『バレエ ピーターラビット™と仲間たち』&『レ・パティヌール ~スケートをする人々~』

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POINT見どころ

 Kバレエ カンパニーが英国バレエ界の巨匠フレデリック・アシュトンの代表作2作を上演する。

『バレエ ピーターラビット™と仲間たち』では、絵本の世界から抜け出したような精巧な着ぐるみをまとったダンサーたちが、ソロにパ・ド・ドゥと大活躍!
こぶたのピグリンカップルによる美しいデュエット、かえるのジェレミーが繰り出す目が覚めるような足さばき…ジャンプにピルエット、時には優雅な動きと、それぞれの動物の動きをモチーフにした振付で愛らしく観客を魅了する。

『レ・パティヌール ~スケートをする人々~』はKバレエ カンパニー初演となる。スケート場に集う人々を美しく、時にコミカルに描いた名作。 優雅なパ・ド・ドゥが見どころのホワイトカップル、かつて熊川哲也も当たり役とし、オペラハウスの観客を虜にした超絶技巧が満載のブルーボーイ役など、見どころが盛りだくさん。バレエで描く極上のスケートの世界をお楽しみに!

また、渡辺レイ/熊川哲也振付による新作の追加上演も決定。ラヴェル作曲のピアノ曲「道化師の朝の歌」を使用した小作品で、『Fruits de la passion~パッションフルーツ』と名付けられたなんとも好奇心をくすぐられる作品だ。
ネザーランド・ダンス・シアターなどで活躍し世界的にも高く評価される渡辺レイと熊川によるコラボレーションでどのような新しい創作世界が生まれるのか、期待がふくらむ。
出演は公演毎に熊川哲也&渡辺レイ、そして遅沢佑介&浅川紫織の2キャスト。それぞれの個性が作品にもたらす多彩な魅力に注目したい。

Kバレエ カンパニーの選りすぐりのメンバーがお贈りするヴァラエティに富んだ3作で、バレエ芸術のそこはかとない魅力をご堪能ください!

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あの名作バレエが再び!バレエ ピーターラビット™と仲間たち

 英国ロイヤル・バレエ団が誇る門外不出の超人気作が、Kバレエ カンパニーにより初めて海を渡って来たのは2009年。ビアトリクス・ポター™ の名作絵本『ピーターラビットのおはなし』を大振付家アシュトンが1幕バレエに仕立てたこの異色の作品は、日本でも世代を超えた観客を瞬く間に魅了し、その後の2011年の上演でも絶賛を博した。

 絵本の世界からそのまま抜け出したかのような精巧な着ぐるみをまとったダンサーたちが動物の特徴を巧みにとらえたコミカルな動きで目を楽しませたかと思えばソロにパ・ド・ドゥ、ジャンプにピルエットと、驚くべき華麗さで妙技の数々を繰り広げる――なんとも不思議なその世界は一度観たら忘れられない楽しさと感動に満ちている。それぞれのキャラクターを一体誰が踊っているのか、舞台を観ながらそんな想像をするのも楽しみ方の一つだろう。Kバレエ カンパニーならではの個性豊かなダンサーたちが織りなす愛らしくも夢にあふれた極上の“ 英国流メルヘン”、6年ぶりの上陸に胸が高鳴る!

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バレエに登場する6つのおはなし

  • 『ティギーおばさんのおはなし』

    はりねずみのティギーおばさんは、親切で腕ききの洗濯やさん。森の動物たちの洗濯ものやアイロンかけ、配達を一手に引き受けている。

  • 『あひるのジマイマのおはなし』

    あひるのジマイマは信じやすいうっかり者。誰にも邪魔されずに自分のたまごをかえすための場所を探して外に出る。森で出会ったのは立派な身なりをしたきつねの紳士。彼の夏の住まいで巣を作るように勧められたジマイマは、悪だくみに気づかず、そこでたまごを生むことにしてしまう。

