パリ社交界に生きる男と女の息をのむ心理戦
危険な恋愛ゲームに真の勝者はいるのか?
昨年10月の『るつぼ』(ジョナサン・マンビィ演出)に続き、シアターコクーンにて海外演出家による“DISCOVER WORLD THEATRE“第2弾が登場する。上演作は18世紀フランスの作家ピエール・ショデルロ・ド・ラクロの恋愛心理小説を原作にした『危険な関係』。数多く映画化されてきた人気作だが、特にイギリスの劇作家クリストファー・ハンプトンが1985年に戯曲化した舞台はロイヤル・シェイスクピア・カンパニー(RSC)で初演され大ヒット。日本では1988年にデヴィッド・ルヴォー演出で初演を果たし話題を呼んだ。
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今回演出を手掛けるのは、日本初登場となるRSC出身の俊英リチャード・トワイマン。現在イングリッシュ・ツアリング・シアターの芸術監督を務め、海外での演出経験も豊富だ。シェイクスピアから現代劇作家まで幅広く手掛け、2009年オリヴィエ賞3部門受賞の『ザ・ヒストリーズ』では、『ヘンリー四世』第2部の演出を担った逸材である。
18世紀末のパリ社交界を舞台に、稀代のプレイボーイ、ヴァルモン子爵と、艶やかな社交界の華、メルトゥイユ侯爵夫人が仕掛ける爛れた恋愛ゲームを描く本作。上流階級の優雅な戯れと見せかけつつ、男と女の激しい生存闘争でもあり、そのパワーゲームは実にスリリングだ。演出にあたりトワイマンは「戯曲の内容を丹念に追い、現代の日本の観客に語りかけられるように表現したい」と意気込む。
ヴァルモン子爵には4年ぶり2度目の舞台出演となる玉木宏、メルトゥイユ侯爵夫人には鈴木京香という顔合わせが早くも注目を集め、恋愛ゲームに翻弄される貞淑なトゥルヴェル法院長夫人には野々すみ花が扮するほか、若手からベテランまで厚みのあるキャスト陣が揃った。トワイマンは既に日本で俳優とワークショップを行い、「勉強したい、吸収したいという姿勢に強く感銘を受けた」と手応えを掴んでいる。背徳の危険なゲームの行く末を、息をのんで見詰めてほしい。
STORY
ストーリー
原作は18世紀末のパリ、華麗なる社交界が舞台。
社交界に君臨する妖艶な未亡人メルトゥイユ侯爵夫人(鈴木京香)は、かつての愛人ジェルクール伯爵への恨みから、その婚約者セシル・ヴォランジュ(青山美郷)の純潔を踏みにじろうと稀代のプレイボーイであるヴァルモン子爵(玉木宏)に助力を求める。しかしヴァルモンは、叔母ロズモンド夫人(新橋耐子)のもとに滞在している貞淑なトゥルヴェル法院長夫人(野々すみ花)を誘惑しようとしているところで、その依頼を断る。ところがセシルの母ヴォランジュ夫人(高橋惠子)こそが、トゥルヴェル夫人に彼を非難し近づいてはならぬと忠告していることを知り、ヴォランジュ夫人への復讐を決意、メルトゥイユ夫人の計画にのる。
一方、清純なセシルは純粋な若き騎士ダンスニー(千葉雄大)と恋に落ちていた。そこにメルトゥイユ夫人の策略が、そしてヴァルモンはトゥルヴェル夫人を誘惑に……。
二人が仕掛ける退廃に満ちた恋愛ゲームが繰り広げられていく。
各国で数多く映画化された名作
各国で数多く映画化された名作
1959年 フランス映画『危険な関係』 ロジェ・ヴァディム監督
出演:ジェラール・フィリップ、ジャンヌ・モロー
設定を現代の上流社会におきかえ、音楽にはモダンジャズを使用したことでも有名な作品。
1988年 アメリカ映画『危険な関係』 スティーブン・フリアーズ監督
出演:グレン・クローズ、ジョン・マルコヴィッチ、ミシェル・ファイファー
原作の時代を忠実に描いたハリウッド豪華スターの共演作。若き日のキアヌ・リーブスも出演。アカデミー賞の3部門を受賞した格調高い映像美の名作。
2003年 韓国映画『スキャンダル』 イ・ジョエン監督
出演:ペ・ヨンジュン、イ・ミスク、チョン・ドヨン
李朝末期の朝鮮を舞台にペ・ヨンジュンを主演に韓国で映画化。
2012年 中国映画『危険な関係』 ホ・ジノ監督
出演:チャン・ツィイー、チャン・ドンゴン、セシリア・チャン
1931年の上海に舞台を置き換えて映画化。チェン・ツィイーなどアジア圏のスターが共演した。
日本では…
1997年に宝塚歌劇団(雪組)が「仮面のロマネスク」としてミュージカル化。2012年に再演、その際には今回出演の野々すみ花もメルトゥイユ侯爵夫人役で出演。
また、2005年東海テレビ・フジテレビ系列で、ラクロの小説を原作に高橋かおり主演で「危険な関係」という同名タイトルでドラマ化もされた。
STAFF
スタッフ
演出:リチャード・トワイマン
ロンドン・ロイヤルコートにて、インターナショナル・アソシエイト・ディレクターを務め、数々の話題作を演出した後、2016年秋より、英国内随一のプロデューシングカンパニーである、イングリッシュ・ツアリング・シアターの芸術監督を務める。それ以前は、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)にて研鑽を積み、14作品のクリエイションに携わる。その中でも、彼の演出した『Henry Ⅳ』は2009年オリヴィエ賞3部門を受賞。さらにEvening Standard Editors Choice Awardも受賞した。
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ナショナルシアターにてピーター・ホール演出の『Twelfth Night』にも参加、Bush Theatre, Old Vic, Bath Theatre Royalなど様々な劇場で演出。また、ウエストエンドにて『The Mystery of Charles Dickens』を演出するなど、若手ながら確かなキャリアを積み、ロンドン演劇界にて脚光を浴びている。ロイヤルコートにて、2015年2月~パレスチナ劇作家の新作戯曲『Fireworks』を演出。同劇場にて、同年12月に『You For Me For You』、2016年も『Torn』を演出し、高い評価を得ている。イングリッシュ・ツアリング・シアターにおいては、本年2月に『OTHELLO』を演出、こちらも批評家達から絶賛を浴びた。
美術・衣裳:ジョン・ボウサー
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)のアソシエイト・アーティストとして『ハムレット』『リア王』『冬物語』など多数のシェイクスピア作品の舞台をデザイン。ロンドンパラリンピック(2012年)の開会式のデザイン、ソチパラリンピック冬季競技大会(2014年)のキネティックトーチのデザインなども手掛ける。『You for me for you』(リチャード・トワイマン演出)、『The Seagull』『Bugsy Malone』『The James Plays』などの舞台デザイン多数。2014年、イギリス劇場賞受賞(『Mametz』のデザイン)。