浸食し合うリアルとフィクション―
長塚圭史(演出)×前川知大(作)が放つスリル!
ともに劇作家・演出家として活躍する長塚圭史と前川知大。演劇界の次代を担う同世代の才能が初タッグを組む贅沢な話題作が、この夏、シアターコクーンに登場する。
『あかいくらやみ〜天狗党幻譚』(作・演出)、『マクベス』(演出)と、シアターコクーンの空間に挑戦的で壮大な世界を生み出して来た長塚圭史。蜷川幸雄演出『太陽2068』で近未来SFを確かな筆致で描き出し、近年は映画(入江悠監督『太陽』原作・脚本、今秋公開の黒沢清監督『散歩する侵略者』原作)でも活躍するなど、今、最も注目される劇作家・前川知大。演出家脳/作家脳を持つ二人が、一年以上にわたって刺激的な打ち合わせを重ね、着々と準備してきたサスペンスフルな舞台がいよいよお目見えする。
舞台はとある劇場。国民的スターから地元の大学生まで、あらゆるキャリアを持つ俳優やスタッフが集まり、リハーサルが行われている。演目は、死者の言葉が生きている人間を通して「再生」されるという戯曲『PLAYER』。その劇中劇と、俳優たち(Player)が戯曲に書かれた言葉を再生(Play)する稽古場の世界が併走し、行ったり来たりしながら、その境界線はだんだんと曖昧になる。現実か、虚構か。
『PLAYER』の持つ不穏な世界が演じる俳優たちを浸食し始め、〈演じること〉が入れ子のように幾重にも重なっていく――なんともスリリングな仕掛けが張りめぐらされた舞台になりそうだ。
取り憑かれたように言葉を紡ぎ、“Player”として狂気を帯びていく登場人物には、この上ない魅力的なキャストが集結した。蜷川幸雄演出作品はもちろん、映像でもその存在感を示す藤原竜也。前川作品への出演は5作目、その世界観を深く理解する仲村トオルだ。透明感と力強さをあわせ持つ成海璃子、確かな演技で舞台を締める木場勝己、元宝塚男役トップスターの真飛聖ほか、実力派かつ魅力的なキャストがそろい、刺激的なエンターテインメントが立ち上がる!
STORYストーリー
舞台はある地方都市の公共劇場、そのリハーサル室。国民的なスターから地元の大学生まで、様々なキャリアを持つ俳優・スタッフたちが集まり、演劇のリハーサルが行われている。
演目は新作『PLAYER』。幽霊の物語だ。死者の言葉が、生きている人間を通して「再生」されるという、死が生を侵食してくる物語。
<行方不明の女性、天野真(あまのまこと)が遺体で見つかった。死後も意識として存在し続けることに成功した彼女は、友人達の記憶をアクセスポイントとして、友人達の口を借りて発言するようになっていく。事件を追っていた刑事、桜井を前に、天野真を死に導いた環境保護団体代表であり瞑想ワークショップの指導者、時枝は、これは世界を変える第一歩だと臆面もなく語る。死者との共存が、この物質文明を打開するだろうと。カルトとしか思えない時枝の主張に、桜井は次第に飲み込まれてゆく。>
物語は劇中劇と稽古場という二つの人間関係を行き来しながら進んでいく。
死者の言葉を「再生」することと、戯曲に書かれた言葉を「再生」することが重なる。単なる過去の再生ではなく、今を生き始める死者と、戯曲の言葉に引き寄せられ、アドリブで新たな言葉を紡ぎ出す俳優が重なる。
演じることで死者と繋がった俳優達は、戯曲の中の倒錯した死生観に、どこか感覚を狂わされていく。生と死、虚構と現実の境界が曖昧になっていく。時枝の狂った主張は、桜井の選んだ行動は、リハーサル室でどう響くのか。
コメント
「約10年前に上演し、いつかもう一度やりたいと思っていた戯曲『PLAYER』。ここに描いたある種の気持ち悪さや不気味さを長塚さんが面白がってくださり、新たな構造を加えてまたお客様に観ていただけることになりました。前とはまた別の角度で立ち上がる舞台を、僕自身、楽しみにしています」