  • 『こぶたのピグリン・ブランドのおはなし』

    賢く勇敢なこぶたのピグリン・ブランドは、農場で働くため、兄弟のアレクサンダーとともに、お母さんぶたのペティトーおばさんのもとを離れて旅に出る。旅の途中でパイパーソンさんにつかまってしまうが、そこでかわいい黒ぶたの少女ピグウィグと出会い、手に手を取って一緒に逃げ出す。

  • 『ジェレミー・フィッシャーどんのおはなし』

    かえるのジェレミー・フィッシャーどんは、池のほとりの小さな家で優雅なひとり住まいをしている紳士。ある雨の日に、意気揚々と釣りに出かけたフィッシャーどんは、獲物を捕るどころか、トゲウオに刺されたり、マスに食べられそうになったりと散々な目にあってしまう。

  • 『2ひきのわるいねずみのおはなし』

    トム・サムとハンカ・マンカは、はつかねずみの夫婦。人形たちが留守の間に、きれいな人形の家にしのびこんでテーブルの上のごちそうをねらうが、ハムも魚も土でできたにせものでがっかり。怒ったふたりは、思いつくかぎりのいたずらをして、家の中を散らかしてしまう。

  • 『りすのナトキンのおはなし』

    生意気で、他人のことなどおかまいなし、礼儀知らずの向こう見ず、それがりすのナトキン。トインクルベリという兄や大勢のいとこたちがいる。仲間たちが恐れるふくろうのブラウンじいさまにたびたびいたずらを仕掛けるナトキンは、ついには罰を受けてしっぽをちぎられてしまう。

レ・パティヌール~スケートをする人々~

 アシュトン初期の代表作『レ・パティヌール~スケートをする人々~』はその名のとおり氷上でスケートに興じる若者たちを描くユニークな趣向が愉しい名品。クラシック・バレエの技巧を駆使した多彩にして高度な振付が次々と展開し、美しさ、優雅さ、華やかさ、ダイナミックさといったバレエのあらゆる魅力を堪能させてくれる。アシュトン作品の上演において世界的評価を誇ってきたKバレエ カンパニーでの満を持しての初演となる今回は、3種の豪華キャストを実現!ロマンティックなデュエットで魅せるホワイトカップルの中村祥子&宮尾俊太郎らをはじめ、英国ロイヤル・バレエ団時代の熊川哲也が観客を狂喜させた当たり役の一つであり、作品中、最も鮮やかなテクニックの見せ場ともなるブルーボーイを受け継ぐ酒匂麗、篠宮佑一、山本雅也というフレッシュな顔ぶれの競演にも注目を!

 寒い季節。雪がちらつき、湖は凍っている。フレデリック・アシュトンのバレエ『レ・パティヌール』の幕が上がると、そこに現れるのは魔法のような冬の世界だ。白い格子状のアーチにランプが吊るされた瀟洒な美術に囲まれて、ダンサーたちが楽しげに、優雅に氷上を舞っている。

 『レ・パティヌール』は、きらきら光る宝石箱のような1幕バレエである。次々に披露されるディヴェルティスマンにはウィットやロマンスが散りばめられ、時には“氷”の上で“ツルッと”転んでしまう場面もあったりして、観客の笑いを誘う。快活な若者の象徴のようなブルーボーイが、危険などものともせずに宙に身を投げ出す。
 アシュトンが本作を英国ロイヤル・バレエ団の前身にあたるヴィック=ウェルズ・バレエ団に創作したのは1937年だが、それからほとんど変更を加えられていない。というのも、本当に忘れがたい情景がそこにあるからだ。ヴィクトリア朝のクリスマスカードのような美しさと古き良き時代への郷愁。温かみのある青、茶、赤、白の洒落た衣裳はウィリアム・チャペル、ダンスを彩る軽妙な音楽はジャコモ・マイヤベーア(編曲コンスタント・ランバート)である。
 これは礼儀正しい若者たちが、競争したり恋をしたりする楽しいバレエだ。魅力の一つは、群舞やデュエット、トリオが幾何学的な連携を保ちながら、躍動感あふれるダンスを展開するところ。頭、肩、首の位置などに厳密な美しさを要求するアシュトン・スタイルの振付が、この作品でも存分に生かされている。
 もう一つの魅力は、随所に盛り込まれた華やいだ妙技である。スケートのテクニックを巧みに取り入れた振付で、どうだと言わんばかりに腕比べをする若者たち。流れるようなパ・ド・ドゥをロマンティックに踊るホワイトカップル。そして命知らずのブルーボーイの超絶技巧が、ほかのすべてを圧倒する。幕が降りていく間も、舞台の中央でいつ果てるともなくピルエットを続けている彼―― 私の脳裡には、永遠に回転し続けているかのような熊川哲也のブルーボーイが、まだありありと残っている。
 この冬のバレエは、ぴんと張り詰めた寒さを喚起させるのに、劇場を離れる時の人々の心は、その楽しさと華やぎに照らされて、すっかり暖められているのである。

