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トピックス

~鑑賞記~ まさに名人芸、ドールの超絶技巧に感嘆!3/3(日)第73回定期演奏会

12時過ぎから並びはじめた当日券の列の中には、

ホルンケースをお持ちの方がちらほら。

今回のオーチャード定期はなんといってもベルリンの名手、

シュテファン・ドールがお目当ての方も多かったことでしょう。

開演前のロビーでは、いつものオーチャード定期にも増して

お客様のワクワク感が強かったように感じました。

 

はやる気持ちをおさえながらの一曲目、

ウェーバー「オイリアンテ」序曲の華やかで快活な幕開けで、

一層気分が高まります。

 

そして、待望のリヒャルト・シュトラウス「ホルン協奏曲第2番」。

まさに名人芸の演奏に酔いしれましたが、驚いたのはドール氏と

オーケストラの演奏の吸いつき合うような一体感。

自身が演奏していない箇所でドール氏が幾度となくオーケストラを

見つめている姿が印象的でした。

 

そんなドール氏が “Something more contemporary” という

言葉のあとに演奏したアンコールは、メシアン「峡谷から星たちへ」より

恒星への呼び声」。

 

コンチェルトを吹き終わった直後に、超絶技巧がふんだんに使われている

この曲を軽々と演奏する(しているように見える)ドールは

まるでホルンという楽器と身体が一体となった存在のようにさえ見えてきます。

 

休憩中には

「ホルンという楽器の新しい面を知った」

「こんな楽器だと思っていなかった」

という会話があちらこちらから聞こえ、

ホルンに詳しくない筆者も「同感、同感!」と深くうなずきました。

 

 

そして後半はクラシック・ファンの間でも人気の高いチャイコフスキーの

交響曲第5番、通称「チャイ5(チャイゴ)」。

 

1階のR列で聴いていた私の席は、舞台とほぼ同じ高さで、臨場感たっぷり。

ちょうどファースト・バイオリンの様子がうかがえる位置です。

普段チケットを買うときはセンター寄りの席を選ぶことも多いけれど、

この席で聴くと一層ステージに引き込まれるようです。

曲の冒頭は想像していたよりも淡々と始まったような印象を受けましたが、

飯森範親のタクトは次第に情熱的でダイナミックに。

一気に終楽章のクライマックスまで駆け抜けるような演奏でした。

 

タクトが降りたと同時にわっと拍手が沸き立つのではなく、

会場全体が息をひそめている様な静かな興奮に包まれた瞬間があり、

手の嵐。

 

あの一瞬は、マエストロ飯森とN響が提示してくれた世界に浸っていた私たちが、

現実へ戻ってくるのにかかった時間だったのかもしれません。

 

名曲の重みを感じながらもどこか爽快な気分に包まれ、

幸せな日曜日のひとときを静かにかみしめながら渋谷の街を後にしました。

 

 

曲目

ウェーバー:歌劇「オイリアンテ」序曲
リヒャルト・シュトラウス:ホルン協奏曲 第2番 変ホ長調 作品86
チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 作品64

出演

指揮:飯森範親
ホルン:シュテファン・ドール