
ティアラで最も多く使われている宝石はダイヤモンドである。それはこの最も高価な宝石こそが、いろいろな意味での最高位の象徴でもあるティアラに最も相応しいからだ。実際、ダイヤモンドが放つ透明感のある強い輝きは、このジュエリーのもつ崇高さそのものといってもよいだろう。しかもティアラには、質の高いダイヤモンドが惜しげもなく大量に使われている。選ばれた者しか手にすることができないジュエリーであることは、その外観からしても明らかなのだ。
ダイヤモンドがこれほど使われるようになった背景には、近世における研磨技術の発達と、1870年頃の南アフリカでのダイヤモンド鉱山の発見がある。1851年のロンドン万国博覧会を機にすでに活況を呈していたジュエリー界は、これによって更なる華やかさを増すこととなった。
今回出品されるティアラのなかでも、ナポレオン一世の血をひくマリー・ボナパルトのティアラは、カルティエの作で、大小取り混ぜた千個を越すオールド・ブリリアント・カットのダイヤモンドと、中央には9.61カラットのペア・シェイプ・カット・ダイヤモンドが揺れるように下げられている。イタリア王妃マルゲリータのティアラや英国のヴィクトリア女王の愛娘であり、ヘッセン大公ルードウィッヒ4世妃となったプリンセス・アリスのティアラにも、目を見張るほどのダイヤモンドが用いられている。
|