N響オーチャード定期

2018-2019 SERIES

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イェウン・チェ

今回、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲で独奏を務めるイェウン・チェさんがメール・インタビューに応えてくれました。

©Na-Young Lee

2011年にアンドレ・プレヴィン氏の指揮でNHK交響楽団と初共演されたときの印象を話していただけますか?
「そのときのことはとても幸せな思い出となっています。マエストロ・プレヴィンがNHK交響楽団とのショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番の演奏に私を招いてくださったのはとても名誉なことでした。そのときが私のN響デビューでした。私が韓国に住んでいたとても幼かった頃からテレビで何度もN響の演奏を見ていたので、私にとって大きな意味がありました。そしてまさに最初のリハーサルからN響のみなさんが完璧に合っていて、一つの声のように澄んだ音を奏でているのに強く感銘を受けました。私は、彼ら全員が素晴らしい室内楽奏者だと思いました」
今回演奏するメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲のどのようなところに魅力を感じますか?
「この協奏曲はメンデルスゾーンの傑作の一つであり、オーディションや、数多くのオーケストラや指揮者と共演した演奏会など、私の人生での多くの重要なときに何度も弾いてきました。しかし、今でもなお、私にとって、この作品は古くなったりしません。より多くの感情や新しい表現を演奏する度に与えてくれます。サン=テグジュペリの『星の王子さま』のような本を読むのと似ています。今もなお、毎回違う深い感動をもたらし、すべての世代の人々に語りかけます」
ドゥネーヴさんと共演したことはありますか?
「今回が初めてなのです。ドゥネーヴさんとの共演がとても楽しみです」
今回の演奏会にはどんな期待をされていますか?
「私は期待よりも興奮する気持ちを持ちたいと思います。これまでにお会いしたことのない指揮者と共演するとき、過剰な期待は、かえって、私の自由な演奏の妨げとなるように思うからです。メンデルスゾーンの協奏曲はとてもポピュラーで、何回も弾き、何回も聴いたことがありますが、まるでこの作品を初めて聴いているかのような新鮮な気持ちを常に持ちたいと努めています。私にとっては、この協奏曲をどのように演奏するのかは、音楽自体に導いてもらうのが一番良いのです。ですから、私たちの直感的な感情や反応や表現を共有するために、そして、音楽でのお互いの個性を知り合うために、私たちはリハーサルが必要なのです」
近況を教えていただけますか?
「ミュンヘンに住んで12年になります。とりわけ演奏旅行から帰ってきたときには、ここが地元だと感じます。ミュンヘンには、私の人生において本当に大切な良い友人たちがいて、その人たちがいなければ、ミュンヘンをこんなに地元だと思うことはできないでしょう。私はそんな友人たちに会えて、とても幸運です。余暇には、いろいろな種類の音楽を聴くのが好きです。読書や料理も楽しみます(食べ物が大好きなのです)。そして友人と会うのも楽しいですね。私は絵を描くのが好きで、画廊に行くのも好きです。そして、癒しとエネルギーの再チャージのために、しばしば山に登って、自然を眺めてきます」
オーチャードホールで演奏したことはありますか?
「まだないのです。オーチャードホールが美しいホールだと聞いています。オーチャードホールで演奏できることをとても楽しみにしております」
最後にメッセージをいただけますか?
「メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は日本でも聴衆のみなさんに最も愛されている作品の一つだと聞いています。私はこの曲を演奏すると、あらゆる素晴らしいエネルギーを経験します。東京の聴衆のみなさんとそれらを分かち合えることをとても楽しみにしています」

メールインタビュー・構成:山田治生