読んでおいしいTHE WINE

2026.02.19 UP

第4回:ブドウから知るフランスワイン

 カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブランやシャルドネといった言葉を目にしたことがあるでしょう。世界各地のワインに見られるこれらは、ブドウの名前。ワインに使われるブドウ品種は生食用とは植物としての種が異なり、1000種を超えるほどあります。その主要なものの多くはフランス原産、つまりフランスにルーツがあるのです。

 黒ブドウから紹介しましょう。ブルゴーニュの丘に根づいたピノ・ノワールは気品があり、しなやかで精緻な赤ワインを生み出します。カベルネ・ソーヴィニヨンはボルドー地方が原産で力強く構築的な美しさを備えた味わいとなり、長期熟成した姿も見事です。南仏のローヌを拠点とするシラーは、灼ける陽光の中でスパイスと情熱を宿した実をつけ、逞しさのあるワインとなります。

 白ブドウも多彩。ブルゴーニュのシャルドネは多様な表情を見せます。冷涼なシャブリ地区では透明感にあふれ、コート・ド・ボーヌ地区ではハチミツのように豊かな風味に。ロワールやボルドーに育つソーヴィニヨン・ブランは、草原の風のような爽やかさが魅力。さらに、アルザスの乾いた土壌でしっかりと熟成するリースリングは、花や石の香りを湛えたブドウに育ちます。

 フランスの多様な風土とそこに住む人々が、長い歴史の中で土地に合ったブドウの木を育んできました。ひと粒のブドウの中に、自然と時間と人の営みが溶け合い、土地の記憶"テロワール”が息づいているのです。プルーストがマドレーヌの香りから失われた時を取り戻したように、ワインもまた、香りと味わいの奥にそんなテロワールを映し出すでしょう。ブドウ品種を知ることは、ワインという文学を読むための語彙を手に入れることでもあります。ブドウを思い浮かべながらワインを飲むと、フランスの畑の風景と、そのストーリーを感じることができるかもしれません。

今回の“おいしい”フランスワイン

A 石灰岩土壌で育つ古木のピノ・ノワール
フレデリック・マニャン ジュヴレ・シャンベルタン ヴィエイユ ヴィーニュ 2021
産地:ブルゴーニュ/ブドウ品種:ピノ・ノワール100%
ブルゴーニュでも人気の高い村。赤い果実と森のニュアンス、物語の深部へと誘うような奥行き。

B はつらつとした朗らかさが魅力
ドメーヌ・ド・ラ・モット ピノ・ノワール 2023
産地:ラングドック/ブドウ品種:ピノ・ノワール100%
陽光にあふれるラングドックで育ったピノ・ノワールは、軽快な酸とみずみずしい果実感。

C 余韻に感じるミネラルが際立つ
ジャン・ルヴェルディ エ フィス サンセール・ラ・レンヌ ブランシュ2022
産地:ロワール/ブドウ品種:ソーヴィニヨン・ブラン100%
花の香りと白桃のような果実味が織りなすクリーンさと、白い石のようなミネラル感。

D ソーヴィニヨン・ブランが主役のボルドー白
シャトー・モン-ペラ・ブラン 2022
産地:ボルドー/ブドウ品種:ソ-ヴィニヨン・ブラン70%、セミヨン30%
セミヨンを加えた典型的なボルドー白。柑橘の爽やかさと樽の柔らかな丸みが調和する。

本連載はBunkamuraドゥマゴ文学賞が発行する小冊子「LES DEUX MAGOTS PARIS Littéraire」にて掲載しています。

取材・文:谷 宏美

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