シュテーデル美術館所蔵 フェルメール 《地理学者》 と オランダ・フランドル絵画展

ヨハネス・フェルメール 《地理学者》(部分) 1669年 油彩・キャンヴァス シュテーデル美術館所蔵

2011年3月3日(木)−5月22日(日)

Bunkamura ザ・ミュージアム

見どころと展覧会構成

POINT1 17世紀オランダ絵画の巨匠フェルメールの傑作《地理学者》が東京初上陸!

30数点しか存在しないフェルメールの作品の中でも2点しかない男性単身を描いた作品のうちのひとつ、《地理学者》が東京で初めて公開されます。日本に居ながらにして、フェルメールの全作品踏破記録が更新できるまたとないチャンスです!

POINT2 ヨーロッパ屈指のオランダ・フランドル絵画のコレクションを誇るシュテーデル美術館の名作が勢ぞろい!

ドイツ・フランクフルトにあるシュテーデル美術館は、ヨーロッパでも屈指のオランダ・フランドル絵画のコレクションを有しています。今回、改築工事に伴い、約200年前の開館以来まとめて作品が貸し出される初めての貴重な機会となります。

POINT3 “大航海時代”をキーワード゙に読み解くフェルメールとオランダ・フランドル絵画

フェルメールの作品には、大航海時代に隆盛を極めたオランダを象徴するような地図や地球儀などのモチーフがちりばめられています。当時オランダには最新の地理情報が集結し、世界への情報の発信基地となっていました。未知なる世界への知的探究に没頭する男性をテーマに捉えた《地理学者》は、まさに17世紀のオランダを象徴する作品といえるでしょう。本展では、フェルメールの作品に描かれているモチーフや時代性を読み解きながら、オランダ・フランドル絵画の黄金期を展観していきます。

大航海時代の英知の結晶 ―― ヨーロッパ17世紀のダイナミズムを味わう。

歴史画と寓意画  History Painting & Allegory

神話や聖書の物語に基づく歴史画の分野は、壮麗でダイナミックな17世紀バロック美術をまさに体現している。フランドルの巨匠ルーベンスは、生き生きとした人物描写と輝く色彩で人々を魅了し、オランダの巨匠レンブラントは、人物の感情の高まりのクライマックスを抑制のきいた緊張感のある構図のうちに凝縮させた。また元来、写実的な細密描写を得意としたフランドルやオランダの画家たちは、物語の舞台を構成する風景描写や豊かな彩りを添える風俗画的、静物画的要素にも大いに手腕を発揮している。この写実の技は、抽象的な概念を人物や事物で表現する寓意画の分野にも豊かな展開をもたらした。

肖像画  Portraiture

オランダの画家たちは台頭する裕福な市民の姿を、人物に焦点をあてた簡潔な構図で描いた。当時多くの画家がこの分野を手がけ、日々の糧としていたが、なかでもハールレムで活動したフランス・ハルスは、人物の感情の動きをわずかな筆の動きで即座に捉える卓越した技で人気を博し、レンブラントに学んだフェル ディナント・ボルは、明暗を効果的に用いて、人物のもつ生命感を描き出した。一方フランドルでは人物を装飾的な背景や身分を表す持物とともに描く宮廷風な肖像画が好まれていたが、オランダでも17世紀後半になると、上流市民層の間でこうしたフランドル風の肖像画がしばしば描かれている。

風俗画と室内画  Genre & Interior Scenes

都市や農村の日常生活を描く風俗画や室内画は、16世紀後半以降幅広いテーマを生み出した。フランドルの画家ピーテル・ブリューゲル(父)が描いた、農民の姿を生き生きと捉えた作品は次第に農民風俗画という新しいジャンルを生み出した。居酒屋の情景を風刺をこめて描いたフランドルの画家ブラウエルはこのジャンルの新たな方向性を示し、一方オランダのヤン・ステーンは賑やかで騒々しい庶民の姿を時には教訓や寓意とともに描き出した。さらに17世紀後半のオランダでは、都市に暮らす一般市民の家庭での一こまや裕福な室内の情景など、台頭する市民社会を背景にした作品が数多く登場している。

静物画  Still Life

「静物画」は17世紀をとおして多種多様な分野へと発展を遂げる。このジャンルの成立に貢献したヤン・ブリューゲル(父)の華麗な「花の静物画」では、博物学的な情熱が追求されるとともに、実際には咲く地域も季節もばらばらな花々が装飾的に構成されており、異国の珍しい品を描いた他の静物画と同様、富を誇示する調度品としても好まれた。貿易大国となったオランダでは、描かれる事物のレパートリーが格段に広げられ、裕福な商人の邸宅や商会を飾るステータス・シンボルとして人気を博した。一方豪奢な品々を描いた静物画は現世の富や快楽の虚しさの概念と結びつけられ、しばしば「ヴァニタス(虚栄)」のテーマを明確に読み取ることができる。

地誌と風景画  Landscape & Topography

「風景」は17世紀になると宗教画や神話の舞台としてではなく、独立した主題として浸透し、次第に専門分野へと細分化していった。16世紀末のアントワープではスペイン軍により包囲され町を離れることを余儀なくされた市民にとって都市景観が故郷を思い起こさせるものとして繰り返し描かれた。一方、北海に面した地理から直接影響を受けたオランダでは、海景画の分野が発展し、自然の猛威をふるう海と文明社会との間の緩衝地帯ともいえる海岸の砂丘が新しい主題として登場した。風景は1650年頃にはオランダで最も重要なジャンルとなり、画家たちは身近な風景を特定可能な「自分たちの」土地として、それぞれの感性によって、誇りを持って描き出したのである。


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