レオ・レオーニの絵本づくり展

COMMENTARY章解説

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レオーニのテクニック(技法)

レオーニの絵本には様々な技法が用いられています。
多くの作品にみられるコラージュでは多種多様な紙が使用され、ハサミで切ったり、手でちぎったり。
コラージュ以外にも、水彩・油彩・クレヨン・鉛筆・色鉛筆などあらゆる画材を試み、同じ画材でも使い方にバリエーションがみられます。
また、レオーニ自身が彩色した紙をコラージュして使っている場面も多々あり、レオーニのテクニックに注目するとあらためてその多彩さに驚かされます。本章では細部にまでこだわり抜いた絵本づくりの技法から、レオーニが手しごとに込めた思いを紹介します。

資料:アニー・レオーニさんより借用した、レオーニの作品のパーツ画像
レオ・レオーニ《 フレデリック》原画(部分) 1967年
Works by Leo Lionni, On Loan By The Lionni Family

レオー二の絵本にみられる技法について

切って貼り合わせてこすって混ぜて…
レオ・レオーニの作品では、様々な技法が
取り入れられています。

コラージュ

レオーニの絵本にもっとも多く登場するテクニック。
紙をハサミで切るだけでなく、手でちぎることも。
特にレオーニが愛したねずみたちは、
モフモフした毛の感じをだすために、必ず手ちぎりで表現されます。

使用されている作品:『フレデリック』『アレクサンダとぜんまいねずみ』など

フロッタージュ

例えば『コーネリアス』ではワニのうろこを表現するのに使われています。

使用されている作品:『コーネリアス』『ニコラスどこにいってたの?』など

モノタイプ

版画の中で、毎回ユニークで異なる表情を作り出すことのできるモノタイプ技法をレオーニは使っています。

使用されている作品:『スイミー』『ぼくのだ!わたしのよ!』『ニコラスどこにいってたの?』など

スタンピング

同じ形のスタンプでも、色や押す向きを変えることで表情豊かな画面を生み出しています。

使用されている作品:『スイミー』『あいうえおのき』など

※本展では『スイミー』の原画は出展しません。

上から:《ぼくのだ!わたしのよ!》原画(部分) 1985年、《アレクサンダとぜんまいねずみ》原画(部分) 1969年、《コーネリアス》原画(部分) 1983年、《あいうえおのき》原画(部分) 1968年 すべてレオ・レオーニ Works by Leo Lionni, On Loan By The Lionni Family

実の孫が語る絵本にこめられたメッセージ

レオーニが一緒に出かけた孫たちのために電車の中で即興的に作ったお話から、日本でも非常に人気が高い『あおくんときいろちゃん』が誕生しました。
この絵本をきっかけに、レオーニは絵本作家の道を歩み始めます。現在レオーニの作品を管理しているのは、まさにそのお孫さんであるアニー・レオーニさん。彼女は、絵本原画などを整理しながら、レオーニが社会に何を伝えようとしていたのか、思いを巡らせています。
「ぼくが めに なろう」という谷川俊太郎さんの名訳があまりにも有名な『スイミー』は、出版から半世紀以上にわたり、老若男女問わず人々の記憶に残る不朽の名作。
これらの絵本をはじめとするレオーニが世に送り出した作品の数々が愛され続ける理由とは?

「ぼくがめになろう」―「スイミー」より

レオーニの孫・アニー・レオーニ氏

「レオは、彼自身がフレデリックであり、スイミーであり、そしてマシューでもあったのです。自分の絵本の主人公たちのように、確たる信条を持った人でした。
発表から何十年も経った今でも人気があるのは、レオの絵本には幼い時から年を取ってもまだなお、私たちが問い続けること―自分自身のアイデンティティーについて、コミュニティとの関係性について、そして人間という存在そのものが描かれているからでしょう。」

アニー・レオーニ

レオーニの言葉を紡ぐ谷川俊太郎氏

私たちが知っているレオーニの言葉の多くは、谷川俊太郎さんによる絵本の翻訳です。
その独特な言葉の選び方は谷川さんならでは。
今も色褪せないレオーニの作品世界を日本の読者に紹介するにあたり、なくてはならない唯一無二の存在でした。
谷川さんは1967年、36歳の時にその年日本で刊行されたレオーニの絵本『あおくんときいろちゃん』と出会います。
これが「自分に合った絵本の制作を考え始めるきっかけ」となり、谷川さんご自身のことばによる絵本を次々と生み出し、また翻訳においても心に沁みる名訳絵本が生まれました。

※『あおくんときいろちゃん』は藤田圭雄 訳、至光社より出版

レオ・レオーニ《 あいうえおのき》原画(部分) 1968年
Works by Leo Lionni, On Loan By The Lionni Family

2

原画で読む絵本『6わのからす』

様々な技法が駆使されるレオーニの絵本ですが、
そのビジュアルと双璧をなす必要不可欠な要素がストーリーです。
ものがたりと絵柄が一体となってはじめて、
作家の世界観を映し出す絵本が完成するのです。
ここでは『6わのからす』という絵本の原画が一堂に会することで、
ストーリーとビジュアルの織りなすマッチングの妙を堪能しつつ、
レオーニが我々に伝えたかったメッセージを紐解きます。

ことばには まほうの ちからが ある―『6わのからす』より

「はなしあいに ておくれは ないよ」-『6わのからす』より

レオ・レオーニ《6わのからす》原画 1988年 Works by Leo Lionni, On Loan By The Lionni Family

3

レオレオリウム!
レオー二の絵本ワールドにようこそ

第3章では、Bunkamuraザ・ミュージアムとplaplaxのコラボレーションによる、レオーニの絵本ワールドを体感できる場を展開します。レオーニの絵本の重要なイメージの源泉となっている、テラリウム。幼少期に作っていたというテラリウムは、一体どんなものだったのでしょう。そんなことを考えながら、いざ、レオーニの絵本の世界へ!!

テラリウムとは?

レオーニが少年時代から好んで制作していた、
ガラス製の容器に動植物を入れて飼育栽培する手法。

近森基、小原藍plaplaxプラプラックス

インタラクティブ作品の制作をベースに、空間・映像・プロダクトなど、領域を横断しながら活動。扱うテーマやモチーフの中に潜んでいる物語を掘り下げ、様々なメディアを使って作品化することで、新しい発見、創造的な学びや、ワクワクするような体験の創造に取り組んでいる。

近年の主な出展:「デザインあ展」(2018年)、「いわさきちひろぼつご50年 こどものみなさまへ」(2024年)他

ちきゅうに へいわを すべての ひとびとに やさしさを せんそうは もう まっぴら -「あいうえおのき」より

《アレクサンダとぜんまいねずみ》原画(部分) 1969年、《フレデリック》原画(部分) 1967年、《マシューのゆめ》原画(部分) 1991年、《あいうえおのき》原画(部分) 1968年
すべてレオ・レオーニ Works by Leo Lionni, On Loan By The Lionni Family