N響オーチャード定期

2023-2024 SERIES

127

アンドレアス・オッテンザマー

今回、初めてN響の指揮台に立つアンドレアス・オッテンザマーさんにメールインタビューしました。

©Halina Jasinska

今日のコンサートでは期せずして、ダニエルさんとの兄弟共演を聴けるようになりました。
家族と演奏するのは独特ですね。その点で、日本は私たち家族にとって重要な場所であり続けてきました。父(今は亡きエルンスト・オッテンザマー)と私たち兄弟のクラリネット・アンサンブル”ザ・クラリノッツ”の最初のツアーは、2005年の日本でした。今、約20年が経ち、兄と日本に戻ってくるのは非常に特別なことです。しかも今回は指揮者と独奏者としてなのです。
ダニエルさんをクラリネット奏者としてどう見ていますか?
私たちは同じルーツを共有しています。同じ音楽的価値観と伝統です。つまり私は兄の演奏の仕方を裏の裏まで知っています。それでも、私たちが多くを共有しているにしても、依然として彼は私とは違ったクラリネット奏者です。私たちは二人とも個々の個性を演奏に反映させています。
指揮者としてのブラームスの魅力は何ですか? クラリネット奏者としては?
ブラームスは私の心にとても近いのです。彼の音楽を演奏したり、勉強したりしていると、いつも、1音たりとも変えたり、足したり、省いたりできないことを感じます。完璧な形です。しかし、ブラームスの音楽の感情の容量はそれを上回ります。私たちの心に直接やってきます。
楽器奏者としては、ブラームスがそれぞれの楽器をどんなに魅力的に書いたかに魅了されます。彼はまさにクラリネットの最良の部分を引き出しています。指揮者としては、ブラームスは運命のようなものです。音楽的素材の豊かさが並外れています。
私は常に音の厚みのバランスを整えようとするだけでなく、ブラームスのほとんどすべての作品のインスピレーションの源となっている民謡の軽快さや機敏さを見つけ出そうとします。
クラリネット奏者として成功を収めているアンドレアスさんが指揮を始めた理由は何ですか?
おそらく一つの道がもう一つの道を導いたのです。私は何かをすることにおいて、特に音楽において、より熱烈なものを求めてきました。指揮は、最近どこかで始めたというようなものではありません。私の道が自然に私の人生全体を導いたのです。複数の楽器を学ぶことに始まり、早くから音楽学や指揮のクラスを取ったり、指揮者なしで協奏曲をリードするようになったり、遂にはワイマールで指揮法を学んだりすることまで、しました。
でもそれは私がクラリネット奏者としての活動をやめるという意味ではありません。今の私が100パーセント集中しているのが指揮なのです。未来になれば、私の進む道もわかるでしょう。
昨年春、「東京・春・音楽祭」で巨匠リッカルド・ムーティのイタリア・オペラ指揮アカデミーを受講されましたね。いかがでしたか?
マエストロ・ムーティは、今の音楽界での生きている伝説であり、分かち与えることのできるものすごい経験を何十年にもわたって積んできました。それには信じられないような価値があります。特にイタリア・オペラに関して、そのアカデミーは私にとって夢のような経験になりました。マエストロのサポートには心から感謝しております。
そしてまた、日本で桜の季節を過ごすことができたのは本当に素晴らしいことでした。
NHK交響楽団についてはいかがですか?
N響と初めて共演することにワクワクしています。もちろん、N響については最高水準のオーケストラであるという評判や素晴らしい話を聞いております。とても楽しみです。
横浜での演奏会に向けて、メッセージをお願いいたします。
私は日本の多くの場所にとても良い思い出を持っています。横浜もその一つです。それは、最高の音楽を作り上げる素晴らしい聴衆と素晴らしいホールとの完璧なコンビネーションを意味し、ステージを離れても私が大好きなファッションやもちろん食べ物を楽しむことができることを意味します。
横浜に帰ってくるのが楽しみです!

インタビュー:山田治生(音楽評論家)