N響オーチャード定期

2018-2019 SERIES

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ステファヌ・ドゥネーヴ

ステファヌ・ドゥネーヴさんがメール・インタビューに答えてくれました。

©Genevieve Caron

2015年にNHK交響楽団と共演されましたが、そのときの印象をお話ししていただけますか?
「私は、N響のベルリン・フィルのような深い色彩、技巧の高さ、柔軟性を素晴らしいと思い、ものすごく感銘を受けました。彼らのラヴェル演奏がとても印象に残っていますが、それほど知られてないルーセルの交響曲第3番の演奏からも非常に感銘を受けたことを覚えています。
今回のN響オーチャード定期の選曲について教えていただけますか?
「協奏曲以外のプログラムは、世界がフランス音楽に与えた影響の祭典となっています。スペインが狂詩曲『スペイン』や『亡き王女のためのパヴァーヌ』に与えた影響、オーストリアが『ラ・ヴァルス』に与えた影響、東洋が『マ・メール・ロワ』の『パゴダの女王、レドロネット』に与えた影響などです。演奏会の頃は新年のお祝いの時期でもあり(私は新年を東京で迎える予定です!)、ラヴェルのワルツ(『ラ・ヴァルス』)は、もちろん、お正月気分とつながっています。
ラヴェルの3つの作品はそれぞれ傑作だと思いますが、どれが一番お好きですか?
「私はラヴェルのすごいファンなので、はっきりとお応えできますよ。もしも無人島に一作品だけを持っていくことができるとすれば、たぶん、私は『マ・メール・ロワ』組曲の終曲『妖精の園』を持っていくでしょう。『妖精の園』は、シンプルだけど本当の意味での楽園であるという、真に奇跡的な音楽だと確信していますから」
今回のN響との共演では何を期待されていますか?
「私はN響のみなさんとまた音楽が作れることをとても楽しみにしています。彼らが、私と初めて共演したときのように、好奇心旺盛で、オープンな心を持ち、協力的で、友好的で、集中していてくれればと思います。素晴らしい才能のある方々ですから、そのようになることでしょう」
今回、ヴァイオリン独奏を務めるイェウン・チェさんとは共演されたことがありますか?
「イェウン・チェさんとは初共演です。彼女の録音を聴いて、とても感銘を受けました。アンネ=ゾフィー・ムターが『彼女は、比類ない個性のある音を持ち、音楽へのとても素晴らしい本能的な感性を有しています』と言っているのに同意します」
ドゥネーヴさんは、ヨーロッパとアメリカのオーケストラのシェフを務め、文字通り、世界中で活躍されています。2019年の予定を教えていただけますか?
「今シーズンも素晴らしいシーズンを過ごしています。まず私のオーケストラであるブリュッセル・フィルとは、1月後半に、吉松隆の作品(注:「鳥はふたたび」)を演奏します。私が次期音楽監督のポストにあるセントルイス交響楽団とも素晴らしいプログラムを予定しています。もちろん、フィラデルフィアでも、春にフィラデルフィア管弦楽団(注:首席客演指揮者を務めている)とチャイコフスキーの交響曲第5番などを演奏します。そのほか、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とオネゲルの『火刑台上のジャンヌ・ダルク』を、ウィーン交響楽団と3度、ウィーン楽友協会でレスピーギの『ローマの松』を、ベルリン・ドイツ交響楽団とR.シュトラウスの『アルプス交響曲』をベルリンのフィルハーモニーで演奏するなど、近現代作品を指揮するのもすごく楽しみです」
ドゥネーヴさんはサイトウ・キネン・フェスティバル松本(現・セイジ・オザワ松本フェスティバル)での長期滞在を含め、何度も日本に来てられますが、日本や日本文化で一番印象に残っていることは何ですか?
「私は日本が大好きで、今回は、N響との演奏会の前に妻とともに日本に来て、東京で1週間の年末年始休暇を取ろうと思っています。もちろん、私は日本食が(何でも!)大好きで、とても上品で丁寧な日本人が大好きです。日本人は素晴らしい文化を持っていて、尊敬しています(私は宮崎駿の映画のファンでもあります)。それでも、私の人生で一番感激した日本の方といえば、それは小澤征爾さんです。私は幸運にも3度、サイトウ・キネン・フェスティバル松本などで小澤さんのアシスタントをさせていただき(注:最初は1998年の『カルメル派修道女の対話』)、彼を人間としても音楽家としても尊敬しています。小澤さんは金字塔のような人物であり、私は彼のおかげで多くを学びました。小澤さんはとても親切で、私の30歳の誕生日パーティまで来てくれました。17年も前の話です…。私が小澤さんをどんなに尊敬しているか、私にとって大切であり続けているか、ここに書くことで、彼にお伝えください。メルシー(ありがとう)、セイジ!!!」

インタビュー:山田治生(音楽評論家)