鋭い感性とリアルを追求した演出で、現代の若者の生態と人間の本質を描き、賛否渦巻く衝撃作が代名詞ともいえる三浦大輔。Bunkamuraシアターコクーンには、2015年にブラジルの作家ネルソン・ロドリゲスの代表作『禁断の裸体』の演出で初登場。18年には舞台では実に4年ぶりとなる書き下ろし作品『そして僕は途方に暮れる』(23年には映画化)で、妥協をゆるさないリアリズムの追求とエロスや暴力シーンのない新境地を切り開き高い評価を得ました。21年の新作『物語なき、この世界。』では、従来の劇的な展開を一切排除し、都合よく物語を昇華させない作劇で多くの観客の心を揺さぶり、新たな手腕を発揮しました。ダメ男を描きながら、更生するでもなく、断罪するわけでもなく、その姿を残酷なまでにリアルに描いていく三浦作品。本能的な欲求に対してとんでもない行動をとる、みっともなく情けない姿こそが滑稽で人間らしいと、観劇後に胸に残ります。
過去3回のシアターコクーンでの演出経験、映画監督としてのキャリアも積み上げた三浦による3年ぶり待望の新作は、『ハザカイキ』と題し、“時代の価値観の変容に踊らされる人々”を描きます。芸能界を舞台に、マスコミとタレントという特殊な関係の中、現代に振り回されながら葛藤し続ける人間たちの揺らぎを、三浦独自の視点で浮き彫りにする会話劇です。リアルで繊細な人物造形と人間関係、湿度と温度を感じさせる会話など三浦の真髄はそのままに、よりシンプルに力強くエンターテインメントに昇華させていく、その手腕に注目が集まります。
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主演は三浦大輔と初タッグを組む丸山隆平
勝地涼、恒松祐里、風間杜夫と豪華キャストが集結!
主演を務めるのは、アーティストとしてはもちろん、俳優としてもドラマ・映画・舞台で活躍する丸山隆平。2022年にはミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』で性別を超えたドラッグクイーン、『パラダイス』では詐欺グループのリーダーと全く違ったキャラクターを演じ舞台俳優としての新たな一面を披露しました。丸山が初タッグとなる三浦の劇世界をどのように生きるのか、期待が高まります。
共演は、ドラマ・映画・舞台で八面六臂の活躍を見せる実力派・勝地涼、近年話題作への出演が相次ぎ今最も注目を集める若手俳優・恒松祐里、ミュージカルからアングラまで幅広い作品に出演する演劇界の重鎮・風間杜夫。
さらに、ミュージカル『ヘドウィグ~』で丸山と息の合った演技で作品に厚みをもたらしたさとうほなみ、ピン芸人として活動する九条ジョー、三浦作品には欠かせない米村亮太朗、AKB48の2代目総監督を務め21年の卒業後は俳優として活動する横山由依、元宝塚歌劇団トップスターで退団後も多彩な存在感を放つ大空ゆうひと様々なジャンルで活躍する豪華俳優陣が、三浦が創り出す一筋縄ではいかない人間関係の新たな有様を体現します。
三浦大輔 コメント
この作品では、芸能界、マスコミという特殊な世界を舞台に、時代に振り回されながら葛藤し続ける人間たちを描きます。昨今、人は自分が犯した罪に対して、本来は謝る対象ではない世の中に向けてその意を伝えなければいけません。得体の知れない“世間”の顔色を常にうかがいながら生きる時代――このテーマ自体は6年以上前から考え続けてきましたが、いろいろな時期を経て、独自の視点も見つかり、やっと実現化するタイミングがやってきました。ただ構想を思いついた時よりも、ここまで時代にフィットしてしまう展開は、正直、予想外でしたが、これは生である演劇にとって「強み」と捉えています。
タイトルの『ハザカイキ(端境期)』は、物事の入れ替わりの時期を表す言葉です。人間関係において、早急なアップデートが求められる過渡期だからこその新鮮なアングル、新感覚の人間ドラマを浮かび上がらせたい……何かを問題提起する気も、自分の価値観を押し付けるつもりもなく、この「変容」に揺れ動いている人間模様をありのままに描きたい。
作劇/演出としては、肉体的な動きを重視していたこれまでの作風から抜けて、会話劇に重点を置くことになりそうです。対話で浮き彫りになる価値観のズレ、すり合わせ、そこにこそ、まさに今の“人間”が見えてくるはずです。
“問題作”と銘打った本作は、人が人に謝り、人が人を赦すことに関しての物語です。
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