感動が生まれる場所~劇場紹介 その⑩
IMM THEATER
Bunkamuraの主催企画を開催する劇場やホールをご紹介するレポート。「一度は生で音楽や演劇を鑑賞してみたい」と思っている方が気軽に足を運ぶきっかけになるよう、またすでに何度も足を運んでいる方も「このホールはこうなっていたのか!」と新たな発見を得られるよう、様々な角度から劇場・ホールの特徴に迫ります。 第10回は、東京ドームシティ内にある多目的ホール「IMM THEATER」です。演劇、ミュージカル、お笑いライブなど幅広い演目を連日上演しているエンターテインメント空間をご案内します。
舞台から湧き出る興奮や感動を
3色のロープでデザイン
JR水道橋駅または東京メトロ後楽園駅から歩いてすぐというアクセスに便利な立地の東京ドームシティ。ラクーアなど多彩なレジャー施設だけでなく、東京ドームやKanadevia Hallなどのエンターテインメント上演施設も備える一方、演劇のような数百人の観客を集める公演向けの中規模劇場に対する高まるニーズに、既存の施設だけでは応えきれていない側面がありました。そこで、コンパクトでありながら専門劇場並みの仕様を装備した施設を加えることで、東京ドームシティが提供するエンターテインメントのバリエーションを広げようという思いから、演劇・ミュージカル・お笑いライブなどを上演する多目的ホール「IMM THEATER」が2024年1月に誕生しました。ちなみに劇場名のIMMは、GM(ゼネラルマネージャー)ならぬDM(Don't Manager。マネージャーではないけど、マネージャーのような動きをして劇場を盛り上げる人)を務める明石家さんまさんが、自身の座右の銘でもある「(I)生きてるだけで(M)まる(M)もうけ」にちなんで命名したものです。
劇場を訪れてまず目を引かれるのは、3系統色のカラフルなロープを建物全体に張り巡らせた、シンプルかつ斬新な外観デザイン。これは、劇場が目指す観客の「感動」「声援」「喜び・笑い」を表現するため、ステージ上がスポットライトに包まれ活気と輝きに満ちた瞬間をロープワークでデザインしたもの。この色使いのロープワークはホワイエにも引き込まれていて、大通りに面した入口から館内へ歩みを進めるにつれて、統一感のある意匠に導かれるようにワクワクした気分が高まっていきます。また正面入口には、IMMを「愛」「笑」「夢」の漢字でビジュアル化したシンボルロゴ「愛笑夢笑夢(あいえむえむ)」が飾られています。奈良・薬師寺の安田暎胤長老が手がけた書に、ジミー大西さんのアートを融合した力作なのでお見逃しなく。

IMM THEATERの建物全体に張り巡らせたカラフルなロープは、公式HPの表現では「3色」ですが、厳密には自然なグラデーションに見えるよう7色の配色となっています。ロゴを揮毫した安田暎胤長老によると「アルファベットは初めての挑戦で難しくもありました」とのことです。
演者との親密な距離感や
圧倒的な没入感を味わえるコンパクト空間
IMM THEATERのホール空間は演劇での利用を念頭において設計されていて、舞台に立つ演者と観客との間に親密な距離感が生まれるようコンパクトな空間になっています。全705席の客席は最前のA列からC列までフラットで、D列からH列まで緩やかな段差が続き、さらに通路を挟んだI列からは傾斜のついたひな壇という配置。どの席からでも舞台が見やすく、演者を見上げながら息づかいまで間近に感じられる前方席、ステージ上のセット全体を見渡せる後方席、というふうにそれぞれのエリアごとに異なる鑑賞体験が得られます。
座席の配色は建物外観とホワイエのロープと揃えられていて、カラフルでワクワクした統一的な世界観が劇場全体を包み込みます。色づかいと言えば、壁やステージの色が全面モノクロなのも重要なポイント。さまざまな色・模様のセットに雰囲気が馴染むだけでなく、客席の明かりを落とすと壁の存在が気にならなくなり、観客にとっても演者にとっても舞台への没入感を高める効果を果たしています。

