K-BALLET Opto 「プティ・コレクション」

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2022.11.25 UP

製作発表会のレポートが到着!


左から渡辺レイ、山本雅也、小林美奈、日髙世菜、飯島望未、ジュリアン・マッケイ、アレッシオ・シルヴェストリン ©Hajime Watanabe

BunkamuraとK-BALLET COMPANYの新プロジェクト、K-BALLET Opto 第2弾のテーマは、「プラスチック」。SDGsが注目される今、バレエ作品を通して環境汚染を身近な問題として考えるというコンセプトの公演の製作発表が、11月24日(木)セルリアンタワー能楽堂にて行われました。

バイエルン国立バレエ団のプリンシパル、ジュリアン・マッケイを迎え、まずはK-BALLET COMPANYのダンサーたちと共に2つの新作『ペットボトル迷宮』『ビニール傘小町』のデモンストレーションが能舞台の上で上演されました。

 
『ペットボトル迷宮』©Hajime Watanabe

『ペットボトル迷宮』はエレガントなジュリアンが飯島望未、日髙世菜と共に、クラシカルで流麗な動きで3人がスリリングに交錯する瞬間が重ねられました。『ペットボトル迷宮』は小林美奈、山本雅也が打楽器を使ったリズミカルな曲に、二人の息の合ったパ・ド・ドゥが多様な形に展開。魅惑的に繰り広げられるダンスに、期待が高まります。


『ビニール傘小町』©Hajime Watanabe

「熊川芸術監督は25年をかけ、教育事業等も通じて、芸術団体が踊りだけではなく、未来の子供たちを育てて社会に還元することを模索していました。話し合っていく中で生まれたのがK-BALLET Optoです。」と本公演の企画、構成、原案を担った高野泰寿。「熊川は今特に環境問題を意識しています。芸術がどのように問題解決に貢献できるかをアプローチしたのが『プラスチック』です」。

「作品が作られるまでのストーリーも重要視しており、『ペットボトル迷宮』では表参道のリサイクルボックスから回収された1万本の使用済みペットボトルを舞台装置に使用。今まで接点を持たなかった業界ともコラボレーションしました」。

『ペットボトル迷宮』振付のアレッシオ・シルヴェストリンは、「ペットボトルを環境問題ではなく芸術作品と捉え、ペットボトルの壁を作り、ペットボトルが形を変えながら私たちの一部になっていく様子を描きたい」と語りました。音楽については、ペットボトルを逆さにした時に音が出てくるイメージがあり、バッハやリゲティのオルガン曲を使用し、舞台全体が呼吸している雰囲気にしたいとのこと。

『ビニール傘小町』では商業施設で捨てられた傘を再利用し、また現代美術家の森村泰昌の京セラ美術館の展覧会で使用されたカーテンを「ほぼ日刊イトイ新聞」が手掛ける「アート始末」とコラボレーションして再利用します。振付の渡辺レイは、「三島由紀夫の世界を、ダンスで言葉以上のものとして表現したいと模索しました」。「能や舞踏を観に行き、特に土方巽の『疱瘡譚』に強い印象を受けました」。かつては美しかった小野小町が老婆となった姿を、消費され捨てられるビニール傘と重ね合わせ、老いた美しさを表現できる作品にしたいと意気込みを語りました。


©Hajime Watanabe

自然豊かな米国モンタナ州に生まれ育ったジュリアン・マッケイ。「故郷に帰った時には特に自然の偉大さを感じ、大切にしたいと思います。ダンスの世界ではサスティナビリティを考える機会が少ないので、メッセージを伝えられる貴重な機会です」。今回のゲスト出演については、「熊川哲也さんは子ども時代からのヒーローで、ビデオも観てきましたし、彼の成し遂げたことを尊敬しています。先ほど舞台で共演した二人を始め、このカンパニーの才能ある皆様と共演できることを楽しみにしています。」

「僕たちが踊ることによって、普段皆さんが考えていない問題に光を照らすことができれば幸せです。」というジュリアンの言葉に象徴されるように、美しく大胆なバレエを通して環境問題を身近に感じて考えることができる、面白く刺激的なバレエ公演となることでしょう。


©Hajime Watanabe

舞踊評論家 森 菜穂美