Point
見どころ
好奇心のコレクター、
ルドルフ2世の壮大なプライベートミュージアムとは?
ルドルフ2世とプラハ
神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世は、1583年に首都をウィーンからプラハに移し、独自の芸術文化をその宮廷に花開かせた。特に美術の大家の作品の入手に努め、彼らを宮廷に呼び寄せ自然物も広範囲に収集、自身の嗜好の強い最高水準の芸術作品と珍奇な品々で構成された壮大なコレクションをプラハに築き上げた。
神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世は、1583年に首都をウィーンからプラハに移し、独自の芸術文化をその宮廷に花開かせた。特に美術の大家の作品の入手に努め、彼らを宮廷に呼び寄せ自然物も広範囲に収集、自身の嗜好の強い最高水準の芸術作品と珍奇な品々で構成された壮大なコレクションをプラハに築き上げた。
15世紀半ばに大航海時代が幕をあけて以降、ヨーロッパでは領土の拡大のみならず、未知の世界探検が行われ、新たな動植物や鉱物などが発見されていく。プラハでルドルフ2世の宮廷文化が花開いた16世紀末から17世紀始めは、望遠鏡による天体観測が始まり、ガリレオ・ガリレイ(1564〜1642年)が地動説を唱えるなど、人々の宇宙への眼差しも飛躍的に広がった時代だった。本展では天体観測機器のほか、天文学や錬金術に関する貴重な資料を紹介する。
天文学や占星術に関心の高かったルドルフ2世は、デンマークの天文学者ティコ・ブラーエ(1546〜1601年)や、ヨハネス・ケプラー(1571〜1630年)をお抱えの天文学者として雇用しており、プラハの宮廷での二人の出会いがその後の天文学を科学的な地平へと導く重要な役割を果たした。
プラハには、新たに発見された様々な物のみならず、新たに発明された科学機器、創造された芸術作品が収集される。動物、植物、鉱物などの珍奇な自然物も、皇帝の驚異のコレクションの一部を構成した。
ルドルフ2世は、生きた動物を集めた動物園をも所有しており、馬の愛好家としても知られていたという。そのお抱え画家の一人、ルーラント・サーフェリー(1576〜1639年)は、プラハからネーデルラントへ帰郷したのち、たくさんの動物たちが画面いっぱいに集う独自の形式を発展させ、愛らしい動物画を数多く描いた。
山岳風景や動物画だけでなく、端正な
自然の博物を主題とした細密画を得意とするヨーリス・フーフナーヘル(1542〜1600年)は、蔵書家でもあったルドルフ2世の求めに応じて繊細で華麗な細密画や装飾を写本に施した。小さきものたちへの眼差しが微笑ましいフーフナーヘルの水彩作品は、日本初公開。
アルチンボルドにスプランガー、ファン・ラーフェステイン・・・。
マニエリスム(ルネサンス後期とバロック期のはざまに、優美さを求めて極端な強調や歪曲に走った美術の傾向)を愛好したルドルフ2世のもとに集った画家たちは、時に妖艶な雰囲気すらたたえた優雅な芸術をプラハで生みだした。
ルドルフ2世に最も寵愛された画家の一人、ジュゼッペ・アルチンボルド(1527~1593年)。本作は年老いた画家が晩年にイタリアに帰郷してから制作し、皇帝に贈ったルドルフ2世の作品で、果実と季節の移ろいを司るローマ神、ウェルトゥムヌスとして皇帝を描いた異色の肖像画である。アルチンボルドは、植物や動物、魚などの生き物、更には本や日用品などを組み合わせて人物像を作り上げた、タブル・イメージの名手。その作品の中でも、怪しく謎めいた皇帝の人物像を、四季を掌握する力を持つ神として描き出した傑作。
イタリアに学び、ハンス・フォン・アーヘン同様にエロティックな神話画を得意としたバルトロメウス・スプランガー(1546~1611年)は、1580年にルドルフ2世の宮廷画家に指名され、ウィーンからプラハに移住した。1590年代半ば頃に制作されたとされる本作は、女装するヘラクレスを描き、当時プラハの宮廷で好まれた半身像の人物を組み合わせた大胆な構図が目を引く。皇帝ルドルフ2世の旧蔵であった可能性が高い。
ディルク・ド・クワード・ファン・ラーフェステイン(1576年頃~1612年)は、フランドルの画家、フランス・フローリスに学んだあと、ルドルフの宮廷画家に任命され、20年間プラハで皇帝に仕えた。ファン・ラーフェステインは、ルドルフ2世のために宗教画や寓意的な主題の作品を制作した。なかでもルドルフの治世をたたえた本作はルドルフ2世から直接発注されて描いた作品だとされている。
ヨーロッパ各地で発達を遂げた数々の驚異の部屋のなかでも、彼の驚異の部屋はもっとも豊かで有名なものの一つとなった。
驚異の部屋の流行は17世紀にも続くが、その後18世紀には少しずつ科学収集室に引き継がれていく。
これらの工芸品は、驚異の部屋を記録した作品の一つ。
皇帝としてなすべき職務や義務よりもコレクションに関わることの方を好んだルドルフ2世は、ヨーロッパ随一の素晴らしいプライベートミュージアムを作り上げた。美しきもの、奇妙なもの、怪物染みたものや異国趣味の大の愛好者であった皇帝は、同時代のあらゆる収集家を
映画監督、現代美術家のフィリップ・ハース。アルチンボルドの作品にインスパイアされファイバーグラスなどの素材で、野菜や果物、花などを本物そっくりに創作し、2次元の絵画作品を立体的に仕上げた4m~5mにも及ぶ巨大彫刻のアルチンボルドの《四季》シリーズは海外の美術館や植物園などで展示され大きな話題を集めています。
本展では、《四季》シリーズ模型4点(各高さ約1m)を特別に展示予定。どうぞお楽しみに!