花の画家 ルドゥーテ『美花選』展
ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 『美花選』より 《バラ、アネモネ、テッセン》 銅版画 コノサーズ・コレクション東京
2011年5月29日(日)〜7月3日(日)
Bunkamura ザ・ミュージアム
ルドゥーテが残した多くの作品の中でも『美花選』は、専門家だけでなく、より広く花を愛する人々のために制作されたもので、色とりどりの美しい花々、可憐なブーケ、瑞々しい果物などの植物画が収録されています。輪郭を線描しない点刻彫版法を駆使し、写実的な表現の中に芸術的な演出も加えられ、まさにルドゥーテの集大成と呼べる版画集です。
本展では、『美花選』全144作品を中心に、ルドゥーテの代表作である『ユリ科植物図譜』や『バラ図譜』の一部、ベラムに描かれた水彩画なども併せて展示します。
18世紀半ば、ルドゥーテは現在のベルギー南部のサンチュベールという町の画家の家に生まれました。パリに上京した後、花好きだった彼は王の庭園(パリ自然史博物館)に足しげく通うなかで、植物愛好家レリティエとの出会いをきっかけに、植物学の世界に接するようになります。植物画家としての名声を確立したのは『ユリ科植物図譜』で、美術的価値の高い、ルドゥーテならではの仕事でした。そして彼の名声を不動のものにしたのは、ナポレオン妃ジョゼフィーヌに捧げるべく制作した名著『バラ図譜』です。これらの図版はいずれも多色刷りの点刻による銅版画に手彩色を施したもので、多くの労力を要するこの技法により、原画に近い色合いが再現されています。
ルドゥーテ晩年の1827-33年にかけて36分冊で刊行され、144枚の植物画が収録されています。輪郭を線描しない多色刷りの点刻彫版法(スティップル・エングレーヴィング)を駆使し、植物学的正確さはもとより植物の透明感あふれる美しさを今に伝えています。題名からも分かるように、これは花を愛する人々のために描かれたルドゥーテからの贈り物なのです。
