8月の家族たち August:Osage County

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2016.04.28 UP

【コラム】本日の家族たち Vol.4

「誰もが身に覚えのある家族の”本音バトル”。
このキャストで描く最初で最後のコメディです」(KERAさん)


――本作はKERAさんにとって、オリジナル戯曲『わが闇』(07年、13年)、『祈りと怪物』(12年)、チェーホフ『三人姉妹』(14年)に続く”三姉妹作品”です。

KERA:トレイシー・レッツという人はなかなかに辛辣なコメディを書く人で、日本でも『BUG』という作品が坂手洋二氏の演出で上演されていますが、彼の新作が僕の大好物な”三姉妹もの”と聞いて触手が動きました(笑)。映画版は客席でもほとんど笑いは起こりませんでしたが、映像で観たブロードウェイ公演の客席は、爆笑の連続。演出に加え上演台本も任せて貰えるので、日本初演もきっと、シリアスなだけでなく随所で笑える舞台にできるんじゃないかな。

 
――生瀬さんと橋本さんの役どころは?

生瀬:バーバラの夫ビル役です。あまり激昂したり落ち込んだりせず、ロジックに物事を進めていくタイプ。そこは自分と似ているかも。
橋本:僕は得体の知れない三女カレンの婚約者スティーブ。台本には彼のバックボーンが一切書かれておらず、どういう男か分からない。果たしてなぜカレンはこの男に惹かれるのか、そこを観て頂きたい。ただの”変態おやじ”に映るかもしれませんが(笑)。


――劇中では女性陣の本音バトルも見ものです。

生瀬:人ってあんまり本音を言う機会ってないじゃないですが。それを舞台ではトップ女優たちが実際に言葉にするわけですから「このキャラクターは私だ!」「なるほどわかる!」という心境になる。
橋本:女性陣のバトルは端から見ていてもスリリング。スティーブが麻実れいさん演じるバイオレットに詰め寄られる場面では、僕だったら笑って誤魔化すやろなと。口では女性には敵わない。
KERA:台本も作者の思惑なのか女性の方が強く書かれているので。客席で頷いたり、首を傾げたりする女性客らの姿が目に浮かびます。


――とはいえ、本音には笑えない内容も多く…。

KERA: :設定は非常に深刻なので、日本では特に「そんな状況で笑ってもいいの?」と思われがち。ただ僕の中ではもう一歩踏み込んで、深刻な状況はそこにあるわけだから、逆にコメディを描いてもちゃんと人生哲学や家族について考えるビターな味わいは残ると思っています。
生瀬:僕が面白いと感じたのは、昔劇団にいた頃に稽古場で「お前らちゃんと聞いてたのか!」と怒る演出家に対して、「聞いてませんでした!」と凄い大声で叫んだ劇団員がいて。その場違いな台詞と声のボリュームが可笑しくて(笑)。このやり取りって、文字面だけ台本に起こしてみれば、だだの他愛もない会話なんでしょうけど、結局、今回の芝居もその面白さに近いと思う。思いもよらない状況で一生懸命になっている姿が可笑しいっていう。KERAさんも稽古場で言ってますもん、「もっとデカい声で、真剣に言葉を返して」って。


――翻訳劇とはいえ共感ポイントが多そうです。

生瀬:とにかく面白いですし、キャストが魅力的!
橋本:ベテランから若手まで、俳優たちの生バトルは劇場でしか観られませんから。
KERA:この先この顔ぶれでコメディをやる機会はないと思う。自分にも身に覚えがあると思える作品ですし、とにかく気楽に楽しんで欲しい。劇場でお待ちしております。


(構成・文/石橋法子)