2022.11.25 UP
制作ノートVol.2 閑話休題:リサイクルを阻む意外なものとは?
ペットボトルの回収の翌日、我々は東京足立区入谷にある白井エコセンター工場へと足を運んだ。今日は回収したペットボトルを20名弱のチームをして手作業で洗浄する。
というのも、通常は回収したペットボトルは、まず細かく粉砕してそして巨大な機械で一度に洗浄するのだが、今回は舞台でそのままの形を使うこともあり、手作業で1本づつ丁寧に洗浄していく。これがまあなんとも骨の折れる作業であったのだが、小学校の社会科見学ぶりの興奮と共に、日本のリサイクル事情に関して大変興味深い話を聞いた。
ご存知だろうか、2018年のUNEP(国連環境改革)の調査によると、日本人1人当たりの使い捨てプラスチックの廃棄量は、アメリカに次いで世界2位。また、2020年には、家庭からでたプラスチックごみは、ここ10年で最多を記録したとのこと。これはコロナ禍でテイクアウト、デリバリー需要が大幅に増加したことも原因の一つとされている。昨今日本では、SDGsの名の下、ゴミの分別意識は非常に高まっており、また集められたプラスチックを繊維へと生まれ変わらせる技術など、その分野の技術発展は目を見張るものがある。しかし、日本のリサイクル率はOECD加盟の35カ国の中でも下から5番目。分別をしてもリサイクルには繋がらない?これはどういう意味なのだろうか?
そこには、物流コストという隠された課題があった。ゴミがリサイクルされるまでには、通常、事業者が街から回収して、それを中間工場で処理して、もう一度どこかに運ばれて別のものに加工されるか処分される。日本においては、一番初めの段階において、小規模の回収業者が乱立しており、例えば一つの通りのゴミ回収を5社がおこなっていることもザラとのこと。この回収効率が上がらない限り、いくら素材の加工分野で技術革新が起きても、日本のリサイクル率は進まないのだ。リサイクルの鍵は物流効率にあるとはなんとも驚きの話である。(ちなみに白井グループはこの物流効率のDX を業界でもいち早く着手している!)
話がバレエの本題から大きく逸れてしまったが、
我々は何かを理解しようとするとき、わかりやすいストーリー、想像しやすいものに目がいってしまう。(ペットボトルからフリースを作る!というふうに)
しかし、得てして大切なことは、わかりやすさのベールをくぐったその先にある。その先へ一歩踏み出す勇気と好奇心は、きっと芸術を観るという行為にもまた然りなのかもしれない。
(高野)