究極の舞踊 ヤン・リーピンの最新作 日本初上陸

ヤン・リーピンのクラナゾ 〜蔵謎=チベットの謎〜 Tibetan Mysteries

2011年4月5日(火)〜10日(日)

Bunkamuraオーチャードホール

芸術監督・熊川哲也が贈る英国バレエの最高傑作、初の同時上演!

プログラム

物語はチベットに古くから伝わる伝記。
五体投地で聖地ラサを目指す一人の老婆「阿妈」。彼女が三年という歳月をかけて旅をする中で見聞きしたチベット族の歌や舞、宗教儀式、伝統祭典が、芝居を交えて舞台上で展開されていく。
そして、季節は巡り、寒い冬のある日。志半ばで命を落としてしまう老婆の悲しい運命。そして、そこに待ち受けていたものとは・・

第一場「巡礼」

六弦琴

チベット族の代表的な楽器。チベット宮廷楽の主な伴奏楽器でもある。また歌や踊りと一体になった群舞にも使われる。別名をジャムネンといい、伝説では太古の昔チベット高原が海だったころリズミカルな波の音が遠くまで響いたという。ある日波間から琴を手にした天女が現れ恋の唱を歌った。その時からチベット人はこの楽器を愛用するようになった。

弦子舞

農民舞踊で四川省甘孜地区の「バタン弦子」が最も有名。必班(チベット式二弦琴)奏者がリードダンサーとなり群舞はその伴奏で歌う。民族衣装の長い袖を存分に利用した舞でその舞姿は敦煌の壁画にも見られる。敦煌壁画に描かれているのは漢族の女性で、当時漢族とチベット族に文化交流があったことがわかる。

第二場「労働」

ヤクダンス

チベットではヤクは「高原の舟」と呼ばれ、チベット人に不可欠な相棒とも言える。昔からヤクの肉を食べ、バターを作り、乳を飲み、糞を燃料にし、革で服や靴を作り、住むテントも作った。そのためチベット人はヤクに特別な愛情を持っている。まさにチベットのシンボル、チベット人の守護神ともいえる。ヤクダンスはチベットの民間芸能で漢民族の獅子舞と同じようなものだ。吉祥を祝う意味でチベット各地の祭に踊られている。

打阿嘎

ポタラ宮など寺院の修復工事に係わることはチベット人にとって誇りだ。無報酬でも各地から人が集まり作業の列に加わる。彼らは道具を打鳴らし、歌を歌い作業の疲れを癒す。打阿嘎はこうした中から生まれた珍しい歌舞だ。

第三場「賽装」

チベット族には「家財は牛の背に、財産は体に」という諺がある。一年に一度の賽装祭では豪華な衣装と装飾品で着飾り、草原で行われるファッションショーにこぞって参加する。遊牧民であるため財産はすべて身につける習慣があるためショーに参加するのは富の披露でもある。

第四場「転生」

巡礼の途中で死ぬのは一種の幸福だとチベット人はいう。なぜなら魂は帰依し、それが輝かしい転生の始まりだからだ。

※ プログラムの内容が多少変更になる場合がございます。予めご了承下さい。

死を知らなければ生を理解することはできない。
チベット族は人類文化遺産の貴重な一部分として独自の文化風習を残している。
生活習慣、信仰、婚礼、参拝、読経、鳥葬、生き仏(ラマ教の高層)、輪廻思想など
チベット文化は今日では世界中の注目の的だ。
「蔵謎」の中で描かれる老婦人「阿妈」の巡礼と転生はチベット族の死生感を表現している。生と死は常に一体であること。死は新しい生の始まりであること。老阿妈の五体当地は天をよりどころとし、死は生命の意義を映し出す鏡である。
苦を知らなければ、楽を体験することはできない。
チベット文化が流行している理由のひとつは彼らが雪の高原地帯に住むからだ。
その厳しい自然環境は、彼らの憂いのない安静な生活態度と好対照をなしている。
チベット仏教では人の心が苦と楽を生み、そこから心を安静にする能力が育つという。心の本質は安静への悟りなのだと説く。チベット人は信仰によりこのような特性を持つのだ。「蔵謎」の中でチベット族が苦を快楽に変え、煩悩を悟りに変える彼らの本質がよく表されている。ヤン・リーピンはチベット文化を掘り起こし、輪廻転生の思想を舞踊で再現した。
それこそ孔雀から度母(菩薩)への転生と言えるだろう。また優しい美から知の美への昇華でもあり、自然礼讃が生命賛美へと登りつめたといえる。
「蔵謎」ではヤンは「度母」(菩薩)という優しく穏やかな慈悲の化身を舞台に再現している。埃にまみれた心は菩薩の涙に洗われることにより、物欲に満ちた世界においても人の命を尊び、生命のよりどころを思いやる心に変わる。そして生命の真相と謎が明かされるのだ。


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