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Romantic Comedy/ロマンティック・コメディ Romantic Comedy

8/11(水)より配信上映開始

日本語字幕付

  • "This is a doc that delights as much as it informs" - THE HOLLYWOOD REPORTER 🧡💛💚💙💜🤎🖤 "Now, I’m putting my hands up here" - THE GURDIAN
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ティーンエイジャーの頃、私はロマコメ映画に狂おしいほど恋をしていた。ロマコメ映画は孤独への不安を和らげ、甘美な人生が待っていると約束してくれた。大人になった今はいろいろなことを考えてしまう。なぜ『プラダを着た悪魔』でアンディはネイトの誕生日に怒られるの? マグノリアのカップケーキじゃだめ? ブリジット・ジョーンズが57kgでオーバーウェイトだとバカにされるなら、私はどうなるのだろう。ロマコメ映画ではなぜ、キャリアウーマンはみんな惨めに描かれるの? みなが白人で、異性愛者で、誰もが結婚を望む、非現実なおとぎ話の世界。なのに、なんで私はまだロマコメ映画を観てしまうのだろう。何度も、何度も。あなたはどう思う? ロマコメ映画のこと──。

ラブコメ=ロマコメ映画は多くの人々に深く愛されている一方で、本格的な分析はほとんどなされてこなかった。本作は幾多の名作映画の実際のシーン映像を抜粋し、「あの映画を観たときの高揚」を観客とともに追体験しながら、「ロマコメ映画とは? 愛とは?」というテーマを探求し、自己発見の旅に出るフィルム・エッセイである。
監督はインディポップ・バンド Summer Campとして活動し、本作と同様のスタイルで青春映画について語ったドキュメンタリー『ビヨンド・クルーレス』のサントラも勤めたエリザベス・サンキー。膨大な数の名シーンを巧みに切り取り、自らのボイスオーバーで個人的な想いを重ねつつ、サウンドトラックも手掛ける。監督以外の「声」として、『このサイテーな世界の終わり』『ロブスター』で注目を集めるジェシカ・バーデン、前述の『ビヨンド・クルーレス』の監督チャーリー・ラインをはじめとして、Pitchfork、NME、Rolling Stone等のカルチャーメディアで活躍する批評家やライターたちが集結。多様な視点からロマコメ映画について語り尽くす。
旧来のロマコメ映画を礼賛すると同時に、現代的な視点で問題提起を行う本作。その言及対象は、「愛」を描く映画のオルタナティブなスタイルとしてのブロマンス≒バディものにまで及ぶ。愛について語るとき、わたしたちはどのような言葉を持ち得るのか? そもそも、映画を観て感動するとはいったいどういうことなのだろうか。相反するふたつの存在が互いの違いを認め、補い合うのがロマコメ映画の定石だとするならば、今あらためてロマコメ映画を語り直す意義は、きっと想像以上に大きいはずだ。

★劇中に登場する名作ロマコメ映画
ラブ・アクチュアリー、(500)日のサマー、フォー・ウェディング、ユー・ガット・メール、恋人たちの予感、素顔の私を見つめて…、ゴッズ・オウン・カントリー、ラ・ラ・ランド、卒業、プリティ・ウーマン、紳士は金髪がお好き、ノッティングヒルの恋人、ヒズ・ガール・フライデー、プラダを着た悪魔、メリーに首ったけ、40男のバージンロード、ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ、ブリジット・ジョーンズの日記、ルビー・スパークス etc……

