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「セバスチャン・サルガド写真展"EXODUS 国境を越えて"」 |
なぜ人類はこの道を選んだのか、そして何処へ向かうのだろうか
ニューヨーク在住の音楽家・坂本龍一氏は、昨年9月11日に起こった米国同時多発テロの直後、インターネット上でやりとりされる各国各界の人たちの意見を集め、著名人の寄稿も合わせた『非戦』という本を監修し、大変話題になった。その編集に際し坂本氏がどうしても欲しいと思い、巻頭ページに掲載したのが、本展に出品されるサルガドの作品の一枚だった。アフガニスタン首都カブールの廃墟の中を松葉杖でかろうじて歩く片足を失った男性の姿。
当時アメリカから一方的に流入する大量の情報に溺れかけていた私たちに、違う視点から、そして歴史的な因果関係を考慮に入れてあの出来事を見据えなければならない、と気付かせてくれた一枚だった。これが、セバスチャン・サルガドの写真の持つ力である。
セバスチャン・サルガド写真展「EXODUS」は、今、この瞬間も地球上で増え続けている難民や移民の人々の生活を、サルガドの表現手段である写真で綴った一大巨編である。日本の都会に住み、忙しく日常生活を送りながら、私たちは何処まで遠く思いを馳せることができるだろうか。周りを見回して、難民や亡命者がいるだろうか。日本がどれだけ特別な国なのかを会場で確認してほしい。同じ国の中で昨日まで隣人だった民族同士が争うアフリカのルワンダやアンゴラ、東欧のセルビア共和国コソボ自治州やクルドの人々の生活。今も流浪の歴史の中に生きるパレスチナ人。そんな苦難の中にある人間を、サルガドしか成し得ないほど崇高に写し撮った作品に感動せずにはいられないだろう。
緒方貞子氏(前国連難民高等弁務官)がサルガドの写真についてこう寄せてくれた。
「サルガド氏の写真は、私たちをしばし立ち止まらせ、この地球に生きる難民、移民、また様々な人々の希望や夢に思いをはせるひとときを与えてくれるでしょう。」
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