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Bunkamura25周年記念 渋谷・コクーン歌舞伎 第十四弾 三人吉三

作:河竹黙阿弥 演出・美術:串田和美 かつてないコクーン歌舞伎が幕を開ける!

2014年6月6日(金)~6月28日(土) Bunkamuraシアターコクーン

会見レポート

何もかも手探りの状態から始まったコクーン歌舞伎。次世代へと受け継がれる、『三人吉三』会見レポート。

1994年に誕生した「コクーン歌舞伎」。今でこそ、現代劇の演出家や作家、俳優が歌舞伎に関わることは"事件"として扱われることはなくなったが、その原点となった人気企画だ。"江戸の歌舞伎小屋の熱を再現したい!"という思いが形となり、役者も観客も渾然一体となる感覚は、コクーン歌舞伎ならではの醍醐味だ。今年、上演されるのは『三人吉三』。同じ「吉三(きちさ)」の名前を持つ3人の数奇な運命を描いた河竹黙阿弥の傑作で、コクーン歌舞伎では、2001年と2007年の過去2回上演。3人の「吉三」は、勘三郎(2001年当時は勘九郎)、福助、橋之助によって演じられている。そして今回、3人の吉三を演じるのは勘九郎、七之助、松也という若い3人。演出はもちろん串田和美だ。

串田和美

「『三人吉三』をコクーン歌舞伎でやった2001年は、まだいろんなことが手探りだった。『これをやっていいんだろうか?』『許されるんだろうか?』と判子を押してくれる人がいるわけじゃないのに、みんなが気にしながらやっていた時。特に『三人吉三』は色んな人がやっている作品なので、同じ事をやってはいけないと思いながらも、違うこともやってはいけないと考えて……。例えば大詰めで風の音を普通は太鼓でやるのを、自然の風の音をテープで流した。試しに稽古で流したら、勘九郎さん(当時)に『情緒がなくてテープはダメだね』って言われて、頭に来て操作していた音響さんを怒鳴ってしまったこともありました。その後、きちんと音の出し方を変えてやったら勘九郎さんも『(音の)出し方で全然違うね』って言ってくれて……。吉三役の三人が怒鳴り合いになって大騒ぎになったこともあるし、今思うと勘九郎さんも緊張していて、みんな自分のなかにある何かと戦いながらピリピリしていたんだと思う。だからいいものができたときは、みんなですごく喜んだし、そういう20年だった。今回21年目になるんだけど、僕は第二期の"新しいコクーン歌舞伎の始まり"と、自分にも、みんなにも言っている。ただ新しい挑戦をするというだけでなく、コクーン歌舞伎自体の位置づけも考えて行きたいと思っています」(串田和美)

勘九郎

「『三人吉三』は僕にとっても思い入れのある作品です。2001年におとせ役で出演して、2007年の時はギターの音が使われて父が『江戸時代にギターがあったら(歌舞伎で)使うだろ』と言った。今回は下座音楽を一切使わないということになって、遂にきたな…と。これまでの(コクーン歌舞伎『三人吉三』の)3人がめちゃくちゃカッコよかったので、あの空気感は絶対に出さなきゃいけないと思っています」(勘九郎)


七之助

「コクーン歌舞伎に初めて出たのが『三人吉三』でした。そのときは何もできなくて、串田監督にずっと付きっきりで稽古してもらって、みんなに卑怯だって言われたぐらい。あの時に僕がやっていたのは歌舞伎の所作的なものだけで、それだけではないって監督が気付かせてくれて、初めて役者として演じることができた。これから稽古で崩して、壊して…を繰り返して、お客さんにカッコいいと思ってもらえる『三人吉三』にしたいです」(七之助)


松也

「これまでは客席でコクーン歌舞伎を見て来て、歌舞伎の可能性がこんなにもあるんだということに感動したし、最後の立ち回りは涙が出ました。いつか世代が変わって、この2人(勘九郎と七之助)がやるようになったら、同世代だから何とか入りたいと思っていたので、こんなにうれしいことはありません」(松也)



勘九郎、七之助、松也の3人はプライベートでも仲が良く、会見のときも互いに冗談を言い合ったりする姿が何度も見られた。その雰囲気や空気感を、良い意味で作品に活かしていきたいと3人は語る。現代劇のようなビジュアルが話題となっているポスターの写真は、渋谷のガード下で深夜に撮影された。偶然、演出家の野田秀樹らと出くわすなど、いい作品に仕上がる予感がするハプニングがいっぱいだったそう。

音楽監督に伊藤ヨタロウ、演出助手に長塚圭史、キャストには歌舞伎役者だけでなく、元・オンシアター自由劇場のメンバーやピーター・ブルック演出作品などに出演し、ヨーロッパを拠点に活動する笈田ヨシなど個性豊かな面々が参加。若い3人を中心にした、熱いエネルギーが渦巻く新しい『三人吉三』の登場はもうすぐだ。

(文:山下由美)