
20年以上前のことです。
大人計画を初めて見に来た蜷川幸雄さんと楽屋前でお会いしたとき、蜷川さんは、「うんうん」というような表情をしていらっしゃいました。それは「コクーンをまかせた、松尾くん」という意味合いだったと思う。もちろんそれは、今後のコクーン、という意味ではなく、来年あたりのコクーン、ということで、わたしが初めてコクーンに書き下ろした『キレイ』を観た蜷川さんは、がぜんご立腹だったとか。
その頃わたしは、コクーンの演出席にいながら、コクーン的なるものと必死で抗っていたわけですから。当然のリアクションです。
しかし、気がつけば、20年以上新作や再演をコクーンでやり続け、さらに気がつけば、芸術監督までやっておる次第で、コクーン的なるものと抗い続けていたはずのものが、しれっとコクーンの内部にいるという状況に、天国の蜷川さんは納得してくださったのかどうか…。
ともあれ、就任した途端、コロナ禍となり、それもあけぬまま、休館の憂き目。まだ、なんの爪痕も残せぬままであります。
『シブヤデマタアイマショウ』
この言葉は、未練でしょうか。開き直りでしょうか。蜷川さんへの懺悔でしょうか。
せめて長いお別れの前の一夜の祭りだけは、バカみたいに明るく成し遂げたいと思っております。
シアターコクーン休館前夜のグランドフィナーレを飾るのは"大人の歌謡祭"第2弾!
シアターコクーン芸術監督の松尾スズキが総合演出を務め、2021年に上演され大好評を博した“シブヤデアイマショウ”の第2弾、待望の上演決定!
第1弾に引き続き、2022年『パンドラの鐘』で高い評価を得た杉原邦生、振付家/ダンサーの康本雅子がコーナー演出を手掛けるほか、構成台本の天久聖一が今回はコーナー演出にも参加!
出演には、数多くの松尾作品で幅広い役柄を演じてきた多部未華子が、満を持して登場。舞台での久々のタッグに期待が高まります。さらに、歌、ダンス、芝居三拍子揃った松尾作品のミューズ・秋山菜津子、劇団「SNATCH」に所属し舞台を中心に活躍する後東ようこ、大人計画からは猫背 椿、村杉蝉之介、近藤公園、そしてショーを大いに盛り上げる精鋭アンサンブルメンバーといった頼もしい顔ぶれが一堂に会します。生バンドの演奏と、ミュージカルの第一線で活躍するスターを日替わりゲストに迎え、様々な企画が盛り沢山のエンタテインメントショーをお届けします!
©細野晋司
1988年に大人計画を旗揚げ、主宰として作・演出・出演を務めるほか、小説家・エッセイスト・脚本家・映画監督・俳優など多彩に活躍中。『ファンキー!~宇宙は見える所までしかない~』(97)で第41回岸田國士戯曲賞を、映画『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(08)で第31回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を、『命、ギガ長ス』(19)で第71回読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞。小説『クワイエットルームにようこそ』、『老人賭博』、『もう「はい」としか言えない』は芥川賞候補となった。主演したテレビドラマ『ちかえもん』は第71回文化庁芸術祭賞ほか受賞。20年よりBunkamuraシアターコクーン芸術監督に就任。最近の公演としては『ニンゲン御破算』(18・作・演出・出演)、『世界は一人』(19・出演)、『命、ギガ長ス』(19・作・演出・出演)、『キレイ-神様と待ち合わせした女-』(19・作・演出)、『フリムンシスターズ』(20・作・演出)、『シブヤデアイマショウ』(21・総合演出・構成台本・出演)、『パ・ラパパンパン』(21・演出)、『命、ギガ長スW(ダブル)』(22・作・演出)、『ドライブイン カリフォルニア』(22・作・演出)、『ツダマンの世界』(22・作・演出)などがある。
松尾スズキ
多部未華子
猫背 椿
村杉蝉之介
近藤公園
後東ようこ
康本雅子
秋山菜津子
齋藤桐人
乾 直樹
香月彩里
加賀谷一肇
エリザベス・マリー
中根百合香
永石千尋
黒沢茉莉衣
藍 実成
中道杏菜
古賀雄大
生田絵梨花
大野拓朗
甲斐翔真
笠松はる
木下晴香
木村達成
小池徹平
昆 夏美
咲妃みゆ
ソニン
新妻聖子
東 啓介
廣瀬友祐
三浦宏規
森崎ウィン
柚希礼音