ベルギー王立図書館所蔵 ブリューゲル版画の世界

2010年7月17日(土)−8月29日(日)

Bunkamura ザ・ミュージアム

見どころと展覧会構成

見どころ

Point1
ブリューゲル全版画が一堂に!

70点以上に及ぶブリューゲル版画は、いずれもブリューゲルの作品に基づいて彫版されたものです。ベルギー王立図書館が誇る国宝級のコレクションは、非常に良い状態で保存され、あたかも刷りたてのようなみずみずしい美しさを鑑賞していただけます。

Point2
16世紀ヨーロッパの民衆生活がリアルに!

ブリューゲルが民衆の姿を生き生きと捉えた縁日や季節の労働の主題は当時のコンテンポラリーアートとして人気を博し、同時代・次世代の画家たちに引き継がれていきました。描かれたキリスト教的な教訓や日常生活に密着した諺は人々の道徳観や生きる知恵を物語っています。

Point3
アニメーションの原点!? 奇妙な怪物大集合!

ブリューゲルの未曾有の創造力は、人間と昆虫や爬虫類、魚、獣を自由に合成し、さらに日常道具も生き物化しました。それらは奇妙でユーモラスな悪魔や怪物づくしの世界です。その動きのあるリアルな表現と意表をつく造形描写を、会場ではデジタル・コンテンツでお楽しみいただけます。

Point4
虫眼鏡必携!? 緻密な職人技を堪能できる!

小さな画面のすみずみまで埋め尽くす、ブリューゲルの驚くべき精緻な細密描写は、彫刻刀を自由自在に駆使した当時の一流の彫師たちの手で、原画とは異なる強いインパクトで再現されています。線の織りなす白と黒の世界はみるたびに新たな発見に満ちています。

展覧会構成

本展覧会はベルギー王立図書館所蔵のブリューゲルの版画作品と同世代と次世代の版画を合わせ、150点で構成されています。それらはまさにヨーロッパで最も関心の高かったテーマを反映しています。以下、7章に分けて展観していくことで、ブリューゲルの世界をとおしてヨーロッパの知的世界や民衆文化のルーツを多角的に辿ることができるでしょう。

第1章 雄大なアルプス山脈の賛美と近郊の田園風景への親近感

ブリューゲルは1551年、親方としてギルドに登録した後、イタリアに2,3年旅行した。帰国後、彼の仕事は「大風景版画」シリーズ用にアルプスの雄大な風景を制作することだった。切り立った巨峰の連山、大気感にあふれる広大な渓谷、対角線上にじぐざぐに流れる川などの構図で人々を魅了した。

第2章 聖書の主題や宗教的な寓意を描く

ブリューゲルは《聖アントニウスの誘惑》や「七つの罪源」シリーズにおいて、画面に蠕動する奇怪な怪物や幻想的な構築物を導入しながら、約40年前に他界したヒエロニムス・ボスに接近しようとした。だが「七つの徳目」シリーズでは日常生活での道徳の実践を描き、ここの「徳目」にかつてない斬新な図像を創案した。

第3章 武装帆船やガレー船の驚くべき表現力

16世紀中期のアントワープはヨーロッパでも有数の国際商業都市として繁栄した。都市に面したスヘルデ川は諸外国からの船舶で賑った。船舶シリーズは貿易商人、仲買人、探検家だけでなく、多種多様な外国船に興味を抱く国際的な購買層を対象とした。ブリューゲルは海上の暴風雨に耐え、海賊船の不意の襲撃に応酬できる武装帆船を細部にわたり、船舶技術者のような目で描写した。

第4章 人間観察と道徳教訓の世界

16世紀はエラスムスを始め、人文主義者たちが活躍する時代で、版画の主題や銘文にも彼らの人間観・道徳観が反映されている。ブリューゲルは生涯を通じ、「人間とは何か」を問い続けてきた思想家でもあったが、家族をどん底に落とした《錬金術》、貪欲な商人を風刺する《金銭の戦い》などで、物欲に対する人間の愚行を風刺した。

第5章 諺を通じて知る人間の「青いマント」の世界

16世紀は諺の黄金時代を迎え、ヨーロッパ各地で多くの諺集の編纂・出版が行われた。人々は中世での「往生術(死への心得)からルネサンスの「現世での生き方」へと方向転換し、「民衆の知恵の房」である諺に強い関心をもった。造形美術の世界でも、諺を主題とした彫刻、版画、絵の全盛時代であったが、ブリューゲルは画面に何気なく諺を挿入したり、一点の作品に一つの諺を浮き彫りにするなど、諺の視覚化に意欲的だった。

第6章 民衆文化や民話への共感

村の縁日や農民の婚礼の踊りはブリューゲルの同時代の画家たちも描いている。しかしブリューゲルは彼らのように都会人の視線で農民を冷ややかに観察するのではなく、日ごろの重労働から解放され、村総出で祭りを楽しむ農民たちに親近感を抱いた。縁日の主題では宗教行事、路上劇、輪舞、スポーツ、ゲームなどをまるで動画のように描いている。

第7章 四季や月歴表現で綴る市民の祝祭や農民の労働

四季や月歴に関する貴族の愉しみや農民の労働はすでに中世の聖務日課書や時祷書に描かれていた。しかしブリューゲルは《夏》で、従来の並列的な営みではなく、水を飲んだり、大鎌を振って麦を刈る農民たちにスポット当て、大胆な構図に挑戦した。


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