Column

COLUMN

コラム

ロマコメ批評の幸せな結末

 ジャンル映画の中で、ロマンティック・コメディほどストーリーの法則が詳細な分野が他にあるだろうか。
 物語は決まってボーイ・ミーツ・ガールで始まり、惹かれあった二人に何らかの危機が訪れ、最後には互いへの愛情を確認してハッピー・エンドで終わる。出会い頭の印象は大抵、最悪だ。それがふとしたことから相手の美点や自分との共通点を知って、好感度がアップする。ロマンティックで気の利いたデートのシーン。主人公たちの愛の踏み台として登場する、一目でふられ役だと分かる男女に、ヒロインの恋の行方に興味津々の親友。主人公たちがすれ違ってそれぞれの日々を送る時のモンタージュに被さる切ないジャズ・ソング。愛を再確認した男性が旅立つヒロインを引き止めようと空港に急ぐと、決まってハマる交通渋滞。結末は見えているはずなのに、私たちは飽きもせずにロマンティック・コメディを見続ける。
 エリザベス・サンキーもそんなロマンティック・コメディのファンの一人だった。ところがロマンティック・コメディの映画における一つのゴールである“結婚”を実生活でクリアすると、このジャンルの映画に共通する様々な問題点が気になり始める。彼女の監督した『ロマンティック・コメディ』は、主にハリウッド制作のロマンティック・コメディ映画のシーンをコラージュし、引用しながら批評していくシネマ・エッセイとでもいうべき作品である。サンキーが編集/作曲で参加したチャーリー・ラインの『ビヨンド・クルーレス』(2017)がこの方式で青春映画を取り上げていて、今後、映画による映画批評のスタイルとして定着していきそうな予感がある。
 『ロマンティック・コメディ』は時間軸で作品を並べる映画史の勉強的な作品ではないので、引用されているロマコメ映画の年代はランダムだが、中心となっているのは監督が今よりも若い時に夢中になって見たと思しき90年代末〜00年代の映画だ。メグ・ライアンやジュリア・ロバーツといったスターたちに代わって、キャメロン・ディアスやケイト・ハドソンがこのジャンルで台頭し始めた頃から、『(500)日のサマー』(2009)や『終わりで始まりの4日間』(2004)などのインディ・ロマコメが話題となった時代まで。声だけで出演するサンキーと共演者たちは、みんなでツッコミを入れながらリビングで映画を見るような感覚で、鋭い批評を加えてこの時代のロマンティック・コメディの保守性と問題点を明らかにしていく。
 ハリウッドにおける第一次ロマンティック・コメディのスタイルができたのは、洗練された感覚を携えた監督たちがヨーロッパから亡命してきた1930年代。奇抜な設定と速いスピード感でスクリューボール・コメディと呼ばれていた初期のロマコメのヒロインは、精神的に強くてタフな女性たちだった。ところが50年代に主人公像が一変して以降、このジャンルの描く女性たちのキャラクターは固定化してしまっているとサンキーは語る。キャリア・ウーマンならば“愛すべきドジ”だし、高嶺の花に見える美女たちは男っぽい気さくな女性。あるいは、文化系男子の趣味にひたすら応えてくれるような愛らしい女子たち。ロマンティック・コメディは女性が主な観客層のはずなのに、ヒロインはいつも男性目線によって造形されている。
 ロマコメの問題点は、それだけではない。映画の主人公はいつも、都会に住む富裕層で白人の美男美女の異性愛者たち。性的マイノリティの描き方はステレオタイプで、異人種のカップルは滅多に登場せず、ルックスや体型の多様性もない。恋愛とは一部の階層に許された贅沢品だと言わんばかりである。
 それでも、サンキーも、他の多くの観客たちもロマンティック・コメディを見るのをやめられない。それは何故か。ロマコメの本質は、いま挙げたような問題点ではないからだ。ロマコメのテーマは、愛する相手に愛してもらいたいという切なる願い。そのテーマでどんなに豊穣な作品ができるのか、新たに作られているのか。映画はこの分野のコアの部分を更に深掘りしていく。
 現実では愛の成就そのものが奇跡かもしれない。でも私たちは、そんな奇跡の瞬間が見たくて映画館に足を運び、金曜日の夜にテレビやモニターで映画を選ぶ。ロマンティック・コメディは観客を幸せにしてくれる。だから映画『ロマンティック・コメディ』にも、当然ハッピーエンドが用意されているのだ。

山崎まどか(コラムニスト)

監督:
エリザベス・サンキー
製作:
ジェレミー・ワームスリー、オスカー・ピムロット、マリア・キアラ・ヴェンチュラ
脚本:
エリザベス・サンキー
音楽:
Summer Camp、ジェレミー・ワームスリー
編集:
エリザベス・サンキー
キャスト:
ジェシカ・バーデン(『このサイテーな世界の終わり』『ロブスター』)、チャーリー・ライン、アン・T・ドナヒュー、キャメロン・クック、シムラン・ハンス、ブロディ・ランカスター、エレノア・マクドーウォル、ローラ・スネイプス
作品情報:
2019 年/イギリス/英語/ 78 分
配給:
Bunkamuraル・シネマ
日本語字幕:
岡田悠里
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