N響オーチャード定期

2022-2023 SERIES

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角野隼斗

今回、ピアノ独奏を務める角野隼斗さんにメールでインタビューしました。

©@ogata_photo

ニューヨーク暮らしはいかがですか? ニューヨークではどのような音楽活動をされていますか?
ニューヨークでは毎日クラシックやジャズのコンサートを観に行ったり、ミュージシャン達とセッションをしたりして、たくさんの刺激を得ています。アメリカでのオーケストラとの共演もいくつか決まっており、楽しみです。
今回、ショパンのピアノ協奏曲第1番を演奏されますが、2021年のショパン・コンクールに参加して、ショパンの音楽に対する考え方や感じ方は変わりましたか?
ショパンを改めて深く勉強する良い機会でしたので、大きな考え方や感じ方の変化はありました。ショパンの”Simplicity is the final achievement”という言葉が好きで、これはショパンに限らず自分が音楽をやる上での哲学とも言えるほど影響を受けています。
2022年にポーランド放送響とともに11回、ショパンのピアノ協奏曲第1番を演奏されましたが、どのような経験でしたか?
本場のポーランドのオーケストラと一緒にこの曲を11回も演奏できたことは自分にとって極めて貴重な経験であったことは間違いありません。コンチェルトのソリストではあるのですが、それよりもより室内楽的な、アンサンブルをしているような気持ちになったことを覚えています。
今は、ショパンのピアノ協奏曲第1番について、どのようなところに魅力を感じ、今回のN響との共演ではどのような演奏をしたいと思っていますか?
ショパンの若い頃の作品ですのでヴィルトゥオージックな場面もあれば、とてつもなく透き通った綺麗な場面もあり、多方面の魅力を1曲の中で感じることができます。ショパンのオーケストレーションは決して重厚ではないかもしれませんが、とても繊細で壊れてしまいそうな雰囲気が逆に魅力であると感じます。その緊張感をN響の皆様と表現できれば幸せです。
N響についてはどのような印象をお持ちですか? N響の演奏で記憶に残っているものは?
僕が何か言うことも烏滸(おこ)がましいですが、確固たる伝統と美意識を持った素晴らしいオーケストラだなと感じます。今回初めて共演させていただけることが光栄です。N響は昔からテレビやラジオ、コンサート、色々な場面で耳にしていますが、学生の頃、パーヴォ・ヤルヴィとマツーエフのプロコフィエフ2番を聴きに行ったことは強く覚えています。
尾高忠明さんとは共演したことがありますか?
尾高さんとは初共演になります。尾高さんのエルガーをよく聴いていました。
今回の演奏会では、パリがテーマになっていますが、角野さんのパリでの思い出はいかがですか?
最初に住んだ外国がパリだったので、大変だった思い出も楽しかった思い出も色々とあります。僕の恩師であるジャン=マルク・ルイサダ先生もパリに住んでいたので、よくパリは訪れていました。12月にまたコンサートで訪れる機会があるので、楽しみです。
横浜みなとみらいホールとオーチャードホールにはどのような印象をお持ちですか?
みなとみらいホールは改装後に弾かせていただきましたが、音が天井の隅々まで清々しく響く感覚を得られる、とても美しいホールでした。オーチャードホールは弾くたびにいつも特別な気分にさせてくれます。
最後にメッセージをお願いいたします。
今回がN響との初めての共演になります。このステージを、たくさんのお客様と共有できることを嬉しく思います。会場でお会いできることを楽しみにしています。

インタビュー:山田治生(音楽評論家)