術という形で遺すことを決意する。私財をなげうち、15ヶ月にわたり雲南の村で文化を調査・収集する傍ら、村の歌自慢・踊り自慢を次々にスカウトして歌舞団を形成して作りあげられたのが本作『シャングリラ』である。

ヤンが最もこだわったのは、雲南の“原生態”の精神だった。原生態とは、中国語でありのままの姿であることを意味する。伝統的な歌舞の内容には一切の手を加えず、衣裳や小道具に至るまでそれぞれの民族が普段使用するもので舞台に上がる。西洋のダンス技術を取り入れたり、本来とは異なる衣裳で踊りつつもそれが〈民族舞踊〉としてまかり通っていた当時の中国において、それらを一切取り除いた上、祭事などでは一晩でも繰り返される歌舞を短時間に編集し、宝石箱のようにバラエティ豊かな芸術作品に昇華させた彼女の功績は計り知れない。

至上のダンサーが全身全霊をかけて作り出した本作は2003年に中国・雲南省の昆明会堂で幕を開け、中国を代表する作品として海外でも数多く上演されてきた。日本初演は2008年3月(オーチャードホール)。神業のようなヤンの踊り、そして野性味あふれるエネルギッシュな群舞は、人々の奥深いところにある「原始」を呼び起こし鮮烈な感動を与えた。その評判は口コミでまたたく間に広がっていき、全公演ソールドアウトを達成、早くも2年後に再来日を果たし再び絶賛された。「おそらく日本のお客様は、私たちと同じアジア的な審美眼をもって、雲南の形の美しさだけでなく精神を理解してくださった」と語ったヤン。実際にステージを見ていると、どこか懐かしく、そして血が滾るような興奮を感じる。それは我々とは全く異なる文化を土台としながらも、生きとし生けるものの普遍的な大地とのつながりをこめた、まさに魂のステージだからにほかならないのだ。

ヤンは、この演目で自らが踊るのはこの日本公演が最後と語る。これまでヤンが「シャングリラ」で披露したソロダンス「月光」「孔雀の精霊」はいずれも驚異的な身体能力と、息ができないほどの神秘性を余すところなく伝える名演であった。一度見たら忘れることのできない奇蹟の舞を見られる最後の機会をお見逃しなく!

楊麗萍(ヤン・リーピン)
芸術監督・構成・主演

中国では知らない人はいないと評される、国宝級ダンサー。
雲南省大理のペー族出身。1971年、西双版納(シーサンパンナ)歌舞団に入団。1986年、彼女の制作・主演で行われた一人舞台『孔雀の精霊』の成功により一躍有名となる。1990年北京で開催されたアジア協議大会閉会式でもこの踊りを披露し、世界中から衆目を集めることとなる。その後、彼女は多くの国との芸術交流を積極的に行い、これまでにアメリカ、ヨーロッパ、フィリピン、シンガポール、ロシア、カナダ、台湾など世界各国で公演を行っている。また監督、主演を務めた映画『太陽の鳥』では、モントリオール世界映画祭審査委員特別賞を受賞。

彼女が踊りを通して常に追い求めているのは、大自然の生態。太陽や月のエネルギー、風や雨など厳しい自然、木々や花々の成長、人間も含む動物や虫の営みを、エモーショナルで迫力あると同時に非常に繊細な、文学や映像にはできない形で表現してきた。

MOVIE動画

YAN LIPINGヤン・リーピンの軌跡