生誕60周年記念 くまのパディントン™展

MESSAGEメッセージ

第1巻『くまのパディントン』マイケル・ボンド作/松岡享子訳/ペギー・フォートナム画(1967年初版・福音館書店)

本展監修者 松岡享子先生より
(福音館書店「パディントン」シリーズの翻訳者)

「こんな本があるんですが、訳してみませんか?」と、福音館書店の松居直氏が声をかけてくださったのは、もう50年もまえのこと。それがA Bear Called Paddington ―パディントンという名のクマとの出会いでした。笑い転げながら読み、すぐに翻訳をお引き受けしたのですが、このときは、これが長くつづくシリーズになるとは予想もしていませんでした。ところが、そのあと続編がつぎつぎと出て、わたしとこの愛すべきクマくんとのおつきあいは、半世紀もつづくことになりました。
毎日新聞社が「くまのパディントン™展」を企画すると知り、お手伝いをはじめた昨年の6月、著者のマイケル・ボンド氏の訃報が届きました。ついにお会いする機会を逸してしまったのは心残りでなりませんが、翻訳をしている間、わたしの心のなかには、いつもかわいくてたまらないというようにパディントンを見つめているボンド氏の温顔が見えていました。
40以上の言語に訳され、3500万部も出ているというパディントンの本。天真爛漫、好奇心旺盛、発想力抜群、強い正義感をもち、徹底して楽天的なこのクマくんの存在が、展覧会を通してさらに多くの人たちに知られ、作品を読むきっかけとなりますように。パディントンの生みだす笑いが、多くの人の心を温かくしてくれますように。そして、このユニークで愛らしいクマくんを大切な心の友のひとりに加える人が増えますように。

「くまのパディントン™展」開催記念 松岡享子さん講演会

松岡享子(まつおか きょうこ)プロフィール

1935年神戸市に生まれる。神戸女学院大学英文学科、慶應義塾大学図書館学科卒業。1961年渡米。ウェスタンミシガン大学大学院で児童図書館学専攻後、ボルチモア市立イーノック・プラット公共図書館に勤務。帰国後、大阪市立中央図書館を経て、自宅で家庭文庫を開き、児童文学の翻訳、創作、研究を続ける。1974年、石井桃子らと共に東京子ども図書館を設立、現在、同館名誉理事長。著書に『子どもと本』『えほんのせかい こどものせかい』創作に『なぞなぞのすきな女の子』『うれしいさん かなしいさん』、翻訳に『しろいうさぎとくろいうさぎ』、「うさこちゃん」「パディントン」シリーズなど多数。