N響オーチャード定期

2016-2017 SERIES

95

クレメンス・ハーゲン

今年1月、河村尚子さんとともにリサイタル・ツアーを行っていたクレメンス・ハーゲンさんに、横浜での演奏会終了後、お話をうかがうことができた。(2017年1月9日:神奈川県立音楽堂にて)

©Akira Muto

クレメンス・ハーゲンさんは、ハーゲン・クァルテットのメンバーでもあるわけですが、現在、クァルテットとソロの活動の割合はどうなっていますか?
「クァルテットとしての活動が7割で、あとの3割で、オーケストラとの共演、リサイタル、ピアノ三重奏などをしています。弦楽四重奏のレパートリーは膨大で、とても興味深く、私にとってはクァルテットの活動が最も重要なのです。コンチェルトのメイン・レパートリーはほとんど弾きました」
NHK交響楽団とも既に共演してられますね。
「20年くらい前(注:1993年3月)に、クラウス・ペーター・フロールさんの指揮で、ハイドンのチェロ協奏曲第1番を共演しました。オーケストラが、きちんと準備してきて、演奏様式も良く、うれしい驚きでした。オーケストラのクオリティが素晴らしかったですね」
今回はエルガーを演奏してくださいますね。
「チェロのために本当によく書かれた作品です。第1楽章の第1主題は、本当にチェロ的(チェリスティック)です。歌心に溢れ、ファンタスティックで、ヴィルトゥオーゾ的なところもある。指揮者やオーケストラと完璧なコンビネーションを作るのはなかなか難しいですが、一体感が生まれたときの高揚は素晴らしいですね。まさに特別な瞬間です。こういう曲では、オーケストラと一緒に息をすることが特に大切です。

 エルガーの協奏曲は重々しい演奏になりがちですが、弓で呼吸をするような、柔軟性のある音で弾きたい。N響とはハイドンの時の共演がすごく良かったので、今回も、堅くなく、重々しくもなく、息づくような、そういうエルガーにしたいと思っています」
指揮のマルティン・ジークハルトさんとの共演は?
「もう30年くらい共演しています。彼はリンツ・ブルックナー管弦楽団の首席指揮者をしていたので、そこでご一緒しましたし、マレーシアでも共演したことがあります。すごく良い指揮者です」
影響を受けた音楽家を教えていただけますか?
「ニコラウス・アーノンクールは本当に素晴らしく、大好きな指揮者でした。彼はいつも模索していて、思考をやめることがない。彼にレッスンを受けることができたのはとても幸運でした。  ギドン・クレーメルにも大きな影響を受けました。彼とは何度も演奏する機会があり、特に若い頃の共演は、私にとってとても重要な経験となりました」
確かに、クレメンスさんは、アーノンクール、クレーメルとともにブラームスの二重協奏曲の録音もしておられますね。そのCDは私も愛聴しています。
「ありがとう(笑)」
余暇はどのように過ごされていますか?
「私はサッカーの大ファンなのです。バルセロナとドルトムントが好きです。昔はプレーもしたのですよ(笑)。スキーは今でもします。アルペン・スキーです。
 それから、家族と過ごす時間をとるようにしています。子供は4人いて、もうみんな大きくなりました。音楽家になったのは一人だけですが、彼女(注:ユリア・ハーゲン)は9月にサントリーホールで東京都交響楽団とチャイコフスキーの「ロココの主題による変奏曲」を演奏します」
7月9日(日)のN響オーチャード定期、楽しみにしております。ありがとうございました。

インタビュー:山田治生(音楽評論家)