ラ・バヤデール

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2016.11.18 UP

「ラ・バヤデール」ゲネプロレポート

2014年に初演された熊川版「ラ・バヤデール」。
待望の再演となる今回、ゲネプロの様子を見所とともにお届けいたします!


《見所① 演劇性とクラシックバレエの真髄をどちらも存分に楽しめる!》

バレエ作品ならではのピュアな愛はもちろんのこと、古典バレエでは珍しい陰謀・欲望・嘘・裏切りなど人間の負の感情をも含むのがこの「ラ・バヤデール」という作品。
言葉のないバレエなのにもかかわらず、ダンサーの身体からは台詞よりも豊かに複雑な心情が表現されることにぜひご注目を!


初日を翌日に控える17日に行われたゲネプロ(本番直前に舞台で本番さながらに行われる通しリハーサル)、この日主演を演じたのは初日を飾る矢内千夏&山本雅也組。
矢内は若干二十歳であるにもかかわらず、年齢からは想像できない落ち着きを持つダンサー。
愛する人を奪われるニキヤという難しい役にもかかわらず、自然体でこの役に調和していることにまず目を奪われる。
彼女のダンスの魅力であるしなやかなライン、バネのある跳躍の美しさは、そのままソロルへの純粋な想いを表現するのだ。
特に1幕冒頭、寺院で神に仕える巫女として神聖な踊りを繰り広げる透明な存在感は白眉。

ソロルを演じる山本雅也も矢内と同じく今回初めてのソロル役に挑む。
ゲネプロでは舞台姿が大人びたことに驚いた。素顔はまだあどけなさが残る22歳の山本だが、若き勇敢な戦士としてみなを率いるソロルという人物を細々とした動作からも感じられる役作り。
山本は2013年、熊川が審査員を務めたローザンヌ国際バレエコンクールで受賞をした経歴をもつ。
そしてこのコンクールで踊ったのがソロルのヴァリエーションであった。当時もアカデミックで美しい技術が際立っていたが、Kバレエ カンパニーでプロとして積んだ経験を経たいま再びのヴァリエーションには何倍も磨きがかかっている。
美しいステップの数々を“ソロルとして”魅せているのだ。

ガムザッティの中村春奈はお手本のような美しいフェッテに代表される正確無比な技術で、プライドが高く、独占欲の強いガムザッティを見事に表現。
1幕後半、ガムザッティがニキヤに「ソロルと別れて」と詰め寄るシーンは、数ある古典バレエの作品でももっとも迫力のある演技シーン。矢内と中村のリズムの良い演技と高まる音楽が織り成す緊張感をぜひ味わっていただきたい。

さらに、舞台が古代インドということでオリエンタルな側面が目を引く「ラ・バヤデール」だが、じつは古典バレエの美しさを余すところなく堪能できる作品だということを強調したい。
たとえば24人のコール・ド・バレエのダンサーが全く同じ動きを繰り広げる2幕の影の王国。
白いチュチュに身を包んだダンサーの一糸乱れぬ舞は、別世界に誘われるような感覚を覚えるバレエ作品のなかでも一際美しいシーンなのだ。この世のものとは思えない空間を心ゆくまで楽しんでほしい。


《見所② 壮大な美術で国を超え時空を超えた旅気分!》

熊川版「ラ・バヤデール」の魅力の一つは圧倒的に豪華な美術。
なかでも幕開け1幕の寺院の装置は、舞台装置のスケールを超えた存在感を誇る。
古代インドへ瞬く間にタイムスリップ気分を味わっていただけることは間違いない。

マグダヴェヤ(苦行僧)、ジャンペの踊り、太鼓の踊りなど古代インドという
設定ならではの役所がみせるダンスも大きな見所。
ゲネプロでは、兼城将演じるマグダヴェヤの悲痛な声が聞こえてくるような跳躍と
役が乗り移ったかのような演技力に目を奪われた。
初演時にも連日喝采をさらっていた杉野慧率いる太鼓の踊りも、さらにパワーアップして登場。
鳴り響く太鼓のリズムとエネルギーを余すことなく投入した踊り。血が沸き立つような興奮をぜひ味わっていただきたい!

 

《見所③ 独創性が光るラストシーンにご注目!》

「ラ・バヤデール」のラストシーンといえば、影の王国で幕を閉じるパターンか、ガムザッティとソロルの結婚式で
寺院が崩壊する という2つのパターンがこれまで一般的であった。
2年前の熊川版初演時、注目を集めたのは熊川がどのような終幕を用意するのか…。
そして観客の目の前に現れたのはこれまで見たことのないインパクトを残すラストシーンだったのだ。
ポイントとなっているのはロイヤル・バレエ団在籍時代の熊川哲也が若干17歳でイギリスの観客を圧倒したあのブロンズ・アイドル…。
美しく、深いメッセージ性が込められた至極の終幕は、ぜひご自身の目でお確かめを…!

Kバレエ カンパニーの「ラ・バヤデール」は20日(日)まで開催。
舞台芸術の真骨頂を味わえる本作を、ぜひ劇場で!