2022.09.29 UP
『ペットボトル迷宮』『ビニール傘小町』作品紹介
プラスチックを供養する!
『ペットボトル迷宮』と『ビニール傘小町』。ドラマチック・バレエ、2つの新作がこの冬誕生!
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『ペットボトル迷宮』
振付・演出:アレッシオ・シルヴェストリン 企画・構成・台本:高野泰寿
出演:ジュリアン・マッケイ、飯島望未、日髙世菜、堀内將平、成田紗弥 他 K-BALLET COMPANY
美の化身にして、さまよう魂の救済者たらんとする青年ジュリアン。
ペットボトル迷宮の悪夢を鎮魂する……。
天地が赤く染まった海辺。打ち寄せる波……。いくつものビニールの球体が打ち上げられている。球体にはそれぞれ男女が生存している。彼らは互いに近づくことができず、弾き合ってしまう。褐色の布を巻いた若き僧侶ジュリアンが浜辺に現れ、その人々の姿を目にし、鎮魂の舞を天に奉納する。天地に轟音が響き海の彼方から小舟が姿をあらわすや、球体の膜が剥がれ人々は新たな動きを得る。若き僧侶と解放された人々は小舟にいた女の導きに従い、冥界と思しきところにたどり着く。が、百鬼の光を放つ巨大なペットボトルの精の群れに襲われる。その悪夢から覚醒を願う若き僧侶ジュリアンの舞……。
『ビニール傘小町』
振付・演出:渡辺レイ 企画・構成・台本:高野泰寿
原案:三島由紀夫「近代能楽集『卒塔婆小町』」/太田省吾「小町風伝」
出演:白石あゆ美、石橋奨也、山本雅也、小林美奈、杉野慧 他 K-BALLET COMPANY
ダンスは「ミシマ」を超えられるか?
物語は、壊れかけのベンチやプラスチックの廃品などが捨てられていた都会の小さな公園ではじまる。襤褸(ぼろ)をまとった老婆が乳母車を押しながら現れる。ビニール傘を取り出し、なにやら怒り声なのか呪文なのかつぶやきながら一本ずつ傘を開き、置いていく。「だれ? あたしの夢を覗くのは……あんただね。あたしに付きまとうのは深草(ふかくさ)の少尉さん。そうか、今宵は九十九夜ってわけね」。老婆は在りし日の愛の思い出を縁に生き、その小さな胸に訪れる恥じらいと生への確執を舞う。卒塔婆を尻にした小町のように老婆はビニール傘を尻に敷き、あるいは手に持ち空に昇っていく……。
この作品は六本木の街でビニール傘を手にしたホームレスの老婆を見たことから生まれた。老婆はたぶん百歳近いだろう。老婆はゆっくりとまるで能舞台の橋掛かりを歩くように檜町公園に歩いていった……。この公園の老婆が、三島由紀夫の「近代能楽集『卒塔婆小町』」を連想させた。三島の「小町」は、能舞台を現代の言葉で解説するに止まり、何よりも小町を過去の遺物として葬ってしまったように思える。「小町」は現代を生きている。その老残の姿は「人生百年時代」を生きる私たちそのものだ。しかも私たちの生はビニール傘に象徴される安手で消耗品的な生を強いられる哀しみそのものかもしれない。現代を生きる「小町」を私たちは表現したい。そして、踊りたい。振付・演出の渡辺レイは、この老婆に、二十歳でも百歳でも変わらずに在る女の業、性を見出した。老婆の若かった頃の美しい思い出、思いを遂げられなかったことの呪縛、何も生み出せずただ消費するだけの人生、そして老いさらばえても生き続けなければならない哀しみ、それらを抉り出し見せつける。果たして救済(カタルシス)はあるのか。新たなドラマチック・バレエの誕生だ。
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