2022.06.01 UP
『パンドラの鐘』取材会の写真&コメントが到着!
成田凌(ミズヲ役) コメント
僕は、毎日のように23年前に野田さんと蜷川さんがそれぞれ演出された作品の映像資料を観ていたのですが、稽古が進むにつれて「これは壊していかないと意味がない」という考えに至りました。僕が演じるミズヲという役は堤真一さんと勝村政信さんが演じられていて、ものすごいエネルギーを持ったお二人の芝居に、少し打ちひしがれる思いもありました。でも、そのお二人の芝居を信じてしまうと、今一緒に作品を作っている人たちに失礼だな、というふうに見方が変わりました。今は役の演じ方ではなく、最初に台本を読んだときの楽しさを忘れないように、言葉遊びの中に隠されたこの作品の要素を、昔の映像から学んでいるところです。これからは自分と皆さんで作品を作り上げていきたいです。
(初舞台については)ずっと挑戦したいと思っていました。映画やドラマでやってきたことと、今やっていることは本当に真逆で…。“何もしないでそこにいる”ということを今までずっとやってきましたが、舞台は“やらなきゃ伝わらない”ので、映像とはまた違う楽しさを、日々感じています。また、先輩方が自由に試行錯誤できる環境を作ってくださったり、“壊していく”ような作業を見せてくださるので士気が高まります。同じことを積み重ねていき、突き詰めていく時間は本当に楽しく、頭も体も前のめりになっています。
お客様には視覚的にも、物語的にも楽しんでいただけると思います。壮大なエンターテインメントをお届けします。ぜひ楽しみにしていてください。
葵わかな(ヒメ女役) コメント
私はあえて過去の公演映像を観ずに稽古に臨んでいます。というのも、この作品の持っているパワーがあまりに大きく、少し重たく感じてしまうのが怖かったからなのですが…。ただ、野田さんがコメントで「好き勝手にやってほしい」と仰ってくださり、もちろんすごい作品ではありますが、今この時にこの作品を作ろうとしているのは私たちなので、ちょっと無鉄砲でも堂々と胸を張っていたいという気持ちがあります。また、稽古中はじっくり作品と向き合えるので、あまり凝り固めず何にでも対応できる柔軟性をもって挑みたいと思っています。
最初に台本を読ませていただいたとき、この物語はすごくポップなテイストで進んでいくけれど、その実すごく深いテーマを抱えているな、という印象を受けました。また、この作品の魅力は、言葉遊びやセリフがたくさん出てくるのに、本当に大事なことだけは決して言わないところにあります。それは逆に優しくも感じられますし、ヒメ女とミズヲの関係性だったり、ヒメ女の行く末が抱えているもっと大きな問題だったりを、あえて言葉では説明せず作品全体で見せていくことで、観た人に解釈を委ねているんです。そこがとても素敵ですし、そういった台本の緻密さにプラスして、これが杉原さん版の『パンドラの鐘』なんだな、という見た目の華やかさも加わってより作品が深まっているのを感じています。
(初演から)23年経って、今また作品と時代がリンクしていることは悲しいことかもしれませんが、私たちが信じるエンターテインメントの力がこの時代に作用して、今を生きている方々に少しでも何かを届けられたらなと思います。
杉原邦生(演出) コメント
この物語は、現代で発掘された“パンドラの鐘”の謎を解くというサスペンスと、古代のミズヲとヒメ女のラブストーリーという二つの軸が同時に進行していき、最終的には長崎に落とされた原爆の話に集約されていきます。野田さんがパンドラの鐘に込めた“希望”を、僕らが今の人たちに、そして未来にどうやって伝えていけるのか。そういったことを考えながら作品を立ち上げていきたいと思っています。また、野田さんと蜷川さんのお二人と同じことはしたくないので、やはり僕なりの、そして今回集まったキャスト、スタッフの皆さんと一緒に作る新しい『パンドラの鐘』にしたい、という気持ちが一番にあります。今回は能の『道成寺』と歌舞伎の『娘道成寺』、この二つの世界と現代劇の世界観をない交ぜにしたような劇空間を作り、そこにm-floの☆Taku Takahashiさんによる現代的な音楽が重なり、さらに日本の文化に魅入られた海外のデザイナーAntos Rafalさんの衣裳が融合します。野田さんの言葉の世界はいろんなイメージが乱反射していくので、それを空間的に体現しつつ、古代と現代を行き来する物語に、日本の演劇における古典と現代を重ねて物語を構築していきたいと思っています。
ライブのエンターテインメントを観に行くということ自体、腰を上げるのが重くなっているような時代かもしれませんが、観に来てくださった方に必ず「観てよかった」と思っていただけるように、それを使命と感じながら作品を作っていきますので、ぜひ劇場に生のエンターテインメントを体感しに来ていただきたいです。