シアターコクーン芸術監督の蜷川幸雄が、2005年第1弾として演出する本作。年明け早々に始まり、10日ほどたった稽古場にお邪魔してきました!
 稽古場に組み立てられたのは、なんと20段以上もある大階段。その上に長短の鉄製の階段がそなえつけられている。俳優にとっては危険も伴う大変なセットだ。稽古開始前、仮の衣裳をつけた役者が続々と集まり始める。将門役の堤真一は、ウォーミングアップをしながら冗談を言って場をなごませている。桔梗の前を演じる木村佳乃は、長い着物さばきを確かめるように階段を昇り降りしながら、セリフを暗唱していた。稽古を始めるにあたって、蜷川が俳優たちを集めた。
「演技のアイディアはもちろん、休憩の取り方や、(台本を)先へどんどん進めるのか、それとも同じところをやるのか?など自由に本当のことを言ってください」と提案。イギリスで演出したときには、稽古の度に主演俳優が新しいアイディアを持って来て、何度となく同じシーンを稽古したというエピソードを披露。どんなアイディアも歓迎するという、蜷川の演出姿勢が伝えられた。
 そして、いよいよ稽古開始。狂気にとりつかれ、自分が誰かわからなくなってしまった将門(堤真一)を前に、将門の恋人である桔梗の前(木村佳乃)が語るシーンだ。ここでの堤の軽妙な演技に蜷川をはじめ、出演者、スタッフからも笑いがこぼれる。「シリアスを消すような演技をして欲しい」という蜷川のリクエストに応え、観客の意表をつくような将門が誕生しそうな予感がする。ゆき女を演じる中嶋朋子は稽古前に舞台を遠くから眺め、自分が観客の目にはどううつるのかをシミュレーションしていた。
 芝居の稽古が進むと同時に、連日殺陣シーンの稽古も行なわれている。この日はまず蜷川が俳優の位置取りを決め、それに沿うように殺陣がつけられていた。2度ほど手を確認したら、どんどん殺陣をスピードアップさせていく俳優たち。決めのシーンでは、見ている俳優たちから「カッコいい!」という溜息がもれた。蜷川は休憩中に、「久しぶりに、力技の戯曲だな! これでまた若返れるかな?」と、どこかうれしそうに俳優たちに語っていた。稽古場での手応えをかなり感じてのことに違いない。開幕がますます楽しみである。
text by 山下由美(フリーライター)
協力:WOWOW

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