文:アン・ヌージェント(英国・舞踊評論家)
翻訳:堤 理華

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英国ロイヤル・バレエ団公演より

Photographs: Bill Cooper/ Leslie E.Spatt

Fruits de la passion ~パッションフルーツ(初演)Fruits de la passion ~パッションフルーツ(初演)

振付:渡辺レイ/熊川哲也 音楽:モーリス・ラヴェル「道化師の朝の歌」

Photo: Hidemi Seto

愛情、思惑、疑心、殺意―― 熊川哲也が国際的コンテンポラリーダンサー渡辺レイとの初共作・初共演で魅せる新たな世界
※公演により出演者が異なります。

 これまで幾多の伝説を残してきた熊川哲也。熊川のすごさはもう十分に知っている、とお思いの方も多いかもしれない。しかし、今回追加上演が決まった新作『Fruits de la passion ~パッションフルーツ』では、そんな先入観を覆され、あなたの知らない熊川の魅力に出会えるはずだ。

 作品に登場するのは互いを熟知した一組の夫婦。しかしもちろん、熊川が生む世界は、見慣れた夫婦の愛の物語などというスケールではない。作品のイメージを熊川は、「一見ごく一般的な夫婦の少し特別な外出。そこで耳にした音楽は、表だった絆や愛情だけではなく、潜在意識にある互いへの思惑や疑心、殺意など、普段コントロールしている感情を引きだしてしまう」と、なんともミステリアスな言葉で表現する。
 共同振付は、国内数々のバレエコンクールで受賞した後、イリ・キリアン率いるネザーランド・ダンス・シアターに長年在籍した世界的コンテンポラリーダンサー 渡辺レイ。旧知の仲という二人だが、共演は初めてだという。しかし、「音楽を聴いた瞬間、互いにアイデアがあふれ出てきた。感覚が似ていると思う」と、渡辺も語るとおり、変拍子が多いラヴェルの曲に二人はまさに、あうんの呼吸で反応をみせる。熊川の«クラシック»と、渡辺の«コンテンポラリー»の絶妙な融和は、我々が見たことのない世界を繰り出していくのだ。
 いまさらではあるが、熊川は何をやっても特別だ。身体能力や技術の高さは言わずもがな、人並み外れた音感、ユーモアのセンス、近寄りがたい高貴さと不思議に同居する愛嬌…。そんな、自明の美点が六分という時間にすべて凝縮され、渡辺やラヴェル、そして少しクレイジーなテーマという新しい出逢いによって、また新たな魅力へと姿を変え我々を虜にする。
 その熊川の世界に今回は、いま充実のときを迎えるプリンシパルの二人 遅沢佑介と浅川紫織も挑戦。渡辺が「古典バレエと異なり、登場人物は踊るダンサー自身」と語るこの作品。食す頃合いにより味が異なるフルーツのように、ダンサーにより変化する本作、その醍醐味を味わいたい。
 衝撃の新作、ぜひその誕生の瞬間を劇場で!

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取材・文:早川智子(ライター)