NHK交響楽団によるオーチャード定期演奏会を拝聴しに2月4日の昼下がり、オーチャードホールに出かけた。 天気のよい土曜日ということもありBunkamura館内は沢山の人で賑わい、自然と笑みが溢れ出し今にも心が踊りだしそうな気持ちになってしまう。これも我々には到底たどり着くことのできない劇場の持つ神秘の力の仕業なのか、それとも、ここオーチャードホールの芸術監督としての職務が板について来たのか・・・ それは、どちらでもいいか。
通い慣れたオーチャードホールに入り、いつもの心地よい空間と匂いを感じながら、まずはN響のファン、そしてクラシック公演の客層や年齢層を確認しつつ客席に座る。僕が光栄にもオーチャードホールの監督に任命されて以来、大事にしていることの一つに、ホールで上演される全ての作品には、高品質の舞台への絶対的な保証と歴史への敬意がなければならないということがある。しかしもちろん、それだけでは劇場が歩みを止めてしまう。未来への伝承を忘れてはならないのだ。劇場に来る新規顧客の開拓、様々なクラシックジャンルにおいてプロを夢見る若手の出演の機会を設けることは、必須事項として付け加えなければならないと考えている。だからこそ、劇場のこの客席についた瞬間から、間違いのない作品や才能への出会いを感じ、安心感をもつことができる、そしてもちろん最後には、感動があるんだよ。
と思いつつ、舞台に一点集中を戻し演奏会の始まりを待った・・・。
ソ連時代からその名を馳せるロシアの巨匠 フェドセーエフの指揮とN響との共演は、感動を通り越して・・・ 衝撃的な結果となってしまった。
言葉を重ねても陳腐になるだろうから、真意を知りたい方は、次の機会に自ら体験していただきたい。
それが、僕のいる意味なので。
熊川哲也