見どころPOINT
西本智実が誘うアジアから宇宙への音旅行
国内はもとより、指揮者・西本智実は海外においても多彩な活動を行っている。昨年だけを見ても5月にモナコ公国でのモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団公演、11月はイスラエルでのエルサレム交響楽団公演、ヴァチカンでの国際音楽祭、12月にはロシア国立交響楽団、中国の北京、上海でもそれぞれの現地オーケストラとの共演、と各地を精力的に駆け巡っている。初めての登場となった中国ではまさに“熱烈歓迎”で迎え入れられ大きな成功を収めた。様々な文化との出会いを糧に躍進を続ける西本が今回新たな試みにチャレンジする。コンサートの前半ではタイ、フィリピンの優れた作曲家に「風を詠む音の旅」をテーマにした新作を依頼、世界初演を行う。タイのサクシー・ウォンタラドンはシラパコーン大学音楽学部ジャズ科助教授で、ジャズピアニストとしても活動する新進気鋭の作曲家。オーケストラ音楽の作曲も手がける彼の、民族楽器であるチャケーをフィーチャーした管弦楽作品を披露する。フィリピンのジョセフィーノ・チノ・トレドは国際的な賞を受賞し、アジア現代音楽シーンでも名を知られた存在。彼には同国の伝統的な“歌”のメロディーを用いたアレンジ作品を依頼、歌手も加わった形で紹介される。新しいアジアの響きに期待したい。
コンサート後半は数あるオーケストラ作品の中でも高い人気を誇るグスタフ・ホルストの傑作、組曲「惑星」が演奏される。平原綾香の大ヒット曲、「ジュピター」などでもお馴染みの作品で火星(戦争をもたらす者)・金星(平和をもたらす者)・水星(翼のある使者)・木星(快楽をもたらす者)・土星(老いをもたらす者)・天王星(魔術師)・海王星(神秘主義者)で構成される。「火星」での圧倒的な迫力から「海王星」での繊細で神秘的な表現まで、管弦楽団の持つ潜在能力を縦横に駆使した、まさにオーケストラの魅力を存分に堪能できる人気曲。オーケストラからカラフルで輝かしい響きを引き出すことにも高い手腕を発揮する西本がどのような宇宙を描いてくれるか興味は尽きない。前進を続ける西本智実の活動に注目したい。