2023.09.12 UP
『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~』初日前会見が行われました
ノゾエ征爾が2010年に書いた『ガラパコスパコス〜進化してんのかしてないのか〜』をブラッシュアップした2023年版がいよいよ開幕。前日の9/9(土)、初日前会見が行われました。
壁も床も黒板で囲まれた舞台上に、作・演出・出演のノゾエ征爾、木林太郎役の竜星涼、徳盛まちこ役の高橋惠子、木林晴郎役の藤井隆の4名が並び、終始和やかな空気に包まれた会見の様子をお伝えします。
■初日を迎えるにあたっての現在の気持ちや意気込みを教えてください。
ノゾエ:この後ゲネプロ、リハーサルがあり、明日からいよいよ始まるんですけれども、まだまだ調整が必要なところはたくさんありますが、早くお客さまの前でご一緒したい気持ちでいっぱいです。もちろん怖さもありますが、それよりもワクワクの武者震いの方が先立っているような気持ちです。
作品としては4回目になりますが、台本とか演出の内容とかはそれほど変わってはいません。ただ(初演から)10年以上の間に社会は進んでいる中で、俳優さんたちがここにこうして集まっていただいて、今皆さんが本当に良い息遣いでお一人お一人がいてくれていて、僕はそれが何よりも嬉しく感じています。それを早くお客さまとご一緒したい思いです。
竜星:まずはこの世田谷パブリックシアターという素晴らしい劇場で真ん中に立たせてもらえるということを嬉しく思います。太郎としてどういう風に皆さんに影響を与えられるのか、またノゾエさんの演出を受けた自分がどう進化していくのか、どう新しい自分自身を見つけることができるのか。この作品を通して少しでも進化していけたらなと思っていますので、ぜひともたくさんの方に見て楽しんでいただけたら嬉しいです。
藤井:8月から稽古を重ねてまいりまして、出演者の皆さんもスタッフの皆さんも穏やかで優しい方が多くて、楽しい稽古でした。劇場に入っていよいよ本番を迎えるのが本当に楽しみです。旅公演もありますので、たくさんの方にご覧いただけたらと思います。
高橋:徳盛まちこ、80歳、老人ホームから抜け出した老女を演じさせていただきます。この作品に参加できたことは、私にとって本当に幸せなことだと思っております。ここまで女優という仕事を続けてきて、また新たな扉が開く感じがしております。早くお客様の前で演じたいと思っております。ちょっと怖いですけれども。今までお芝居をしていて、怖いと思ったことはほとんどありませんでした。今回の役に限っては本当に初めてのことが多くて、表情をなくす、反応しない、そういうことを要求されている役でもあります。たくさんの皆様に見ていただきたいと思います。
■小道具を使わず黒板を使うなど印象的な演出がありますが、稽古場で苦労したことや印象的なエピソードがあれば教えてください。
ノゾエ:「描く」というのはただ「描く」ということではないというところを、俳優さんと共有していくことに時間をかけました。というのは、ただ「描く」ということではなく、俳優さん、役、人物そのものの行動であり息遣いであり、生活そのものなので、それが乖離しないでほしい。でもいざ実際に「描く」とするとやっぱり「描く」になってしまうなと。そこにちゃんと自分の息遣いだとか色々な行動を乗せて、それがイコールになるまでに皆で模索を重ねました。今とてもいい感じになっているので、いいところに行き着けたと思っています。
竜星:やっぱり舞台上にチョークで描くというのは僕にとっても、ほとんどの方があまり見られたことのないような新しい演出だと思います。最初は、このくらいの大きさでいいのかなとか、見えるのかなとか、戸惑いだったりがありました。実際に劇場に入ってやってみると、もう少し大きく、濃く描かないといけないなというのが見えてきたりだとか、発見がありました。また、描いて、それを消すのか、汚すのか、そういう表現も一つの新しい魅力なのかなと。また、この全く何もないサラの状態から、どんどんそこに色々なものが描かれていった後の舞台も素敵だなと思っています。
