物語
舞台は“自給自足自立自発の楽園”をスローガンに掲げた架空の農業集落「クマギリ第三農楽天」。病に倒れた父に代わり村をまとめる頭目代行の雄介(瀬戸康史)は、リーダーシップのなさに悩みながら、頭目代行としての存在感を示すために、仮想敵国との対立を演じたり、死刑を復活させようとしたりしている。
たった一つの存在価値のあかしは婚約者の蝶子(山下リオ)。今は拘置所に入っている兄・地介(六角精児)の婚約者だったが、妊娠せず、地介入所後、雄介の子供を身ごもった。後継者を産む生殖能力を有することが、かろうじて雄介の自尊心の支えとなっている。
しかし住人たちは頭目代行を全く頼りにせず、妹・リク(三吉彩花)は兄に反抗して、彼が統治するこの土地を楽園だと認めようとしない。そのうえ女警備長の島森(峯村リエ)とよからぬ関係なのだ。
ある夜、集落は謎の男・大神(ノゾエ征爾)の襲撃を受ける。翌朝の集会でブタ吉(山口航太)とタチ政(武居卓)、経理主任の山木(家納ジュンコ)、医者の赤痢(マキタスポーツ)らを集め、雄介は敵国からの攻撃対策の自警団設立を提案するが島森は難色を示す。そんなことをよそに、捨て子のトビラ(湯川ひな)は壊された合同テレビの修理をしてほしく、外部から来る保険手続き代行人の一本(町田水城)の来訪を待ちわびるばかり。事あるごとに自信を喪失する雄介。
そんな息子を、母・ハル子(高田聖子)は時には行きすぎを叱咤し、時にはやさしく心配する。元芸者で情に厚く朗らかなハル子を雄介は大切に思っていた。
ある日、集落に2人の流れ者がやって来て、仮想敵国・シカノバルからのスパイ容疑で雄介に捕らえられる。力持ちだが頭の弱い万蔵(もう中学生)と、切れ者の葉蔵(稲葉友)だ。二人はいとこ同士で、万蔵がシカノバルで起したある事件のせいで逃げてきたという。葉蔵に奇妙な友情を感じる雄介。
そしてもう一人、監獄に入っていた地介が故郷に戻ってきて・・・。

瀬戸康史 プロフィール
1988年、福岡県出身。2005年デビュー。2017年、主演舞台『関数ドミノ』(前川知大演出)の演技で、第72回文化庁芸術祭演劇部門新人賞受賞。近年の主な出演作品は、NHK連続テレビ小説『まんぷく』(18-19)、『透明なゆりかご』(18/NHK)、『ルパンの娘』(19/CX)、映画『寝ても覚めても』(18/濱口竜介監督)、舞台『関数ドミノ』(17/前川知大演出)、『ドクター・ホフマンのサナトリウム〜カフカ第4の長編〜』(19/ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出)など。また、4月期テレビドラマ『私の家政夫ナギサさん』(TBS)への出演が控える。
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