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2022.03.01 UP
「コンサートホールで世界旅行!」の4回目は、ドイツを訪れます。ドイツは、“ドイツ3大B”といわれる、バッハ、ベートーヴェン、ブラームスを輩出したクラシック音楽の大国。なかでもベートーヴェンの作品は、200年の年月を越えて、ピアノ・ソナタから交響曲やオペラまで、今も多くの人々に感動を与え続けています。
今回、指揮を執るマレク・ヤノフスキは、1939年ワルシャワ生まれですが、ドイツで育ち、ドイツ音楽を最も得意としています。これまでにドレスデン・フィルやベルリン放送交響楽団などのシェフを歴任し、バイロイト音楽祭ではワーグナーの「ニーベルングの指環」四部作を指揮。ケルンWDR交響楽団とベートーヴェンの交響曲全集も残しています。
ヤノフスキは、N響とも何度も共演しています。1998年のN響オーチャード定期の第1回を指揮したのも彼でした(その時はベートーヴェンの交響曲第6番「田園」などを取り上げました)。また、2014年から4年がかりで、東京・春・音楽祭においてN響と「ニーベルングの指環」四部作を完奏。2018年には「第九」を指揮。つまり、マエストロとN響は厚い信頼感で結ばれています。
一方、N響は、ウォルフガング・サヴァリッシュ、ホルスト・シュタインらドイツ系の巨匠指揮者の薫陶を受け、今もその伝統を受け継いでいます。 そんなマエストロとN響のオール・ベートーヴェン・プログラムはドイツ音楽の神髄を聴く機会にほかなりません。
交響曲第5番「運命」は、運命との闘いのような第1楽章からそれに勝利する第4楽章まで、ベートーヴェンの「苦悩から歓喜へ」というモットーが端的に表れています。悲劇的な短調で始まり、輝かしい長調で終わる「エグモント」序曲でも、独立運動を指導するエグモントの英雄的な死と恋人クレールヒェンによる救済を讃える勝利の音楽によって「苦悩から歓喜へ」のモットーが示されます。そのほか、サプライズと躍動感に満ちた、若きベートーヴェンの野心作、交響曲第1番も楽しみです。
文・山田治生(音楽評論家)
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