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今月のゲスト:秋元信宏さん@ティアラ展


ID_021: 秋元信宏さん(「CA4LA」/test, クリエイティブディレクター)
日 時: 2007年1月23日(火)
参加者: 宮澤政男(Bunkamuraザ・ミュージアム学芸員)
ギャザリングスタッフ(中根大輔、高山典子、海老沢典世)

PROFILE

秋元信宏(あきもと のぶひろ)
CA4LA/test, クリエイティブディレクター
音楽活動をする傍ら、帽子専門業を営む WEAVE TOSHI にショップスタッフとしてアルバイト入社。その後オープンした『CA4LA原宿本店』のショップスタッフを経て、コーディネーターとして本社勤務になり、数々のコラボレーションを行う。2003年5月、ディレクターとして実験的店舗『test,』を立ち上げ、帽子の可能性を広げた後、CA4LA/test, クリエイティブディレクター就任。2006年2月『CA4LA LONDON』をオープンさせ、現在に至る。
http://www.ca4la.com/


『本物が放つ輝き』


高山:今回は、「ティアラ展」にあわせてコラボレーションアイテムをつくっていただいた帽子専門店として人気のブランド「CA4LA(カシラ)」のクリエイティブディレクター・秋元さんにお越しいただきました。展覧会はいかがでしたでしょうか。

秋元:ティアラは“頭につける”ものですから、そういう意味では僕たちが作っている帽子と同じなので、すごく近いものを感じていたんです。ただ作品としては宝石をふんだんに使っていますし、実際にこれだけの量を目の前にすると、帽子の世界とは違う非日常性を強く感じて、憧れのアイテムという印象をあらためて受けましたね。

高山: 実は前回の「スーパーエッシャー展」でもコラボレーションで帽子をつくっていただいて、大変好評だったんですが、今回もすごく楽しい作品ですね。これは前から見ると実際にティアラをつけているように見えるんですね。

秋元:そうです。ティアラはそれをつける人も場所も選ぶ特別な存在、でも帽子と組み合わせることによって、もう少し身近な感覚でティアラの美しさを伝えられるんじゃないかと考えたんですね。ティアラはつけられないけれど、帽子だったらかぶれるという状況はあるわけで、ティアラをつけるように帽子をかぶってもらえたら面白いかなと。それにこのデザインなら男性でもOKです。だから男女兼用。自然にティアラをつけているような雰囲気になればいいなと。
コラボレーションは音楽、映画などいろんな分野の方とやらせていただいていますが、最近はアートの分野に非常に興味があったんです。それでどうやったらこの分野に入り込めるのかと考えていたところ、偶然高山さんと知り合えて、前回の「スーパーエッシャー展」で実現した。その流れで今回のお話をいただいたときは、前からやりたいと思うテーマだったこともあって本当にいいタイミングだったと思います。

高山: Bunkamura以外にもアンディ・ウォーホール財団とか、いろんな組織・団体と積極的にコラボレーションされていますね。

秋元: コラボレーションはモノの作り方も考え方も全然違う方とお仕事させていただくわけで、実際は大変な部分が多いんです。みなさんそれぞれにこだわりがありますからね。でも、個人的には意志の強い相手、パワーのある相手にすごく惹かれるんですよ。有名かどうかは全然関係ない。御社とのコラボレーションもそうで、これだけの規模やクオリティでやっていらっしゃる方と一緒にモノ作りに取り組めるのは楽しいですね。

宮澤: 現実的には、販売することも考えると、宝石をたくさんつけたり、あんまり高く値段を設定したりするのは難しいんじゃないですか?

秋元: もちろん、そうですね。今回の帽子だってダイヤモンドをつければそれなりになると思いますけど、僕たちは基本的にカジュアルなテイストの中でどれだけできるかということを常に意識していますので。今回のコラボ作品ではそういう方向性がいい形で実現できたかなと。ただ宝石は使わなかったけれど、スワロフスキーを使いました。やっぱりテーマがティアラですから光るということにはこだわりたかったんです。
実際、会場に展示されていたティアラはどれもかなり光っていましたよね。あの輝きには圧倒されました。きっと性別に関係なく受け入れられると思います。本物が持つチカラなんでしょうね。どの作品を見ても思わず引き込まれるような質感が出ていてすごいと思いました。

宮澤: 実はティアラって、きちんと展示せずに普通に置いてあるだけだとそんなに光らないんですよ。今回展示されている作品が綺麗に輝いているのは、ひとつひとつちゃんとライティングを考えているからなんですね。そこまでやって本当にティアラの美しさが引き出せる。後、ダイヤモンドは光を強く当てないと黄色く見えてしまって、それはそれで綺麗だっていう人もいるんだけど、やっぱり白く光ってないと安っぽく見えてしまう。とは言え、他の金属には熱に弱いものもあるし、そのあたりがなかなか難しかったですね。

中根: どれも歩きながら見ると流れるように光るのがとても素敵でした。ただ、アール・ヌーヴォーの時代のトンボをモチーフにした《ドラゴンフライ・ティアラ》とか、《シダの葉のティアラ》 とか、中には輝きよりも造形そのものが強烈なものもありましたね。ああいうのは初めて見ました。

秋元: トンボのティアラ、確かに強烈でしたね(笑)。他にも珊瑚を使った《オンディーヌのティアラ》やカメオを使った《ベルリン・アイアン・パリュール》とか、こんなティアラがあるんだ、って驚きました。でも当時はそれが流行だったんでしょうし、そういったデザインがちゃんと受け入れらていたんでしょうね。今回の展示ではそういう風に時代の流れに沿って作品が並べられていて、ティアラと時代が連動していたところがすごく面白かったです。最後にあった、日本の皇室の方々がティアラをつけられた写真を見られたのも貴重な体験でした。僕は歴史を感じられるものが好きなんですね。CA4LAのショップの内装もアンティークのものをメインに使っているぐらいで。だから非常に興味深く拝見しました。

宮澤: もうひとつ展示をしていて気がついたことなんだけれど、ティアラは単純に平らに飾るのと、人が頭に載せた状態のように少し上向きに角度をつけて飾るのとではこれも全然違うんですよ。角度をつけたティアラを見ると、どういう人がかぶっていたんだろう、って想像させられるんです。

秋元: 帽子でも、この帽子はどんな服装に合わせてかぶってくれるのかな、何て考えることがあります。ティアラもそうで、ティアラそのものを見て楽しむだけじゃなくて、頭から下の様子が想像できるところが楽しいですよね。一体どんな人だったんだろうとか、どんなドレスを着ていたんだろうとか。非日常的なアイテムだからこそ、そういう想像が広がるのかもしれませんね。

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