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展覧会構成と作品紹介
アルチンボルドとルドルフ2世

展覧会構成と作品紹介

本展は、会期中展示替えを予定しています。時期によってはごらんいただけない作品がありますので、あらかじめご了承ください。また、巡回展とも若干出品作品が異なりますのでご留意ください。
【名古屋市美術館】 2009年4月11日(土)−6月7日(日)
【兵庫県立美術館】 2009年8月26日(水)−11月3日(火・祝) 

第1章  イメージ詐術(トリック)の古典

西洋美術の歴史において、視覚のイリュージョンの働きを巧妙に利用し、観る者の目をあざむくような仕掛けをもった作品の系譜があります。とりわけイタリア・ルネサンスにおける遠近法の発達は、平面である絵画空間に奥行きある空間のイリュージョンを出現させることを可能にしました。この遠近法の働きを極端に誇張して用いることによって像を歪めて表現するのがアナモルフォーズ(歪曲像)と呼ばれる画法になります。16世紀のドイツ出身のエアハルト・シェーンの版画に代表される作品群は、観る者が特定の視点を取ることによって初めて何が描かれているかを見極めることができるもので、不思議さと驚きによって人気を博しました。同じく16世紀にハプスブルク家の宮廷画家として活躍したアルチンボルドは、花や野菜、あるいは海の生き物などを組み合わせて人物の顔を創り出すという独創的な手法で寓意に富んだ肖像を描き、現代に至る奇想の系譜を生み出しました。

第2章  トロンプルイユの伝統

迫真的な描写を突きつめることによって現実とイメージとの差違を曖昧にする、だまし絵の王道ともいえるトロンプルイユ(目だまし)の手法は、画家が自らの技量によって観る者の視覚に挑む知的な遊戯でもありました。奥行きある空間を見せる壁龕や棚の意匠は、次第に棚の扉が半開きになることでこちら側の空間にも突出し始め、さらには額縁から身体の一部がはみ出し、飛び出してくるような人物に至るまで、画家は様々な視覚の仕掛けを駆使することで、絵画空間と現実空間を限りなく近づけていったのです。

第3章  アメリカン・トロンプルイユ

ヨーロッパで発達したこのようなトロンプルイユの手法は、19世紀のアメリカで人気を博し、まさにオブジェそのもののリアルな存在感を主張するような多様な作品群が生みだされました。

 第4章  日本のだまし絵

日本でも幕末から明治にかけて多くの絵師たちが、遊び心溢れる様々なだまし絵を手がけています。日本版アナモルフォーズとでもいうべき鞘絵、国芳による人物を組み合わせた人の顔、あるいは広重による影絵的な隠し絵の手法などを、西洋のだまし絵と比べて鑑賞できるのも本展の大きなみどころのひとつです。さらに日本独特の掛け軸の世界でも、描表装(かきびょうそう)の精緻な描写、空間から立ち現れる幽霊の迫真性など、日本ならではのだまし絵も展開していきました。

 第5章  20世紀の巨匠たち−マグリット・ダリ・エッシャー

イリュージョンの作用を詐術的に操るこうした作品の系譜は、西洋美術史においてはむしろ傍流に属するものといえるかも知れません。しかし20世紀美術においてこれらの手法は新たに注目されて特異な展開をとげ、多様な広がりを見せていきます。とりわけイメージに対する想像力の作用に特に強い関心を寄せていたシュルレアリストたちの中にあって、ダリは二重イメージや歪曲像を多用することで錯乱的認識を視覚化し、マグリットは再現イメージと現実との危うい関係を巧みなイメージ操作によって提示することを試みました。

 第6章  多様なイリュージョニズム―現代美術におけるイメージの策謀

現代では写真や映像技術の発達によって、私たちをとりまくイメージの環境は大きく変化し、イリュージョンをもたらす次元は驚くほど多様になりました。芸術家たちは新たな表現手段をも駆使しながら、イリュージョンを利用し、その再現性を操り、偽装し、あるいはその虚構性を暴露しています。

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