藤井:竜星くんが描かれる絵がすごく素敵なんです。すごく分かりやすくて、お上手です。きっとファンの皆さんも字は見ることはあったかもしれませんが、絵はなかなか見た事ないと思うので、そのチョークの絵も見ていただきたいです。惠子さんも、すごく生活の一部みたいなものを描かれる場面があるんですけれど、それがすごく素敵です。私自身で言うと、八百屋舞台で、少しでも地面の絵を見ていただくために角度がついているんです。稽古場からセットを組んでいただいていたので、僕は1ヶ月以上足の裏がパンパンの状態で。笑
でも惠子さんが、まちこさんとして軽やかに空間の中でくつろいでいるのを見て、こういう風にしなきゃいけないな、と教えていただきました。
高橋:私は認知症が入っている役で、お漏らしなんかもしちゃうんですけれど、黄色いチョークで、こう(手を動かす)描いて、お漏らししたというのを表現するんですけど、チョークでよかったなって。笑
ノゾエ:便利ですよね、何かと便利なんです。
藤井:ものすごく綺麗なお花とかも描かれていますので、そっちにも注目してください。笑
竜星:でも本当に惠子さん絵が上手ですよね。
高橋:私絵が苦手だったの。今まで一度も絵を褒められたことがなかったんだけど、今回初めて上手だねって言ってもらえて。それがすごく嬉しくて。
竜星:僕が描くのがキャッチーな絵だとしたら、惠子さんは繊細な絵で。
藤井:あたたかい絵ですよね。
ノゾエ:人柄が出てますもんね。
■“進化”したなと思うこと、また“進化”したいなと思うことはありますか?
ノゾエ:まず何をもって進化と言うか?というところを思ってしまうことがあります。もちろん素直に言葉通りに受け取ることもありますが、僕の中で、このテーマを掲げた時に、本当に何をもって進化かなというところがあって。必ずしも、進化=成長とも思っていないところがあります。「ただ先に進んでいる」と捉えた方が何かと広がりがあるように思えていて。僕自身、じゃあ何を進化したかと思っていると、進んで変わっていくことを受け入れられることになった時。それは自分の中で進化だと感じている。例えば今白髪が増えているっていうのは受け入れています。笑
竜星:僕もこのあいだ30歳になって、30歳を受け入れました。笑
そしてまずこの自分の役柄自体が、僕にとっては進化したいなと思いました。自分の中にないような役柄なので、稽古場からずっと悩みながら、もしかしたら今も悩みながら続けているかもしれません。その先、公演が終わった時に少しでも役者としても人間としても「進化したね」と言われたら、本当に太郎役をやって良かったなと思って演じています。必死に毎日悩んでいます。その進化の途中です。
藤井:視力の矯正手術が叶う時代ですから、もうそろそろ後付けで記憶力をアップできるような機械みたいなのができるんじゃないかなと願っております。本当にセリフ1つ覚えるのに時間かかるようになってきて、自分自身の進化と言うよりも、技術の進化に間に合って、何とか後付けハードディスクみたいなことができたらいいなと思っております。
高橋:自分としては、今まではとてもくよくよ悩むことが多くて、母が生きてる頃は、「なんでお前はそんなにくよくよ悩んでいるの」と言われていました。それが最近はまっちゃんに近い人になってきたかもしれませんが、忘れる事というか、切り替えが早くなったといいますか。いつまでもくよくよ悩まなくなったのは、私にとっての進化です。もっと進化したら、この地球上の人だけでなくて、他の惑星の人とも話せるように進化したいなと思っています。言葉じゃなくてインスピレーションといいますか言葉じゃない…こうやって忘れちゃうんです。まっちゃんの役になってしまって…(横からノゾエさんがテレパシー)そうです!テレパシーです。テレパシーで話せるようになっていきたい。そういう風に進化していきたいと思います。
■最後に竜星涼さんに、これから芝居を楽しみにしてくださっている皆様に一言メッセージをお願いします。
竜星:チョークというものを使いながら、最初はみんなきれいな格好から、最後にはみんなが汗とチョークまみれになっている、その姿をきっといとおしく、そして素敵に見えるんじゃないかとそういう舞台になったかと思います。何を感じて受け止めてもらえるのか、人それぞれ違うと思いますが、その中で僕たちはこの役の中で一分一秒、進化していくと思いますので、まずは東京公演、千秋楽までの間、また一度と言わずに何度でもその進化の様子を見届けてもらえたらと思います。もしかしたら進化していない日、退化している日がある…いやないでしょう。笑
毎日、進化し続けていると思いますので、ぜひともその姿を見届けてもらえたらと思います。
撮影=宮川舞子