ビニールの城

巨匠フリッツ・ラング監督によるSF映画の金字塔。原点にして頂点とされる作品が、いま、舞台で甦る―。

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POINT見どころ

SF映画の原点にして頂点。
ディストピア未来都市を描いた『メトロポリス』を舞台化

およそ100年前に、機械が支配する未来を描いた映画がある。アンドロイドが登場することでも知られる、フリッツ・ラング監督による『メトロポリス』だ。1927年公開、SF映画の原点にして頂点と謳われる無声映画の傑作。壮大な世界観や斬新な映像表現は、その後の多くの芸術に多大な影響を与えている。今も世界中で語り継がれる20世紀の偉大な遺産を舞台化しようというのが、串田和美だ。
現代劇から歌舞伎まで幅広く活躍する演出家・串田は、『ひょっこりひょうたん島』を、原作の枠を借りてオリジナル脚本で舞台化したり、今年のコクーン歌舞伎『四谷怪談』でも、スーツ姿のサラリーマンの群れを登場させたり、邦楽ではなくオリジナルの音楽を使うなど、新しい試みに挑戦し続けている。ジャンルや既成概念にとらわれないしなやかな発想が『メトロポリス』でも、発揮されそうだ。今回の舞台化に当たって、ベースとなるのは、映画と小説版の二つ。
『メトロポリス』は、ラングがニューヨークの摩天楼に強い印象を受けて生まれた。脚本家であった妻のテア・フォン・ハルボウと共にシナリオを書き上げ、ハルボウは同時に小説を執筆、1926年に発表している。映画は当初、7時間にも及ぶ超大作だったが、興業上の理由などからラングに無断でカットされ、2時間バージョンとして上映されてきた。その後に発見された映像などがあり、現在では2時間半のバージョンも見ることができる。小説では映画で描かれなかった主人公以外の登場人物の活躍も描かれているし、メトロポリス崩壊とその後についても、違いがある。
舞台となるのは2026年、巨大都市メトロポリス。高層ビルが立ち並び繁栄を誇っているが、ビルの上層階で優雅に暮らす支配者たちと地下深くに押し込められた労働者階級にはっきりと分かれる超階級社会になっていた。支配者の息子フレーダーと労働者階級のマリアの愛を軸にしながら、歪んだ社会の行きつく果てを壮大なスケールで描いている。機械と人間、支配者と労働者、愛と憎しみ、様々なテーマが含まれた示唆に富む作品になりそうだ。この冒険に参加するのは串田作品には何度も出演している松たか子、身体能力と演技力でますます目が離せない森山未來、独自の表現でユニークな活動をする飴屋法水、若手のホープ、佐野岳など、頼もしいメンバーばかり。AIの登場など100年前のSFがほぼ現実になりつつある今こそ、『メトロポリス』は注目に値する。

文・沢 美也子

STORYストーリー

メトロポリスの主、フレーデルセンの息子フレーダーは、労働者階級の娘マリアと出会い、恋に落ちる。彼女を追って地下へと向かい、そこでメトロポリスを動かす巨大な機械と、過酷な労働を強いられる労働者を初めて見たフレーダーは、社会の矛盾に気付く。一方マリアは密かに集会を開き、労働者たちに忍耐と希望を説いていた。「頭脳(支配者)と手(労働者)を仲介するのは心でなくてはいけない。仲介者は必ず現れる」と。それを知ったフレーデルセンは、旧知の科学者ロートヴァングにマリアを誘拐し、製作中のアンドロイドをマリアそっくりの顔にして、労働者たちの間に送り込み、彼らを混乱させろと命じる。アンドロイドは見事にその役割を果たし、労働者は暴徒と化して機械を破壊、メトロポリスも音を立てて崩れ始める。そのために労働者が住む地下の町は洪水に見舞われて…。フレーダーは、最初に出会った労働者の若者や、父が解雇した元秘書などの助けを借りて、マリアと地下の町を救うべく立ち上がる。

CASTキャスト

MUSICIANミュージシャン