座席の椅子は4つの配色を用い、客席全体が劇場DM・明石家さんまさんの笑顔に見えるようデザインしています。客席中央両端には車椅子スペースを2席用意。客席後方のスイートルーム(プレミアムシート4席)は、主に関係者用の席として利用されています。
中規模サイズの劇場で鑑賞する演劇の醍醐味と言えば、俳優の感情をダイレクトに伝える生声ですよね。IMM THEATERではいろんな劇場の音響データを参考にし、音の響きを増幅させる部分と望ましくない音の反響を抑える部分を壁面に設けることによって、俳優の生声が客席の隅々までクリアに届くよう細かな音響設計を行っています。ほかにも、背景幕や大道具を吊るす美術バトンを全部で19本設置したり、本物の水を使うことができる演出装置や人を吊るすフライングなど、演劇におけるあらゆる演出に対応できるような最新の舞台機構を備えているのです。

ステージ上空のバトンは、照明用のほかに背景幕や大道具を吊るす美術バトンも19本備え、さまざまな演出に対応可能。ホールは壁面の形状や材質に変化をつけることで、ステージ上から客席まで生声がクリアに届くよう設計。客席後方の音響・映像調整室は客席との隔たりになる窓がないため、客席での音の聞こえ方に合った音響調整がしやすくなっています。
長時間の観劇でも疲れにくい
快適な座席
さらに特筆すべきなのが、長時間の観劇でも疲れを感じない座席の座り心地です。人の体重を受け止める座の樹脂基材には、渦巻き状のスリットを設けたスパイラルサスペンションを採用し、座骨結節点を中心に体圧をバランスよく分散させることが可能。基材の上に載るクッション材は形状安定性と耐久性に優れたモールドウレタンで、着席時のソフトな感触と身体をシートに沈めた時の安定感を両立。そのため姿勢が崩れにくく、腰への負担が軽減されます。さらに背もたれは一般的なホールの座席よりも約10cm高く、また身体をゆるやかに包み込む形状で、着席するとしっかりと身体をホールドしながらも窮屈感のない安定した座り心地が得られるのです。

なお、客席での飲食は原則禁止。水分補給に限り、水筒やペットボトルなど完全に蓋が閉まる容器であれば認められています(ホワイエに飲料の自動販売機あり)。ホワイエには飲食や休憩用の椅子がないので、観劇前のお食事は東京ドームシティ内の飲食店で済ませることをおすすめします。
エンターテインメント鑑賞の
裾野を広げるポテンシャル
来たる2026年11月6日から、日本と海外のクリエイターの共同作業のもと、優れた海外戯曲を今日的な視点で舞台化するDISCOVER WORLD THEATREシリーズの第17弾として『グレンギャリー・グレンロス』をIMM THEATERで上演します。支配人を務める五味渕さんはBunkamura Production作品の上演について、「開業してまだ2年半という歴史の浅い当館にとって、Bunkamuraさんという歴史あるカンパニーにご利用いただけるのはとても光栄です。舞台や設備の使い勝手についてご意見を頂けると嬉しいですし、IMM THEATERという劇場空間をどのような使い方で料理していただけるのかも楽しみです」と語り、劇場とBunkamuraとの化学反応に期待を寄せています。
さらにIMM THEATERならではの観劇体験について尋ねたところ、次のようなメッセージをいただきました。
「IMM THEATERの特長は、いい意味で格式の高さを感じさせないところにあります。建物が大通りに面していてふらっと立ち寄りやすく、また外観も館内の雰囲気もカジュアルなので、演劇だからといって構えることなく気軽に鑑賞しやすい劇場です。今後もこうした特長を生かし、エンターテインメント鑑賞の裾野を広げられたらいいなと思います」
アクセスが便利で気軽に足を運びやすく、演劇からミュージカルまで多彩な演目を上演しているIMM THEATERで、日常の延長みたいな感覚でエンターテインメント鑑賞を楽しんでみてはいかがでしょうか。
取材・文:上村真徹(ダン)

〈公演情報〉
Bunkamura Production 2026
DISCOVER WORLD THEATRE vol.17
『グレンギャリー・グレンロス』
2026/11/6(金)~30(月)
会場:IMM THEATER
