見どころ

二度ある事は三度ある。
三度がまかり通れば、もう、ずーっとある。
それが、キレイという作品だと思う。

松尾スズキ

 Bunkamura25周年の年、ラストを華々しく飾るのは2000年に初演し、2005年に再演された『キレイ│神様と待ち合わせした女│』。大人計画主宰の松尾スズキが本格的ミュージカルに初挑戦した作品で、その設定やストーリー展開、さらにブラックユーモアと純愛とが同時に存在する混沌さには誰もが衝撃を受けた問題作だ。今回はメインキャストを大幅に入れ替えたニューバージョンとなる。

 誘拐、監禁されて地下で育った少女、ケガレを演じるのは『農業少女』(2010年)『ふくすけ』( 2 0 1 2年)以来三度目の松尾演出作品となる多部未華子。生殖機能を持った変種のダイズ兵・ダイズ丸には初演、再演で少年・ハリコナを演じた阿部サダヲが挑む。頭は弱いが花を咲かせる異能力を持つ少年・ハリコナには松尾作品初参加、舞台俳優としても成長著しい小池徹平。また成人したケガレであるミソギには『キャバレー』(2007年)に続く松尾作品となる松雪泰子が扮するほか、マジシャンに田辺誠一、成人したハリコナに尾美としのり、ダイダイカスミに田畑智子、カネコキネコに皆川猿時ら、意外性のある配役が実現する。

 舞台は三つの国に分かれて100年もの間、民族紛争を続けている〝もう一つの日本〞。美醜、明暗、陰陽、生と死、絶望と希望、大人と子供、天才とバカ、損得… … といった真逆のキーワードが入り乱れるカオスに満ちた世界観に、記憶喪失の少女から異形の生物まで濃いキャラクターが続々登場。背景には戦争、民族差別、少女監禁等、なんだかまるで今年書かれたかのような描写も多い。

 また、伊藤ヨタロウによる20曲を超える楽曲も秀逸で、松尾が綴る歌詞との絶妙なコラボレーションと、意表を突くリズム、曲調のバリエーションが様々な価値観が錯綜する世界を楽しく彩ります。今回は初演・再演から大幅にスケールアップした11人編成のオーケストラによる生演奏にもご期待を!個性豊かな俳優たちの歌声も必聴です。

 猥雑でエネルギッシュ、そしてもちろん松尾ならではの笑いの小ネタも満載の傑作ファンタジーだ。あの伝説的なミュージカルが果たしてどんな進化を遂げているか、どうぞお見逃しなく!