




INTRODUCTIONみどころ
ダンス界伝説の『ラストパイ』、
衝撃の『波と暮らして』
豪華キャストで上演決定!

日本のコンテンポラリーダンス界を代表する振付家の黒田育世が、過去作の再演に取り組む再演譚シリーズ。第2弾となる今回の舞台は、数々の伝説的な演劇・ダンスのステージを繰り広げてきたBunkamuraシアターコクーン。
東急百貨店本店の再開発工事に伴うBunkamuraの長期休館を目前とした2023年3月、刺激的な二作品でこの地に大きな爪痕を残します。今回上演するのは2015年初演の『波と暮らして』と、2005年初演『ラストパイ』の二作品。
『波と暮らして』はノーベル賞受賞作家であるオクタビオ・パスによる短編小説に想を得て、画家の<ある男>と<波>の出会いから別れまでを描いた詩情あふれる作品。今回、振付家の黒田自ら出演を熱望した元宝塚歌劇団星組トップスターの柚希礼音が<ある男>を、黒田が“コンテンポラリーダンス界の宝”と称する加賀谷香が<波>を演じます。
一方、『ラストパイ』は、40分間絶えず踊り続け、身体を極限まで追いつめる過激さ故に、ステージ上で神に捧げる儀式が執り行われているかのように錯覚する作品で、日本ダンス界の伝説的作品。過去に金森穣(Noism Company Niigata芸術総監督)や菅原小春といったダンス界の寵児が担ってきたソリスト役には、織山尚大(少年忍者/ジャニーズJr.)を抜擢。黒田自身が織山の持つ、爆発力、しなやかさ、少年性、表現力を見て「どうしても彼に踊ってほしい」と直感し熱烈オファーしたことで、今回の出演が決定しました。
静と動、生と死、表裏一体の世界が広がる二作品で、言葉なく踊りだけで表現するダンスの限りない可能性をお届けします。
1、2:2018年『波と暮らして』
世田谷パブリックシアター
photo:大洞博靖
3: 2005年 Noism05『ラストパイ』
photo:東浦一夫
提供:りゅーとぴあ
新潟市民芸術文化会館
4、5:2018年『ラストパイ』
photo:Yulia Skogoreva
提供:Dance New Air 2018
黒田育世(くろだ・いくよ)コメント
これまで演劇の現場でお世話になったBunkamuraシアターコクーンが休館になると聞いたときに、直感的に『ラストパイ』を上演したいと思いました。『ラストパイ』はダンス以外の要素の無い、命という単位しかない、一番シンプルな形のダンス作品です。一度劇場を閉めて、再び幕が上がるとき、劇場に焼き付けておくべきは、命を歌い上げる祝祭的な踊りであるべきだと思ったのです。一方『波と暮らして』はオクタビオ・パスの小説があり、ストーリー性を帯びているものです。状況を克明に説明するものではなく、パスが作品に秘めた本心をダンスで綴っています。物語性を孕んでいる『波と暮らして』と、物語性を排し、生命力を孕んでいる『ラストパイ』という対照的な二作品で、ダンスとは両極に触れることができるものだということをお客様にお見せ出来たらと思います。
『波と暮らして』の柚希さんの役は、当初は男性の方を探していましたが、今回はよりポエティックにストーリーを紡いでいける方を念頭に、役者でもあり、ダンサーでもある方というのが重要でした。そんな時に柚希さんの踊っている映像を拝見して、雷が落ちたような衝撃を受けました。一瞬の映像でしたが柚希さんなら、パスが<ある男>に背負わせたものを無意識に吐き出してくれるのでは、と。そして本作はバレエのテクニックを基に振り付けているので、美しいバレエのラインを持つ方という意味でも、柚希さんしかいないと思いました。加賀谷さんは、どんなに言葉を尽くしても、振付家はその作品のすべてをダンサーに伝えきれるものではない中で、振付家の目を通して振付を体現することができる方です。決して自分の色を出すということをせず、作品の登場人物になろうとする。振付に込められた言葉をすべて読み取れてしまう方なのです。彼女が踊ることで、私が言葉に出来なかった、欠落した部分さえも表現してくださると信じております。そして、織山さんが踊る『ラストパイ』のソロパートは、非常に大きなエネルギーを要する役です。織山さんの中に残っている、成人しきれていない中性的な部分が、この作品に神聖さを与え、この作品を祝祭化してくださるのではと思いました。そして彼の爆発力は、この非常に苛酷な40分間を乗りこなしてくれると確信し、オファーに至りました。
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