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盲導犬 ―澁澤龍彦「犬狼都市」より―
日程:2013/7/6(土)~7/28(日)

シアターコクーン・オンレパートリー2013 唐版 滝の白糸

作:唐十郎 演出:蜷川幸雄

唐十郎×蜷川幸雄“禁断の企み”再び蘇る!

2013年10月8日(火)~29日(火) Bunkamuraシアターコクーン

トピックス

初日を迎えました!

写真:細野晋司

大空祐飛

稽古場で蜷川さんからお言葉をいただくたび、自分の薄皮がめくれ、生まれ変わっていくようでした。生命そのもののように激しい女・お甲。彼女が自身を昇華して魅せる「奇跡の芸」で劇世界を染め上げられるよう、私のエネルギーを全てこの舞台で解放したいと思います。

窪田正孝

冒頭ではまだ何者でもなかったアリダが銀メガネやお甲さんと出会い、変化していきます。これは彼が成長し、改めてこの世界に誕生する過程を描いた作品です。大先輩の方々から刺激をいただきつつ、僕自身、自分が作品を通してどこまで変化できるか、精一杯頑張りたいと思います。

平 幹二朗

不条理、前衛作品と対峙する機会の少ない僕にとって、この舞台は大いなる挑戦の場。台詞を「てにをは」まで正確に頭と身体に叩き込み、戯曲の求めるスピードとリズムで、まるで今生まれた言葉のような舞台上に再現する。原点に戻って取り組むしかないと考えています。

蜷川幸雄氏インタビュー 
最後のゲネプロを終えて~

 演出家として長い年月仕事をしてきましたが、ゲネプロというものは大抵、何かしら不満が残るものと相場が決まっています。ところが、今終えたこの『唐版 滝の白糸』のゲネプロに、僕は自分でも驚くほど満足しているのです。

 1975年に初めてこの戯曲に出会い、演出したときから、僕は『唐版 滝の白糸』という作品にずっと恋をし続けてきました。唐十郎戯曲ならではの詩情あふれる台詞の数々、宝石のように輝く情景描写、迸る血潮の鮮烈なイメージ。上演を前提にせず筆を走らせたためか、登場人物たちの野蛮なまでの奔放さは、唐戯曲の中でも突出しているのではないでしょうか。厄介な、だからこそ心を掴んで離さない恋の闘い。そんな魅力的な恋人に、四度もまみえる機会を得ただけでも僕は演出家として非常に恵まれている。そのうえ今回は、その恋がひとつの成就を迎えたと言って良いほどの仕上がりになった。

 そこには頼もしい味方の存在がありました。

 宝塚歌劇団を退団し、初の外部舞台で初めて女性を演じる大空祐飛さんは、しなやかで野生的なお甲をダイナミックに体現してくれました。

 初々しい外見に反し、時に憑かれたように劇世界に深く沈潜し、役そのものとなって舞台を疾走する窪田正孝君は、アリダそのものの存在感を放っています。

 そして、60年近い俳優生活のなかで初体験に近いという、アングラ劇に果敢に挑戦してくれた平幹二朗さん。これまで身につけていらした演技理論が通用しない世界で、僕が次々に投げかける細かな演出を丁寧に受け、あらゆることを試した末に、怪しさと洒脱さ、そして哀感までを漂わせる銀メガネ像を創り上げて下さった。

 唐組から助太刀に駆けつけてくれた鳥山昌克さん、作品のスパイスになってくれた井手らっきょさんとつまみ枝豆さん、唐戯曲の妖しく懐かしい空気を濃密に表現してくれたマメ山田さん、プリティ太田さん、赤星満さん、ミスター・ブッタマンさん、そして僕の作品の常連である工事人夫役の俳優たち。スタッフも含めたカンパニーの全員が、僕の執拗な演出に応え、作品に新たな生命を吹き込んでくれたことに、心から感謝しています。

 全編、演劇でしかできない表現に溢れ、演劇でしか体験できない衝撃で劇場を震撼させる。こういう種類の演劇を過去の遺物にすることなく、いつの時代にも、観客に提示する意義がいかに大きいかを喧伝する責任が僕にはある。この公演は、演劇の重要な鉱脈がここにあることを示す、今後も続く仕事の大きな布石にもなると思っています。

 もちろんお客様には僕の思惑とは関係なく、純粋に、舞台から放出される作品の原初的エネルギーを感じていただければ充分です。

 この舞台を多くの方に「目撃」していただき、「演劇の共犯者」が増えることを切に願っています。

文:大堀久美子