記念すべき10シーズン目にあたる今シリーズは、76歳の名匠モーシェ・アツモンのタクトで始まります。08年に入ると将来の音楽界をリードしていく気鋭の指揮者が続けて登場。ロッセン・ミラノフは65年、ブルガリア・ソフィア生まれ。フィラデルフィア管の副指揮者、ブルガリアナショナル放響の首席指揮者を務め、今後、シアトル響などを振る予定。67年に台湾で生まれ、日本で育ったキンボウ・イシイ・エトウは、ウィーン、ニューヨークで学んだ国際派。ベルリン・コミッシェ・オーパーの首席カペルマイスターを務めています。シリーズ後半は円熟の日本人指揮者たち。飯守泰次郎は十八番のベートーヴェンを披露。独特のキャラクターで親しまれている井上道義とN響との組み合わせも楽しみです。 また、ソリストでは人気ギタリスト村治佳織の登場が嬉しい。充実度を増す若林顕、ロシアの逸材アレクサンドル・メルニコフ、フランスの貴公子フランク・ブラレイ、クラシックにも進出しているジャズの小曽根真ら、ピアニストたちの競演にもご注目ください。
第46回 2007/9/23(日・祝)15:30開演
かつて東京都交響楽団の首席指揮者を務めるなど、日本でもお馴染みの世界的名指揮者モーシェ・アツモンがN響と初共演します。アツモンといえば、マーラーのドラマティックな演奏を思い出すが、今回はムソルグスキー(ラヴェル編曲)の組曲「展覧会の絵」。様々なキャラクターの絵に鮮明なオーケストレーションが施された傑作を名匠がどのように描くのか。円熟の至芸が堪能できることでしょう。 かつて映画「シャイン」でも用いられたラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は、曲のスケールが大きく、ロシアの哀愁にも満ち、今では同じ作曲家のピアノ協奏曲第2番よりも人気があるほどだ。実力派・若林顕が華麗なテクニックと心にしみる歌を披露してくれるに違いありません。
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 二短調 op.30 ムソルグスキー/ラヴェル編曲:組曲「展覧会の絵」 指揮:モーシェ・アツモン ピアノ:若林 顕
第47回 2008/1/6(日)15:30開演
何と言っても村治佳織の「アランフェス協奏曲」が楽しみ。ますます活躍の場を広げつつある彼女のN響オーチャード定期登場は約7年ぶり。成長の軌跡をその演奏で確かめられるでしょう。「アランフェス協奏曲」は、特に第2楽章の悲哀を帯びたメロディが有名なギター協奏曲です。 指揮はロッセン・ミラノフ。ジュリアード音楽院で指揮を学び、ブルーノ・ワルター記念奨学金を受けました。現在、フィラデルフィア管の副指揮者、ブルガリアナショナル放送交響楽団の首席指揮者も務めています。これまで、ボルティモア管、ロッテルダムフィル、モスクワフィルなどを指揮、また歌手のニコライ・ギャウロフ、ヴェッセリーナ・カサロヴァなどと共演。今後、シアトル響、ロイヤルスコティッシュナショナル響、スイスロマンド管などを振る予定。N響初登場。
グリーグ:「ペール・ギュント」第1組曲 ロドリーゴ:アランフェス協奏曲 チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調「悲愴」op.74 指揮:ロッセン・ミラノフ ギター:村治佳織 ※出演を予定しておりました指揮者のエイヴィン・グッルベルグ・イェンセンは都合により来日できなくなり、代わりにロッセン・ミラノフに変更させていただきます。何卒ご了解いただきますようお願い申し上げます。
第48回 2008/3/2(日)15:30開演
キンボウ・イシイ・エトウは、67年に台湾で生まれ、日本で幼少期を過ごし、ウィーン市立音楽院とニューヨークのジュリアード音楽院でヴァイオリンを学びました。その後、指揮者に転じ、小澤征爾やラトルに師事。06年からベルリン・コミッシェ・オーパーの首席カペルマイスターを務め、N響や新日本フィルなど、日本のオーケストラにも客演しています。名曲中の名曲であるブラームスの交響曲第1番を取り上げる今回の演奏は、彼の真価を問うものとなるでしょう。 若くしてその才能を巨匠リヒテルに認められたロシアの気鋭のピアニスト、アレクサンドル・メルニコフが弾くシューマンのピアノ協奏曲も注目されます。 ブラームスの交響曲と彼の才能を見出したシューマンの協奏曲が並ぶプログラミングも興味深いところです。
メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」 シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 op.54 ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 op.68 指揮:キンボー・イシイ=エトウ ピアノ:アレクサンドル・メルニコフ
第49回 2008/5/1(木)19:00開演
今、日本人指揮者のなかで最も円熟味のある充実したドイツ音楽の演奏を聴かせる人は、飯守泰次郎に違いありません。若き日にバイロイト音楽祭でアシスタントを務め、マンハイムやハンブルクなどのドイツの地方歌劇場の指揮者として積んだ経験が、今、大きく花開いています。東京シティ・フィルと関西フィルの常任指揮者を兼務し、ベートーヴェンの全交響曲やワーグナーの「ニーベルングの指環」の連続演奏に取り組むなど、まさに大器晩成型の名指揮者で、着実に巨匠への道を歩んでいます。 そんな飯守がベートーヴェンの傑作中の傑作である交響曲第3番「英雄」を取り上げます。白熱の名演を期待が高まります。 またフランスの“ピアノ王子”フランク・ブラレイの登場も楽しみ。抒情的なベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番で気品に満ちた演奏を聴かせてくれることでしょう。
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調op.58 ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調「英雄」op.55 指揮:飯守泰次郎 ピアノ:フランク・ブラレイ
第50回 2008/7/12(土)15:30開演
第50回目を記念して、世界的なジャズ・ピアニスト、小曽根真が、N響オーチャード定期に初登場。ボストンのバークリー音楽院で学び、カーネギーホールでのリサイタルやCDなどで、本場アメリカの聴衆も魅了する小曽根は、近年、モーツァルトのピアノ協奏曲にも挑戦するなど、クラシック音楽にも取り組んでいます。そんな彼の演奏で今一番聴きたいのは、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」(ドラマ「のだめカンタービレ」でも大人気!)にほかなりません。ジャズとクラシック音楽が融合した名曲で、小曽根は圧倒的な即興演奏を繰り広げるはず。 指揮は井上道義。古典音楽から現代曲まで幅く手掛ける才人です。07年秋にショスタコーヴィチの全交響曲の連続演奏会に取り組む彼だけに、このN響との第9番も聴き逃せません。
コープランド:ビリー・ザ・キッド ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー ショスタコーヴィチ:交響曲第9番 変ホ長調op.70 指揮:井上道義 ピアノ:小曽根 真