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17 Blocks/家族の風景 17 Blocks

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いよいよ2024/1/29(月)23:59で配信終了/日本語字幕付

©Davy Rothbart
  • “A singular achievement in documentary filmmaking... Remarkable... intimate and uncompromising... 17 BLOCKS is the result of the Sanford family’s profound act of bravery.”— Variety ????????????????????
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★本作品は2024/1/29(月)で配信終了いたしました。

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ドキュメンタリー映画史上類を見ない、驚くべき到達点。
サンフォード家の勇気ある行いがもたらした、親密で妥協なき傑作。
──Variety

とてつもなく痛切でパワフル、深い感動に包まれる!── FilmWeek

 

2021年1月、トランプ前大統領の支持者たちが議会を襲撃するという前代未聞の出来事に見舞われたアメリカの首都・ワシントンD.C.。連邦議会議事堂、ホワイトハウスやナショナル・ギャラリーなどが立ち並ぶナショナル・モールのわずか17ブロック=約3km圏内には、アメリカでも有数の危険な区域が広がっていた。

1999年、この区域に引っ越してきたばかりの若き映画製作者デイビー・ロスバートは、自宅近くのバスケットコートで、サンフォード家の兄弟エマニュエルとスマーフに出会う。兄弟から家族のディナーに招待されたロスバートは、エマニュエルに小さなビデオカメラの使い方を教え、エマニュエルはサンフォード家の日常をカメラに記録するように。裕福ではないものの、なんとか手を取り合って生活するサンフォード家と、家族同然の付き合いを続けるロスバート。エマニュエルがカメラを手に取ってからちょうど10年が経った2009年の大晦日、ある悲劇がサンフォード家を襲う──。

 

「まるで『6才のボクが、大人になるまで。』が現実になったような映画」と評される本作は、サンフォード家の20年間・1,000時間以上に及ぶホームビデオ素材をもとに構成された、衝撃のドキュメンタリーだ。家族に寄り添い続け、映画史上に類を見ない物語を紡いだのは監督のデイビー・ロスバート。『リトル・ミス・サンシャイン』のスタッフ陣がバックアップをし、本作は2020年のフランス・シャンゼリゼ映画祭で観客賞、審査員賞、批評家賞を総なめしたほか、トライベッカ映画祭など世界中の映画祭で批評家や観客から絶賛された。

少年エマニュエルが撮影する映像には、ホームビデオ特有の甘美なノスタルジーと偶発的な美しさ、そして微笑ましい家族の一瞬が記録されており、観客はその映像に心躍る一方で、すぐそこには貧困、薬物依存、ジェントリフィケーション、銃と暴力の脅威がある。きわめてパーソナルな家族の風景から、アメリカという国家全体の光と闇を浮かび上がらせる──そんな本作の果敢な試みは、ブラック・ライヴズ・マター運動とも共鳴し、アメリカで400年以上続く構造的な黒人差別、あらゆるところで今なお続く分断と、それを乗り越えようとする人々の深いヒューマニズムを見事に描き切る。

 

時に絶望に包まれながらも、希望を忘れないサンフォード家の20年にわたる真実の物語。監督の真摯なエンパシーと、偶然の出会い、そして家族の深い勇気がもたらした、唯一無二の傑作ドキュメンタリー。

Column

COLUMN

コラム

  『17 Blocks/家族の風景』はアメリカの政治の中心である連邦議会からわずか17ブロック(約2キロ)離れた貧困地域に住むサンフォード一家というアフリカ系母子家庭を20年撮り続けたドキュメンタリー。

  観光や仕事で首都ワシントンDCを訪れる日本人は、ホワイトハウスや連邦議会、さまざまな官公庁や博物館のある中心部だけを見て去っていくだろう。しかし、その外側にも住宅地が広がっており、人口の半分以上がアフリカ系なのは知られていない。

 ワシントンにアフリカ系が多く住むようになったのは、南北戦争が終わり奴隷が解放された1865年から。解放されても差別が続く南部から逃げ出した黒人たちにとっていちばん近かったのが、北部と南部の中間に建設された首都だったからだ。

 その後もアフリカ系人口は増え続けたが、貧困度が高く、市の中心部に住む政府職員らアメリカのエリートたちとの職員との経済格差は広がり、2010年代には上位20%の年収合計が、下位20%の年収の合計の30倍となり、全米で最も貧富の差が激しい街となった。

 『17 Blocks』の監督デイビー・ロスバートは1999年にバスケットコートで9歳の可愛いエマニュエル・サンフォード少年と出会い、彼の家族を撮影し始める。多くのシーンはロスバートがサンフォード一家に預けたビデオカメラで撮影されているので、他人には見せないような生々しい現実が記録されている。

 16歳でシングルマザーになった母はクラック・コカイン中毒で、ドラッグ代のために十字架を質に入れたり、車でドラッグを買いに行ったり、自分を更生させようとする恋人にナイフを突きつけて叫んだりする現場が家族によって撮影されている。長男スマーフはドラッグの売人になり、長女デニースも十代で母となり、学校を辞めてしまう。

 その負の連鎖から抜け出す希望がエマニュエルだった。彼は自分一人でサンフォード家を救おうと誓う。ドラッグともギャングとも無縁に育ち、優秀な成績で奨学金で高校を出て、19歳で甥のジャスティンを養子にして父になり、消防士として地域に奉仕する人生に踏み出す。

 だが、その正義感と責任感が仇になった。

 私たちのせいでエマニュエルが死んだ……罪悪感がサンフォード家をさらなる地獄に落としていく。母はドラッグで酩酊しながら、エマニュエルが死ななかった世界線を想像して逃避する。兄スマーフは自分を責めてさらにドラッグに溺れる。葬儀で牧師はサンフォード家の苦難を、旧約聖書で苦難に苛まれるヨブにたとえた。そして、母は道を踏み外すきっかけとなった恐ろしい事件を告白する。彼女は踏みにじられたのだ。

 そのどん底に一筋の光が差す。エマニュエルが養子にしたジャスティンは、ロスバートが初めて会ったときのエマニュエルと同じ年に成長し、エマニュエルを目指して真っ直ぐに育つ。そのまぶしい姿に照らされて、母は立ち直り、スマーフは更生し、デニースは警察官になる。

 エマニュエルとは、旧約聖書でイザヤが預言した救世主の名前で、イエス・キリストを意味すると言われている。エマニュエル・サンフォードもイエスも死して道を示したのだ。

町山智浩(映画評論家/コラムニスト)

監督:
デイビー・ロスバート
編集・脚本:
ジェニファー・ティエシエラ
製作総指揮:
ジェニファー・ティエシエラ、シェリル・サンフォード
製作:
アレックス・タートルトーブ、マイケル・B・クラーク、マーク・タートルトーブ(『リトル・ミス・サンシャイン』『アバウト・レイ 16歳の決断』)、レイチェル・デンギズ
撮影:
ザカリー・シールズ
音楽:
ニック・ウラタ(『ルビー・スパークス』『リトル・ミス・サンシャイン』)
日本語字幕:
岡田悠里
作品情報:
2019年/アメリカ/英語/95分/原題:17 Blocks
受賞・ノミネート:
2020年シャンゼリゼ映画祭 観客賞、審査員賞、批評家賞受賞
配給:
Bunkamuraル・シネマ
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