見どころ

濃厚かつエネルギッシュな赤堀ワールド再び!
愛すべきダメ人間の暴走を北村一輝らが熱演する

九州で実際に起きた家族ぐるみの殺人事件をもとに『殺風景』を書き下ろし、2014年5月、シアターコクーンに劇作家・演出家デビューを果たした赤堀雅秋の、再びの登板が決定した。
タイトルは『大逆走』。赤堀が自身の劇団THE SHAMPOO HATで発表してきた作品は、大きくは2つに分けられる。1つは暴力や死が直接的に劇中に描かれ、観る者を打ちのめすようなヘヴィーなもの。もう1つは、社会の下層を蠢く人々を主人公としながらも、どこか可笑しみが漂い、微かな希望が感じられる作品群。『殺風景』を前者のカテゴリーとするならば、『大逆走』は後者に属するもので、現段階では"至近距離 珍道中(ロードムービー)!!"という小気味良い呼称がついている。
「『殺風景』に続くチャンスをいただいた今回は、前回とは真逆に壮絶かつ壮大にどーでもイイ話をしたいと思っているんです(笑)。着想のもとは昨年9月の劇団公演『風の吹く夢』。土木作業員の男たちが、貧しい新入りのために一日中洗濯機を探して街をさまよう、話としてはそれだけなんですが、劇中の人間像や客演を含む俳優さんたちとの芝居づくりの過程で、20年近く演劇を続けて来た意義が感じられた。あのときの手応えを、コクーンのサイズに拡大したうえで成立させられたら、固まりつつある自分を壊す機会になるんじゃないか、と思って」(赤堀)
登場人物やストーリーなど、具体的な設定はまだ明かされていないが、迎え撃つ俳優陣は舞台出演が5年ぶりとなる北村一輝を筆頭に、秋山菜津子、池田成志、前回から続投の大倉孝二ら手練れぞろい。加えて若手演技派・吉高由里子が初舞台を踏む。
主演の北村は、「赤堀さん脚本・監督の映画『その夜の侍』が非常に面白く、"この人となら現場で本気でぶつかり合える"と確信し、お引き受けしました。早くあの熱量の高い作品世界に浸りたい」と既に臨戦態勢。劇場を染め替えるような、赤堀×北村を核とした濃厚な劇世界を是非体験してほしい。

STORY

遠くから祭囃子が聞こえてくる。町は祭りの準備で慌しい。
会話が成立しない新人に苛立ちながら弁当をかきこんでいるのは土木作業員の五味ら。駅前では怪しげな男女が募金活動をしている。馴染みのスナックで身の丈にあった憂さ晴らしをしていると、なぜか新人が隣りに居合わせた面々から募金箱を盗んで逃走してしまう-!600万円入っていたと言い張られ、まさかと思いつつ必死に探す男たち。それを拒むかのようなトラブルが連続!離婚して会えなくなった娘は、今日も駅のホームに佇んでいる。妊娠8ヶ月でまだ舞台に立とうとしている女優の妻から、ハムレットを演じよと無理難題。家に帰れば、ふすまの向こうには寝たきりの父親が。なぜか彼らに同行するワケありの女性・佐久間は、共に暮らしながら断絶状態の母親との関係に疲弊している。悩みとも言い切れない、それぞれの家族や過去を背負い、それでも凡庸な日常を重ねる彼らの【大逆走】。その果てには、時に幻想の世界が壮大に広がり、一見どうでもいいような真実が、鋭く心に突き刺さる-。